8 武器の調達に行きました
「まぁ、良いでしょう」
と言って、職員さんは私から目を外した。
「詮索されたくない事の一つや二つ、誰でも持ち合わせているものですしね」
あー、こいつ。
いちいち、上から目線だな。
こういうエリート、日本にも居たな。
お役所って、皆こうなんだろうか?
どれ、鑑定、っと。
ワイズ・ミルド。32歳。レベルは758。
このレベルで冒険者ギルドに勤めてるって事は、冒険者上がりか。
それも結構な所まで上り詰めているみたいだ。
なら、相手の強さ位、見て判らないのかね。強さを判断できるのは、なにも、ホムンクルス達だけじゃないだろう。
という事は、この絡み方、
「申し訳ありません。ギルドとしては、強い冒険者を是非とも囲い込んでおきたいものですから」
やっぱりか。
「あまり褒められるようなやり方ではありませんね」
「若いお嬢ちゃんに上から目線は嫌われる要因にしかなりませんよ、おじさん」
「それもそうですね」
そこで職員さんは表情を真剣なビジネスモードにして、
「それでは、獲物を見せていただきましょうか」
そう言って、私に視線を向けた。
アイテムボックスから獲物を取り出す。
そこで、
「ほう・・・・」
と、職員さんは息を漏らした。
「荷物持ちを雇っていないから、アイテムボックスをお持ちだとは思っていましたが、新鮮な死体が出てくるとは思いませんでしたよ。時間停止型のアイテムボックスですか?ますます、興味を引かれましたね」
今度はビジネスライクに言われる言葉だから、気持ち悪さは感じない。
「ブルーオーガを一撃ですか。ワイバーンに至っては傷もほとんど無い状態で残っているのですね。どうです?これなら素材はかなり良い状態で剥ぎ取る事が出来るのではないですか?」
職員さんは一緒に見ていた職人さんにそう声をかけた。
「そうですね。これなら素材はほぼ丸ごと使う事が出来ますぜ」
職人さんはそう言う。
査定に響くのかな?
なら、次からも綺麗に狩るけど。
「これは、全てギルドに卸して頂けるので?」
「あ、ワイバーンの皮だけはこちらで引き取らせていただきたいです。鎧の材料にしたいので」
「あー、そっちのホムンクルスのお嬢ちゃん用か」
「はい」
メアリー・プル達が付けている鎧は普通のブルホーンの革鎧だから、ワイバーンの皮を使った鎧にすると、かなりのグレードアップが見込めるんだよな。
「じゃぁ、他は買い取りで良いんだな?」
「魔石もこちらで頂きたいですね」
忘れる所だった。
皆が欲しがっているのはこっちだ。
「分かりました。では、査定を付けて明日お支払いいたします。また明日、ワイズ・ミルドを指名してお訪ね下さい」
「承知しました」
これで査定は終わった。
あとは、
「ワイズさん。腕のいい鍛冶屋と付与術師って、知っていたりしますか?」
※
翌日。
ギルドでワイバーンの皮と魔石を手に入れた私達は、ワイズさんが紹介してくれた腕のいい鍛冶屋とやらを訪ねた。
Aランクの冒険者も使うし、軍にも武器を卸しているという大店だ。
が。
私は入って一周するうちに、この店は無いな、と見切りをつけた。
ろくな武器を置いていないから。ほとんどが鉄製の武器で、良くて黒鉄、店の一番奥に飾ってある武器でさえミスリルを芯に使った物でしかなかったからだ。
ミスリルなら、ホムンクルス達は既に持っている。
これなら、既存の武器にエンチャントを重ね掛けしてもらった方がまだマシだ。
「また今度にしましょうか」
メアリー・プルにそう言って、店を後にした。
さて、ワイバーンの皮を使った鎧もどうするか。
「それなら、一軒だけ心当たりがあります」
「そうなの?」
「ただ、アイリ様の武器の様なものは作れませんよ?」
「いや、貴女達の武器を作りたいだけだから」
「あら、そうだったのですか。それなら、そこで問題無いかと思われますが、どうしますか?」
「行くよ、行く」
「では」
という事で、私とメアリー・プルは、貧民街の入り口へと続く馬車に乗り込んだ。
貧困街にあるんだ。
「変わり者で通っていますので。だから、造物主とは仲が良かったのでしょうが」
変わり者同士、息が合ったのかね。
なんでも、二人とも宮仕えを拒否して、市井での研究を望んだという人物達でもあるらしい。
入り口で馬車を降りて、あとは歩きとなる。メアリー・プルはそこで子供に声をかけ、銅貨三枚を渡して案内を頼んでいた。怪しい方向へと、怪しい方向へと進んでいく。
とはいえ、治安は悪くなさそうだ。
住人たちは比較的身なりの良い私達を見ても、襲ってくるような様子もない。
街並みも、古くはあるようだが、意外と清潔な造りをしている。
そして、歩く事十数分。
「ここ?」
一軒のあばら家の前で、メアリー・プルが足を止めた。
鍛冶屋の看板は出ているが、むしろ貧民街の金物屋と言った方が良いような造りをしている。
これは解らないわ。
「とりあえず、行きましょう」
そう言って、メアリー・プルは鍛冶屋の扉に手を掛けた。
中には一人の老人が座っていて、
「らっしゃい!!」
野太い声で私達を出迎えてくれる。
そして、私達を見るなり、
「なんだ、メアリー・プルか。こんな所まで足を運ぶとは、珍しいな」
そう言って、メアリー・プルから、私へと視線を移した。
「そっちのお嬢ちゃんは?」
「造物主の最高傑作です」
「そうか、奴め、とうとうやりやがったか」
老人は私に目を止めたまま、
「お主、名前は?」
と聞いてくる。
「アイリと申します。以後、お見知りおきを」
「ハンスだ」
私達は握手を交わし、
「それで、何の用だ?」
そんなハンスさんの問いに、
「ホムンクルスの装備強化をお願いしたくて参りました」
私はそう答えた。
「おいおい、メアリー・プル達に渡してある装備だって、かなりの逸品だぜ?それを強化って、どんな装備が欲しいって言うんだよ」
「そうですね」
私はサブのショートソードを差し出し、
「この程度のものに準ずるものが欲しいですね」
そう言うと、
「ふむ・・・・・・」
ッと言って、ハンスさんはショートソードを抜き放った。
目を細めて、
「かなり強力なエンチャントが施されているな」
「ですね」
「素材は、オリハルコンか」
「分かりますか」
「初めて見るがな」
そう言ってハンスさんは短剣を鞘に戻すと、
「オリハルコンとまでは行かないが、ミスリルでエンチャントができる装備を一式作ってやる。装備のバランスは、前に作ったものと一緒で良いか?」
そうメアリー・プルに聞くと、
「はい」
メアリー・プルは短くそう答えた。
「値は張るぞ?」
「この貧困街がある程度潤う程度には出させていただきますよ」
私がそう答えると、
「ほう・・・・・・」
ハンスさんは真剣な顔になって目を細めた。
ああ。
やっぱりか。
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