閑話 (聖女視点
遅くなってすみません。
ふと気づくと真っ白な空間に私1人立っていた。
服は制服、ローファー靴の足元にテディベアのぬいぐるみチャームを付けたカバンが転がっている。
ここは何処?……異世界転移は夢だったの?蓮は?ヴィーは?
見回す限り果てが見えなく、この状態がいつまで続くのか永遠にも感じられ怖くなり両手で自ら抱きしめて身を震わせる。
突如眩い光を放ち現れた立派な角を持つ白鹿は、自らを『たけみかづちのおおかみ』の使いだと名のった。
「茉莉亜よ、異世界転移したのは聖女としてこの世界を救う為に必然たる運命だった。
しかし蓮はそなたに巻き込まれたのだ。
そして、そなたの親友、この世界でヴィクトーリアと呼ばれている娘は我の後継である仔鹿を命を賭し救ってくれた恩人。
この2人にそれぞれ1つだけ願いを叶えると、神託を告げに来た」
蓮と私は離れ離れになるはずだった?
運命にゾッとする!!!
彼と一緒で良かった、でも彼は私のせいで家族と永遠に会えなくなったんだ。
「……そうなんですか。
例えば蓮本人が望めば彼だけでも元の世界に還す事が出来るのでしょうか?」
思わず右手をギュッと握りしめた。
「いや、残念ながら我が仕える神やこの世界の神の力を持ってしてもソレは出来ぬ」
異世界転移は片道通行なのね……ゴメン蓮、とても聖女だとは思えない醜い私のココロ……だけど本音だ。
「所で私も運命とはいえ無理矢理この世界に転移させられた被害者なんですけどぉ〜、私の願いは聞いて貰えないのですか?」
少し目を潤ませ、頬をぷくりと膨らまし上目遣いで言ってみた。
「そうだな……あい分かった、世界を救う使命を果たした後、神に進言しそなたも1つだけ叶えよう」
「よっしゃぁ〜!!!」
思わずガッツポーズ決めた。
言ってみるものだ、コレって言わなかったらなし崩しだった。
異世界転移とか無茶振りされてるんだからギブアンドテイクだよね。
「ゴホン、えらく態度が変わるな。
……そうだな、『聖なる祈り』を終えた後にするか。
場所は事前に神託で告げるゆえ、それまでに考えておくように。
叶えられる願いには無論制限があるゆえいくつか候補があると良いぞ」
「んんっ…はい、伝えておきます」
ちょっとあざと過ぎたか。
神の使いの白鹿は前足を器用に口まで持ってきて咳払いしていて、思わず笑いそうになるのを私も口を塞いで誤魔化す。
「それとヴィルム王国では使い魔を持つ事になるのだが、そなたには我の後継の仔鹿を修行として付けるので、神殿やヴィルム王立魔法学園からの儀式の申し出は断るように」
「え!?ヴィーが助けた仔鹿ですか?」
「そうだ、アレにはヴィクトーリアに直接礼を言わせねばならぬ。
あの娘はあの時に死ぬ運命ではなかったのだ」
ヴィーが救った白い仔鹿はかなり驚いてたらしく飛んで逃げてた。
救急車呼んだりバタバタしてたからいつの間にかいなかったけど。
あんにゃろ〜ヴィーに土下座させねば……って鹿に出来るか?
「そなた達は再び相まみえた、それすらも神の御業かもしれぬ。
ではまたな……」
「分かりました」
再び眩い光を放ち、白鹿は消えた。
☆☆☆☆☆☆☆
ピチチチチッ
小鳥の鳴き声が聞こえる……。
意識が浮上し目が覚める、見慣れない天蓋付きの豪奢な寝台!!!
ガバリと起き上がり見回すけれどここはやっぱり異世界で、聖女っぽく(いや聖女)夢で神託?まで受けてしまった。
「はぁあ〜私が世界を救う聖女様とか……マジかぁ〜。
でも蓮とヴィーが側にいてくれるから、ボッチじゃなくて良かった」
欠伸しながら大きく伸びをした後、膝を抱え頭をコテンと乗っけてため息をついているとコンコンコンとノックされたので「どうぞ」と返事をするとガチャっと扉が開き、ワゴンを押しながらビアンカさんが寝室まで入ってきた。
「おはようございます、マリア様」
「あっ!!!おはようございますビアンカさん」
天蓋のカーテンを紐で纏め、ワゴンを寝台の横につける。
「お目覚め如何ですか?
アーリーモーニングティーをどうぞ。
王室御用達ニャンナッツ社のキャラメルフレーバーです。
お砂糖とミルクは要りますか?」
「ううん、要りません」
寝台の上でおめざのモーニングティーなんてお貴族様だ。
ニャンナッツ社って……ヴィーが関わってそうな気がする。
因みに私は紅茶もコーヒーもストレート派だ。
左手にソーサー、右手にカップを持ち先ずは甘い香りを楽しむ。
コクリと一口飲むと鼻に抜けるキャラメルの香り、コレこの前購入して飲んだ○ャンナッツの猫の日○ックのと同じ味〜!!!
朝から美味しいお茶を飲み干すと、ソーサーごとビアンカさんに渡して寝台から降りる。
バスルームに連れて行かれ用意されてた温水を張った盥で顔を洗い、フカフカのタオルを渡された。
そのまま鏡台まで移動し基礎化粧、ナチュラルメイクでホッとする。
服は聖女様仕様のデコルテが綺麗に見える白いローブ袖は手先に向かって繊細なレースが広がりひらひらと金魚のヒレのよう。
腰に見事な刺繍入りのベルトをゆるく前で結び、靴はローヒールでこれもまた細かい刺繍でお値段高そう……そう貧乏人な私は直ぐにいくらするのだろうかとお金で考えてしまうのだ。
髪型はハーフアップにして貰い、お気に入りの金の薔薇のバレッタ(金メッキ)を付けてもらう。
「マリア様、この髪飾り素敵ですね、聖女服もお似合いですわ」
「ありがとうビアンカさん、所で今日はどんなどんな予定になってるのですか?」
「これからレン様と共に朝食を取っていただき、その後神殿から来られた神官様と面会、昼食後にこの国について文官が説明に、晩餐はシュナウザー侯爵夫妻が来られます」
「シュナウザー夫妻と晩餐……ヴィーは来ないんですか?」
「今日はヴィルム王立魔法学園の入学式なので、リヴァルド殿下とアルベルト侯爵子息、ヴィクトーリア侯爵令嬢は晩餐後に客間で茶会の予定をしておりますので会えますよ」
「良かった、会えるんですね」
昨日はバタバタしていてスマホやタブレットを渡せなかったたけど、いつ渡そうかな。
「もうヴィクトーリア侯爵令嬢と仲良くなられたのですね」
「えぇ……昔からの親友な感じに意気投合しました」
実際向こうで大親友だったのだ。
ヴィーがこの世界に転生してくれてて、また会えた事に感謝したい。
「まぁ……ご婚約者のレン様がいらっしゃいますが、同年代の友人が出来てようございました」
先ずは朝食、早く蓮に会いたい。
ありがとうございます。




