第76話 双子の帰還と最終確認 ★ラウラ SIDE→皇帝陛下 SIDE
今朝早く、サザラシア王国からゲートを使って帰って来た私たち双子は、皇帝陛下に帰国の挨拶と報告をしていた。その場には当然、お祖父様方もいらっしゃる。
「さすがだな、ラウラ。それで、その提示した四つの条件を、サザラシア王国側はすべて納得したのだな?」
「はい。四つ目の『お互いに関税をかけない』という条件に驚いているようでしたが、『そちらが提示する内容を飲む』とおっしゃってくださいました」
「良くやった! ジョセフの魔道具作りは趣味だからな。帝国内では必要としていないから、量産できるものは輸出するように。輸入は鉄鉱石と石炭だったか?」
「はい、そうです。魔物の素材は手に入りますが、そのガワ……外側の箱や蓋に使う鉱石類や、加工するための石炭などが、帝国ではあまり採れないのです」
「はあ…………完全にジョセフの趣味に付き合う形で貿易をすることになるとはな。まあ、あちらもソレで助かるのなら、ウィンウィンというやつなのだろうが」
「ふふっ、そうですね。お祖父様の欲しがっていた鉱石のほとんどは、ブルース卿の領地で採れるそうですよ? あちらの窓口はブルース卿で、帝国の窓口は私ラウラ……改めまして、ルシアン=ロペスが担当いたします」
「くくっ、『光輝く狼の子』か。クリスが名づけたと言っていたな?」
「はい。どうやらクリスはレオン殿を『狼』に見立てたようです。皆の光となる『狼』のように在ってほしいと言われました」
地下牢でのレオン殿は、きっとティアの光そのものだったのだろう。私もレオン殿のような、誰かの拠り所になれたら良いなと思う。だからクリスが付けてくれたこの名前はとても気に入っている。
「お可愛らしいですなぁ、私の息子は。それであの、ロペス公爵。先ほどから何となく……少し違和感があるのですが、私の気のせいでしょうか?」
「ふふっ、ガルシア宰相殿、気のせいではありませんよ。私はラウルと声は違いますが、見た目は瓜二つですからね。ラウルは猛々しいイメージがありますから、私はふんわりした雰囲気でいこうと思いまして」
「…………そうですか。それにしても、雰囲気だけ変えるつもりで、見た目……お顔もふんわりしたお顔にできるものなのですかね?」
「くくくっ。面白いことを言うなあ、アルバート。どう見ても化粧で顔を変えているだろう」
「えっ?」
「ふふっ、宰相殿? 良く見ていてくださいね?」
こっそりと元の顔に戻してから、お祖父様の作った魔道具である、繊細な模様の指輪に触れる。
「な、なんと! 目が少しタレ目になりましたか?! 頬もほんのり紅を差して、髪もグレーに近い暗い銀髪に…………すごいですな」
「ああ、それもジョセフが魔道具で瞬時にそうなるように作ったんだと言っておった。無駄な才能だと思っていたが、案外役に立つのだな。はははっ!」
お祖父様は諜報員の顔が知られている時のために、変装道具なども趣味で作っていることは、辺境伯領では有名だからね。さすがにじっくりと見られたり、自分の魔力が切れてしまったりすると魔道具の効果が保てないけれど、パッと見た程度では変装とは分からないし、今回のように部分的にちょっと弄る分にはほぼバレない素晴らしい魔道具です。さすがはお祖父様。忙しい仕事の合間にこれだけのものが作れるのですから、身内として誇らしいですし、心から尊敬しています。
「ジョエル……貴方はいつも力任せですからね。それにしても、素晴らしい技術ではありませんか? 世の女性は化粧が崩れるのを嫌うらしいですから、そちらは帝国でも売れるのではありませんか?」
「それは無理じゃろうな。一人一人の顔に合わせて色や形を決めなければならないらしいぞ。ジョセフにそんな時間はないし、べらぼうな値段になる。何より、犯罪に使われる可能性が出てくるから駄目じゃろうな」
「なるほど…………」
★皇帝陛下 SIDE
「相変わらず、そなたたちは緊張感がないな。それで、パーティーは今夜で良いのだな?」
「はい、予定通りで大丈夫です」
「私たちの服も、サザラシア王国で作ってもらいました」
同盟を結んだことを強調するためにも、サザラシア王国で正装を作ってもらったと知らしめるのは、二人にとっても良いことだからな。特に、窓口となる予定があるのだから、気に入られていて結びつきが強いと思わせた方が、すんなりと進めることができるだろう。
「ラウルが次期モーリス公爵家の当主として、『現公爵を断罪する』という形で良いのだな?」
「はい。私が表に立ちます」
「これまではラウラが表に立っていたであろう? 大丈夫か?」
ラウルたち双子は、ジョセフたち双子と似ていて、片方が武に優れており、もう片方は知に優れていた。まぁ、ジョエルはわざとそうしていたのだが。
「皇帝陛下、今回はラウルが自らやりたいと言い出したのです。どうか、ラウルに任せてもらえませんか?」
双子として生まれ、お互いを理解しているからこその、片割れを想っての願いなのだろう。当の本人はどう思っているのかとラウルに視線を向ける。ふむ、ラウルの顔つきがいつもと違って凛々しいな。覚悟を決めた男の顔をしている。今のラウルであれば、任せても大丈夫だろう。ジョセフが何も言わない時点で、問題はないということだろうからな。
「ふむ。ラウラが……ロペス公爵が言うのであれば、そうしよう」
「ご承認いただき、ありがとうございます陛下。私はこれまで、賢いからとラウラを全面的に頼り、任せて参りました。今後は私一人でもやっていけると……義母上にも安心してほしいのです」
そうか、ラウラと違う道を歩む覚悟を決めたのだな。それにしても、辺境伯の孫らしい、人に優しい考え方だな。自分のためより誰かのために働くことを良しとする者たちだ。だからこそ、皇族に一番近い場所で働いてもらっているのだがな。小さい頃から見てきた双子が、別々の人生……生き方を選んだ。これからは私も、自分の孫を見るように彼らを見守れたらと思っている。
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