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氷のコア

 ジルの持つコアストーンに反応を示したイズ。

 軽快に階段を降り、ジルに近付く。

 硬直したままのジルの手を取ってまじまじと眺める。


「うーん、形は一緒だけどちょっと違うかも……。私の見た事あるのと似てるだけなのかなぁ」


「ちょっと! イズの見たことあるのってもしかしてこんなじゃなかった?」


「んー、違うよ」


 ルカは闇のコアストーンをイズに見せ詰め寄る。

 イズの見覚えのあるのがルカが失った闇のコアストーンであるかもしれないからだ。

 これまでまったく進捗のなかった闇のコアストーンの行方。その手がかりとなるのならばどんなに些細な情報でも構わないとイズに縋るルカだったが、イズは首を横に振った。

 イズの記憶に刻まれているのはどうやら闇のコアストーンではないらしい。


「ちっ、そう上手くはいかないか……」


 舌打ちを零して、ルカは取り出した闇のコアストーンを手の上で遊ばせる。

 期待していなかったと言えば嘘になる。

 イズの思わせぶりな発言にもしかしてと思ってしまった。ようやく見つかったと早とちりをしてしまった自分へと喝を入れ、深呼吸して揺れた心を落ち着かせる。


「ふぅ…………で? イズが見たことあるのは結局どんな感じのなのよ?」


「……色はこっちのに似てるけど、こんなに濃い色じゃなかった気がするなぁ」


 イズが手を伸ばしたのはジルの持つコアストーン。青色の輝きを放つ水のコアストーンだ。

 だが、その色は彼女の頭に残る朧げな記憶とは合致しない。


「青より薄い色……? ルカは知ってるか?」


「知らないわ。一応聞いておくけど、この中のどれでもないのよね?」


「うん……どれも違う」


 ルカの知る限りでも青寄りの色をしたコアストーンは水以外なく、それよりも薄いとなると紫色をした闇のコアストーンも条件から外れる。

 ルカは念の為の確認としてまだ見せていない光と風のコアストーンもイズに見せる。

 だが、イズはすぐにどれでもないと断定した。


「なぁ、やっぱり似てるだけなんじゃないか? こんな形の宝石なんて探せばいくらでもあるだろ?」


「……そうかもしれないわね。イズが見たことあるのはどこにでもある変哲もない宝石。これは似ていたからたまたま見間違えただけ……か」


「えー、そうなのかなぁ?」


 ジルは初めてコアストーンを見た時、それを高く売れそうな宝石だと思った。

 つまりは普通の宝石だと言われても何ら不思議ではない。似たような形のものなんていくらでもある。


 そもそも前提から間違っていて、見たことあるというのはイズの見間違え。実際にイズの記憶から引っ張り出された情報とルカの知るコアストーンが合致することはなかったのだから、それは違う何かだというのがジルの考えだ。


 ルカはジルの言葉に考える素振りを見せる。

 確かに己の持つ火、水、風、光、闇のどのコアストーンではないと言うのだから、イズの言う何かはきっとコアストーンでは無いのかもしれないという考えが過ぎる。


「そうね。でも、私の知らないコアかもしれない」


「ルカの知らないコア……? そんなものがあるのか?」


「私達が作られたって事はコアの精製には成功してる。ということは私の知らないコアが作られていても不思議ではないでしょう?」


 大昔、5種類のコアストーンとそれに意志を宿す精霊を生み出すことは成功している。

 であるならばまだ知らぬコアストーンが作られている可能性はゼロではなく、ルカはその可能性に賭けてみたいのかもしれない。


「えっと……兄さんとルカちゃんは何の話を……?」


 ジルとルカの話についていけないイズはやや困惑した表情で二人を交互に見つめていた。

 ルカ達人工精霊やコアストーンに関してイズはまだ知らないので当然の反応だろう。


「こっちの話よ。それよりイズの見たことあるの……何か他に特徴とかなかった訳?」


「特徴? あっ、そう言えばひんやりして冷たかったような……」


「冷たい?」


「うん。熱を出しがちな私が少しでも苦しくないようにってお父さんが持ってきてくれたの。気休め程度だけどひんやり気持ちよかったような気がする……」


「へえ、そうなのか」


「うん。辛い時に貰った物だったから大切にしてたの。いつの間にか無くなってて悲しかったけど……いつか見つかるといいな」


「ひんやり……冷気……っ、まさか」


 何かに気付いたルカがイズをまじまじと見つめる。

 それはイズの身体を隅々まで観察するかのように、ルカは鋭い視線を送る。


「な、何……?」


「探し物、どこにあるか分かったわよ……!」


「えっ、本当に?」


「ええ、答え合わせよ」


 そういうとルカは勢いよく腕を突き出した。

 ――――イズの胸部に向けて。


「びっくりしたなー。でも私は幽霊だからそういうのは効かないよっ」


「ふふ、どうかしらね?」


「えっ、それって…………あれっ、力が抜ける……っ?」


 ルカが突き出した腕はイズの胸を貫いた。

 しかし、イズは幽霊体。物理的な攻撃は効かない。

 そのはずなのに、ルカが突き刺した腕を引き抜いた瞬間、イズは身体の力がふっと抜け座り込んでしまう。


 何が起こったのか分からずに顔を上げたイズは目を見開いた。


「それ……っ」


「あんたの探し物……氷のコアストーンって言ったところかしらね」


 引き抜かれたルカの左腕。

 その3本の指の間に挟まる水色に輝く2つの宝石。

 それをルカは氷のコアストーンと呼び、その宝石の輝きを通して、驚くイズの表情を興味深そうに眺めていた。



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