60 エクスカリバー
このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。
(ああ、また僕の目の前で人が死ぬ)
王は夢葉の姿を見て、幼少期の自分を思い出していた。
王は幼少期に事故で両親を亡くしていた。正しくは事故ではなく、人災であるが。そんな王は齢6歳でホームレスとなる。彼を救おうとする者は一人もいなかった。彼がこの世界に絶望し、死を予感したとき、ある一人の女性に出会う。彼女は王を手厚く看病し、独り立ちの援助を行った。王は立派に育ち、独り立ちをし、風間の元で暮らしていた。
王は幼い頃に抱いた死に直面するという経験から、死に対しての関心も興味を失ってしまった。しかし、今、彼の目の前で夢葉が死にそうであった。王は思わず走り出す。しかし、普通に走っても間に合うわけもない。王は神経を研ぎ澄ました。すると、刀が星のように輝き始めた。
王の剣術は、“光ノ型”と呼ばれており、風間の使う“火ノ型”とは同系の型であるのだが、光ノ型の方が剣速が早く、簡単に言えば火ノ型が攻撃力特化で光ノ型がスピード特化である。
王が刀を抜くと、一瞬にして夢葉の元に来ていた。一方、夢は死を覚悟し、目を瞑った。そのとき、夢は人肌の温もりを感じた。目を開けると、そこには王が夢葉を抱きかかえ、ランスロットの剣を受けていた。
「王君……!?」
「大丈夫!神楽さん!!」
王はランスロットの剣を跳ね返すと、光を纏った刀でランスロットを斬りつけた。傷は浅いが、ランスロットの胸には大きな傷ができていた。
「僕の剣技も磨き上げてきたから、2人で奴らを倒しましょう!」
王がそう言うと、夢は頷いた。ランスロットは自身の傷を見ると、巨大な咆哮をした。すると、周りにいたベストロンたちが変形していき、ランスロットに合体していく。たちまちランスロットはさきほどよりも10倍ほど大きくなり、背中から2本の剣を持った腕が現れた。
「憾咲さん。奴、今の僕たちじゃ敵いませんよ?」
「……貴方、恩寵が複数持った敵と戦ったことある?」
「そんな人間いるんですか!?」
夢葉は不敵に微笑んだ。
「そんな敵に比べれば、アイツなんて雑魚よ。とっとと終わらせてエクスカリバー探して帰りましょう」
夢葉はランスロットに向かって、拳銃を構えた。そのとき、夢に頭痛が走った。
「君は神楽……。……の妹にあたる」
「そろそろ始めようか」
夢葉はうずくまる様に地面に倒れこんだ。
「何……!これ!」
夢葉の中に存在しない記憶が溢れてきた。そのとき、ランスロットが再び襲い掛かって来た。王は夢葉を庇った。ランスロットの剣が王の心臓を貫いた。王は口から吐血をして倒れる。そのとき、近場から地響きが起きる。夢葉は苦しみながら王に寄り添う。頭痛のせいで“ハイスペック”が上手く使えない。夢葉は重々しくブラウスを脱ぐと、王の胸に当て付けた。白いブラウスが一瞬にして赤黒く染まった。
「……死なないで!王君!!」
夢葉の問いかけに、王は既に反応していない。夢葉の瞳から涙が溢れ出る。ランスロットはそんな光景に何も抱くわけがなく、ゆっくりと歩み寄ってくる。
聖剣エクスカリバー。星の石から作られたとされるその剣の刃は硬いが、しなやかで丈夫である。折れても復活するという特殊な力を持ち、持ち主に合わして特長を変える。伝承では、剣に歴代の王が宿るとされている。
王は目を覚ますと、何もない空間にいることに気づいた。王は辺りを見渡すが、これといった特徴はない。王は歩もうと思ったが、不安と恐怖で足が動かなかった。そのとき、王に眩い光が襲う。王は目を覆った。やがて光が弱まり、ゆっくりと目を開けると、目の前に石に刺さった錆びた剣があった。
王はその剣に触れる。その瞬間、莫大な記憶が王に入り込んだ。それは間違いなく王様の記憶であった。王はゆっくりと剣を抜く。何となく抜ける気がした。剣は抵抗なく岩から抜けていく。抜けるのと同時に錆は落ちていく。王がその件を抜き切ると、剣は星のように輝いていた。
「おめでとう。君が7代目だ」
王が正面を向くと、そこには金髪の隻腕の男が立っていた。王はそれがアーサー王だと一瞬で気づいた。
「あなたは……、アーサー王ですか?」
「私なんか王の器じゃないさ。友一人救えない私になんか王と言われる筋合いはないさ」
男はそう言うと、ない左腕を確かめながら言い放った。
「それに、私はエクスカリバーの本当の力を引き出しきれなかった。それに君にエクスカリバーは似合うぞ」
男はそう言って、王の肩に手を置いた。
「その剣から見てるぞ、7代目」
男はそう言うと、王のおでこにデコピンをした。
王はそのとき、目を覚ました。目の前には、溶けかけているランスロットがいた。王は自分自身を見た。黄色がかった光が王を包んでおり、頭には光でできた王冠のようなものを纏っていた。王は後ろを見た。そこには、困惑している様子の夢葉が立ち尽くしていた。
「良かった……!私、てっきり死んだものかと……」
夢葉がそう言うと、王は慰めるように頭を撫でた。
「止めて。まだそういう関係値じゃないでしょ」
王はそう言われ、手を引っ込めた。
「神楽さんは、ここで見てて。僕は一人で大丈夫」
王はそう言うと、エクスカリバーを構えた。ランスロットは光の熱で溶けた体を再生させ、巨大な咆哮をした。ランスロットは巨大な掌を王に振り下ろした。
「“光ノ型 流れ星”」
王はそう囁くと、一瞬にしてランスロットを斬りつけた。夢ですら何が起きたのか分からなかった。
「何その技……?本当に光ノ型なの?」
「神楽さんに前に一度話したかな。僕は少し前に記憶を少し失ったって言ったでしょ?でも走馬灯の中で思い出したんだ。……というかこれが教えてくれたんだ。風間流と同型の僕の剣技。……光ノ型。これが僕の全力さ」
ランスロットは混乱しながらも両腕を振り回す。凄まじい冷風が二人を襲う。ランスロットは片腕を巨大な剣に変換した。
(凄い。エクスカリバーの記憶が僕とリンクしていく……!さっきまであんな苦戦していたのが馬鹿みたいだ)
王はエクスカリバーを後方に構えた。
「“光の型 三日月”」
三日月をなぞるように描かれた斬撃は、ランスロットを真っ二つにした。
辺りには、心地の良い冷気が漂ったのだった。
ランスロットは、地面に崩れ落ち、爆発を起こした。
王はエクスカリバーを離すと、地面に手を付いた。王の息は荒く、肩で息をしていた。
「王君!」
すっかり元気になった夢葉が王の元へ駆け寄った。
「怪我はない!?」
「……大丈夫。ただ、これめっちゃ疲れるね」
王はそう言うと、エクスカリバーの異変に気が付いた。エクスカリバーは輝き出し、ネックレスのような形状で、王の手元に来た。
「急に光ったり、ネックレスになったりと、本当にめちゃくちゃな剣だよ……」
王はそう言って、首元にエクスカリバーを付けた。そのときだった。全てランスロットに合体したはずのベストロンが復活していた。
「やっぱり。斬られた場所以外のベストロンは無事よね……」
夢葉は見える範囲のベストロンを数えた。その数は先ほどまでとはいかないが、100体は優に超えていた。夢葉は拳銃を握りしめた。そのときだった。
『待たせたね。ミス神楽さんにミスター王。ミスター風間の救援信号受け取ったよ』
夢葉が上空を見上げると、そこには一人の男が浮いていた。男は指で円を空中でなぞっていた。
「エンシェント=ジェントル……!」
エンシェント=ジェントルは、独り言を呟いている。
「マントン。彼らを助けてきてくれ。……私なら大丈夫。落下死はないように“魔法陣”を張ってあるから」
エンシェント=ジェントルは、マントンと呼ばれる赤いマントにそう言うと、助けに行くように促した。マントはエンシェント=ジェントルから抜け出すと、物凄い勢いで二人の元へ駆け寄った。エンシェント=ジェントルは、マントが離れた途端に地面に勢いを増しながら落ちていく。そのとき、エンシェント=ジェントルは、指を鳴らした。
「君たち二人が、避難誘導に加え、あの巨大なベストロンを退けてくれたお陰でこの数もの魔法陣を生成できた。これで心置きなく……」
空には無数の魔法陣が浮かび上がった。
「“付与・雷神 捻じれる雷”」
空から無数の雷が落ちていき、その雷は、ベストロンを追尾するかのように落ちていく。瞬く間に、半数ほどのベストロンが破壊され、遂には目視で数えられるほどにまで減っていた。
「これが、レジェンダリ……」
夢葉がそう呟いた。王はマントのフカフカさに感激していた。その後、安全な場所に移動したマントは、二人を置いていくと、すぐさまエンシェント=ジェントルの元へ向かった。地面寸前でエンシェント=ジェントルは回収され、一気に急上昇していく。残りのベストロンは撤退していった。エンシェント=ジェントルは、優雅に二人の元へ向かった。
「怪我はないかい?」
二人は頷いた。その様子を見たエンシェント=ジェントルは、優しく微笑んだ。
「済まないが、もう行かなくては……。レジェンダリを必要としている人は沢山いるんでね」
そう言って、エンシェント=ジェントルは華麗に去っていった。




