幽霊少女
誤字報告ありがとうございます
おそらくこの作品において初めて見る赤文字だったので嬉しかったです
一応執筆後と投稿前の二重チェックで気を付けているつもりですが、スルーしてしまう部分もあると思いますので、見かけた際は教えて頂けると助かります……!
ジル達の反応を見て驚いたような反応を示した少女。
まるで信じられないものを見るかのように目をぱちくりとさせている。
そんな不審な様子を見てルカは一層警戒心を強めた。
透き通るような青白い少女は、言葉通りの意味で当然目の前に現れた。
そう認識しているルカは、せっかくの新居に現れた不届き者と彼女を認定して不機嫌さを露わにする。
「あんた……いつからそこにいたの……?」
「…………えっ、あっ? もしかして私に聞いてるの?」
「……あんた……喧嘩売ってるの?」
ルカは階段中断付近で立ち止まっておろおろし始めた少女に向けて言葉をかける。
しかし、その言葉が自分に向けられたものなのか分からなかった彼女は一瞬フリーズしたような挙動を起こし、慌てて聞き返す。
この場にはジルとルカ、そしてその少女しかおらず、ルカは明らかに彼女に向かって話しかけたのにもかかわらず、そのような返しをされてしまったことでイラついたようにこめかみをひくつかせる。
「……見えてるし、聞こえてる。会話が成り立つ……! すごい、すごいよ!」
「……ルカ、この子……もしかして」
「ちっ、そういうことなのね」
何かを確認するようにぶつぶつと呟いた彼女は表情を一転させ、ぴょんぴょんと飛び上がるように喜びの感情を表現した。
ジルも何かを察したのかルカの肩に手を置く。
冷静さを失いつつあったルカの頭も冷え、話を聞いてみようと彼女に近付いた。
「わわっ、誰かと話すのって久しぶりだから緊張するなぁ……」
「悪いけどあんた事情なんて考慮しないわ。単刀直入に聞くけど、あんたは何?」
「……私は何、かー。そんな哲学的なこと考えた事なかったなー……」
同じ目線で顔を合わせた彼女はどこか気恥ずかしそうにしている。
そんな彼女の事情や心の整理などはお構いなしにルカは質問をするが、その聞き方がよくなかったため彼女は困ったような反応を示した後真剣な表情をして考えこんでしまった。
そんな彼女にルカは再度わなわなと怒りを覚え始めるが、そんなルカを諫めてジルが問う立場を交代した。
「ごめんごめん、そういうことを聞きたいんじゃないんだ。えっと、まずは君の名前を聞いてもいいかな?」
「……イズ・ロゼリア」
「ロゼリア……か」
イズ・ロゼリアと名乗る少女はジルの反応に首を傾げた。
ロゼリアというのはロゼルを治める子爵家の名前でもあり、この別荘を作るように手配したものの名でもある。
その文字列を名前に連ねているということは彼女もきっとこの別荘と無関係な存在ではない。
そう考えたジルはきょとんとしている少女に更なる問いを投げかける。
「君はいつからここに?」
「んー? 最初から?」
「俺達が来るより前から……だよな?」
「そうだよ?」
「俺達が来た時三人いたんだけど、どこかで見なかったか?」
「もう一人はちょっと脅かしたらびっくりして出て行っちゃったよ?」
そう言ってイズは玄関の扉を指さす。
その扉がパキパキと分厚い氷に覆われる。
「何を……?」
「せっかく会話できる人が来てくれたんだから、まだ帰さないよ。もっと、おしゃべり、しよ?」
扉の氷結はイズの仕業だった。
それはジル達をこの家から出さないための処置。
対話と人との触れ合いに飢えているイズの、逃がさないという意志の表れなのだろう。
「……ああ、付き合ってやる。だから、君のことをもっと教えてくれ」
「イズ」
「ん?」
「名前で呼んで。あと……私は名前言ったよ?」
「ああ、悪い。俺はジル。こっちはルカ。俺もイズって呼ばせてもらうからそっちも好きに呼んでくれ」
名前だけとはいえ自己紹介をさせられているイズはジルの君呼ばわりにむすっと頬を膨らませる。
それを指摘すると同時にまだ名乗られていないことに気付いたイズがジル達に名前を聞いた。
「じゃあ……兄さん」
「に、兄さん? 好きに呼んでいいとは言ったが……」
「あれ? ダメだった?」
「いや、その……イズがいいならそれで構わない」
「うん! 兄さん!」
「……ちなみに私は?」
「ルカちゃん」
「何でよ! その流れでいくなら私は姉さんでしょ!」
イズの呼び方からして自分の呼び方は姉さんになるはずだと高を括っていたルカは、予想外の答えにがっくりと膝を付いた。
五人の精霊を姉妹として見るのならばルカ・アメジストは五番目、つまり末っ子だ。
姉への憧れがあるのか悔しそうにして、呼び名を矯正しようとイズをなだめだすしだいだ。
「無理。諦めて」
「このぉ……私の方が歳上なのに……!」
精霊に年齢という概念を適応して封印されていた期間を含めるのならば、ルカの年齢は優に千歳を超える。
それを口に出すと怒られるのは目に見えているため、ジルは決して言葉にはしなかった。
「ちっ、まあいいわ。それよりもあんた。さっきからのらりくらりどうでもいい事ばっか聞いてないで、さっさと核心に触れなさいよ」
「あ、ああ。その……」
「いいよ。兄さんとルカちゃんも何となく分かってると思うけど、私はもう死んでる。誰にも見えないし声も聞こえない、幽霊さんだよ」
ジルはイズの正体について尋ねるタイミングを計っていたが、痺れを切らしたルカに急かされる。
そんな言葉選びで、それを聞き出そうかと迷い、バツの悪そうな顔をするジルを見かねたのか、イズが自ら話し出した。
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