7 ギルドにやって来ました
「ここ?」
「はい」
私が思い描いていたギルドとは、また、少し違った建物がそれだった。
地上六階。
かなり清潔な感じのする建物なのだ。
もっと、こう、あるじゃん?一階が酒場になっていて、昼間から仕事にあぶれた冒険者で溢れ返っているとか。ウェスタン調の扉になっていて、饐えた臭いがするとか。
村のギルドもそうじゃなかったから、薄々は感じてたけど。
でも。
そういうのが全くない、お役所的な建物って、どうよ。
「何か、あったのですか?」
「何も無いけどね」
「とりあえず、行きましょうか」
「そだね」
私は若干の不服を感じながら、ギルドの扉を潜った。
中はやはりお役所の様になっていて。
「ここで順番待ちの札を取ります」
そう言って、メアリー・プルが順番待ちの札を取る。
183番。
本当にお役所だった。
並べられたソファに座って順番待ちをしていると、男共の目線は気になるが、かといって声をかけてくるような連中は居ない。
「なんか、違う」
ボソリと呟いた私の声を聞き漏らさず、
「何が違うのですか?」
メアリー・プルは私にそう聞いてきた。
私は、私の感覚のギルドというものを、彼女に説明する。
すると、
「国家の施設に、酒場なんて物がある訳ないではないですか」
にべもなく、そう言われた。
どうやら、ギルドというものは国に管理されたハロワの様なものらしい。国から委託をされて魔物を間引きするし、旅行者や旅商人の警護をしたりするし、要人の警護をしたりするのだとか。時として、城壁の修理やどぶさらいなんていう仕事もある。
ギルド証というのも、立派な国家資格らしい。
日雇いの国家公務員か。
それにしても。
私にポンとギルド証を渡した村のギルドマスターは、一体何だったのだろうか。
「単独でブルーオーガやワイバーンを狩る事の出来るアイリ様を、ギルドとしては一早く確保しておきたかったのでしょう」
「そんなものですかね」
「そんなものです。かく言う私達も、ギルド証を持っていますし、意外かもしれませんがランクはBですよ」
へぇ。
ホムンクルスにもギルド証を渡すのか。
「この国は、ホムンクルスにも人権を持たせてくれますからね」
「人に作られた存在でも、人権は保障されてるの?」
「税さえ払えば、獣人だろうがエルフだろうがドワーフだろうが、亜人も人権は持てますし、少なくはありますが、天使族や魔族にも人権を与えたという記録もあります」
「寛容なんだな」
「いえ、ここが大陸の中央に位置するという立地の問題でもあるのです」
メアリー・プルが言うには、この国の立地は、経済的に発展をする代わりに他国からの侵略に常に備えておかないといけないというお国柄なのだとか。お陰で、経済が回っている現時点では良いが、少しでも傾くと他国から牙をむかれるのだそうだ。
「常に走っていないといけないのですよ、この国は」
アメリカと一緒、か。
常に世界の先頭を走っていないと食われる。
そういう国なんだろう。
と、
「183番の方~」
私達の番号が呼ばれる。
受付嬢の呼び声も、お役所の受付の呼び声のように聞こえてしまうから不思議だった。
まぁ、可愛らしいお嬢さんだが、うちのメアリー・プルの方が可愛い。
「本日はどのようなご用件で?」
「魔物の素材の解体と買い取りを」
無表情なメアリー・プルと話しているのを見ると、腹の中で会話をする女子のコミュニケーションの構図がよく見える。
様な気がする。
別に、腹の探り合いをしている訳でもないのに。
「どのような魔物をお持ち込みで?」
「ブルーオーガにコカトリスにワイバーンを」
「あら」
「特別査定になりますか?」
「なりますね。別室にご案内いたしますので、少々お待ちください」
そう言って、受付嬢は裏の事務所へと隠れた。
「メアリー・プル。特別査定って?」
「ランクが上の魔物を査定する時に、上の方に査定をしてもらうシステムになっているのですよ」
なるほど。
特別待遇か。
「183番の方、用意ができましたので、こちらにどうぞ」
じゃぁ、別室に行くか。
別のギルド員さんについていく。
案内されたのは、結構大きな執務室のような部屋だった。中には一人の男性の職員さんらしき人と、いかつい解体職人さんらしき人が五人程居る。
その中の職員さんが、
「貴女はアゾニ村のメアリー・プルでしたね。森から魔物が出てきたのですか?」
そう聞いてきたので、
「いえ、生息地まで行って狩ってきました」
メアリー・プルがそう答えた。
「わざわざ?」
「はい」
「Bランクの貴女達では、難しい相手のはずですが」
「そこは、アイリ様が狩って下さったので、全く問題ありませんでした」
「そちらのお嬢さんですか」
「はい」
「貴女、名前は?」
ここで私に振られたので、私は、
「アイリと申します」
そう答えた。
「アイリ、アイリ、ね」
職員さんは顎に手を当て、
「聞かない名前ですね」
そう言って胡散臭そうな目で私を見てきた。
そりゃ、聞かない名前でしょうよ。
この世界に来て間もないんだから。
だから、腹も立たない。
「まぁ、聞かない名前というのも当然のお話かとは思います」
だから、喧嘩もしない。
「最近こちらに来ましたので」
この世界に、ね。
と、ここでメアリー・プルが話に入ってきた。
「ギルドは、新人の冒険者の出身まで詮索するのですか?」
それに対し、職員さんはにこやかな笑みを浮かべたままこう答えた。
「ブルーオーガを狩ってくる新人ともなれば、ね」
「私達と共に住む冒険者では、納得いかないと?」
一秒ほどの沈黙の後、
「いや、貴女が保証するのであれば、こちらとしては詮索出来ませんね」
職員さんはそう言って私を一瞥する。
あーあ。
目を付けられたかな。
この話でストックが尽きましたので、連投はできなくなります
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