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あたりまえの夕日  作者: 半田南都


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序章 はじまりの島


ここは、はじまりの島──


遠い昔、この国はまだ形を持たず、海の上にただ漂っていた。


伊弉諾(いざなぎ)伊弉冉(いざなみ)


二柱の神が天の浮橋に立ち、矛で海をかき回した時、その先から滴り落ちた潮が固まり、小さな島となった。


その島に降り立った二柱は国生みを始め、最初に淡路島を生み出した。


その後も島々が生まれ、やがて人が暮らす国となった。


──この国のはじまりを語る、国生みの神話のひとつである。


けれど、はじまりというものは、遠い神話の中にだけあるわけではない。人は何度でも同じ場所で立ち止まり、何かを求めて歩き出し、時には戻る。


そのきっかけは、ほんのささいなものかもしれない。名前も知らない誰かと、ほんの少し言葉を交わしたことや、気にも留めなかったひとことが、あとになって残り続けることもある。


たったそれだけのことで、それまでと同じはずだった景色が、少し違って見えることがある。


夕日がきれいなこの島で、誰かと出会うたびに、何かが生まれてきた。それは、長く続くものばかりではない。すぐに終わってしまうものもあれば、気づかないまま心に残り続けるものもある。けれど、そのどれもが、確かに何かのはじまりだった。


瀬戸内の穏やかな海に囲まれたこの島で暮らし続ける人、何かに誘われるように訪れる人、一度は離れ、ふたたび島に戻る人──それぞれのはじまりが、時代の流れとともに海風に運ばれ、静かに重なり合う。


誰かのはじまりも、誰かの迷いも知らないまま、今日もあたりまえのように瀬戸内の海に夕日が沈んでいく。


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