30 陰陽龍
このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。
十位の発表の瞬間、場飛は広間全体を黒い靄で包んだ。一瞬にして、東祭連合邸前に到着した。三メートルほどある大きな扉の前に表は立った。表は白い煙に包まれた。
「“息吹轟雷”」
煙の中から雷のような光線が放出された。それは扉を貫き、邸宅の屋根を半壊させた。
「龍兄、やり過ぎ」
斑点がそう言うと、片手をかざした。
「“大黒大波”」
斑点の掌から凄まじい衝撃が邸宅に風穴を開けた。大きな風穴から数名の男たちが現れた。
「随分手厚い来訪だね。……用はなんだ?」
スキンヘッドの巨漢は、睨みつけながら言った。
「君が東祭連合直系富士間組組長の富士間大だね?小錦林に逮捕状が出ています。おとなしく彼を差し出しなさい」
「あァ?んな適当なこと聞いてられるか!おい、北山!」
彼の後ろからリーゼントヘアの男が現れた。
「皆様、初めまして。富士間組の若頭を務めさせていただいています。北山岳流と申します。我々も少々小錦の悪行には勘づいておりましたが、今回の件は流石にやり過ぎではないでしょうか?これは立派な器物破損なのではないでしょうか?」
北山がそう言うと、斑点が反論した。
「実は小錦林の逮捕状とは別に、我々には内閣からの直接の命令が下りまして……。それが極道組織の解体。つまり、これは合法となります」
それを聞いた富士間は舌打ちをした。
「……やはり情報通りだったか」
「情報通り……?」
表がそう言うと、富士間は何もなかったかのように話を再開した。
「例えこれが合法だとしても、流石抵抗する権利はあるよなァ……」
そう言ったとき、穴から何人かが出てきた。
「彼らは……、どうしてこんなタイミング良く各組の組長が揃っているの……?」
そこにいたのは、東祭連合の計三人の組長。富士間、鷹山一、那須川達朝。そして若頭の北山、鷲尾末人、瓜田庇吾。そして、東祭連合の会長である小錦木造。総員はいないものの八割近くの組員が現れた。
「どうして……」
斑点がそう言うと、木造はメガホンを構えて言い放った。
「情報を持っているのは、お前たちだけじゃないぞ」
木造はそう言うと、不敵に微笑んだ。今、極道組織と公務員の全面戦争が起きようとしていた。
日が落ち始めている中、辺り一面は炎に包まれているが、近隣には被害が一切出ていなかった。それは警察ランキング七位の土田菜介の恩寵“土流”によって地面が反っており、炎が広がらないようになっている。状況は混戦、しかし、有利なのは公安&公務員協会側だった。しかし、そのときだった。上空に三体の黒い巨大な人型の物体が現れた。
「龍兄、あれは公安の隠し札!?」
表は首を横に振る。表は口から巨木のような衝撃波を放つ。三体のうちの一体が、口から“熱光線”を放つ。相殺はされたが、爆発し辺り一面に土埃が舞う。謎の人型物体は地面に着地していた。全体的に黒いが赤、青、黄の差し色がある。
「特撮かァ?」
鷲尾がそう言うと、長い爪で襲い掛かると、青色の人型物体が、鷲尾の右腕を切り飛ばした。鷲尾は衝撃で飛ばされた。
「おい、龍兄、こいつら……!もしかして、情報にあったWKの新型じゃないか?」
斑点がそう言うと、赤色の人型物体が口を開いた。
「ソノ通リ。猛キ炎、W=レッド!」
「荒ブル水流、W=ブルー!」
「轟々雷鳴、W=イエロー!」
三体は三人で三角形の形をとった。
「我ラ、ホワイターズ!!!」
辺り一面に静寂が訪れる。
「……殺ス!」
ホワイト=レッドが叫んだ。
只でさえ混戦であった戦況がホワイターズによって、更に悪化しているときから数日前、夢は覚悟を決めていた。炎司と鳶鷹の後をつけようとしていた。
二学期も今日で終わり、明日から冬休みであり、クリスマスイブでもあった。夢は帰りの準備と同時に、炎司と鳶鷹を監視する。そして、二人の数十後に同じように教室を後にした。夢の恩寵をもってすれば尾行は容易い。足跡から簡単に彼らの進路を予測する。彼らは幾つもの道を曲がっている。ときには高所や狭路もあるが華奢な夢にとっては楽である。やがて、二人は暗い路地裏に入っていった。気配を感じながら、待ち伏せではないことを確認した夢は、路地裏へ入った。
しかし、そこは行き止まりだった。
(なるほど。奴らの本拠地は下水道に繋がっているのね。これなら匂い系の探知は効かない)
夢はマンホールの蓋を開けて、侵入した。
下水道は臭く彼らは更に痕跡を消していたが、零課の夢にとっては容易に尾行できた。何回も曲がっていたときだった。同じ道を繰り返していることに気づく。
(おそらく監禁系の恩寵に妨害されているわね……)
夢はそう考えると、懐から恩寵模倣弾を取り出した。
恩寵模倣弾 “セジョウ”これは一定時間に変化を停止させる。停止できるものは動いている、変化しているものは全て対象である。
夢は適当に地面に放った。そして、意識を研ぎ澄ました。水の音の反射で出口を導き出した。夢は一気に走り出した。着いた。下水道に似つかない金属製の重工な扉があった。扉を蹴り開けると、そこには四両の電車が線路上に置かれた開けた場所だった。
「嬢ちゃん、見ない顔だね」
一人の男が夢に話しかけた。身なりでホームレスだということが一瞬で分かった。
「ここが『徒陰』の本部ね」
夢がそう言うと、奥から物凄い勢いで何かが飛んできた。夢は避けるが肩から血が滲んだ。
「ほう。俺のストレートを避けるとは、中々目が良いね、嬢ちゃん」
そこにはスキンヘッドの巨漢が立っていた。
「その構え、拳闘士ね」
「へえ、嬢ちゃん、ボクシングを知っているのかい」
「嬢ちゃんじゃないわ。憾咲よ」
「……覚えておくぜ」
男は拳を鳴らすと、夢を睨んだ。夢も構える。始めに動いたのは男だった。男は姿勢を低くして、夢の懐に入ろうとする。しかし、夢は更に姿勢を低くして足を上げる。夢は見様見真似で躰道の動きをする。
「イワさん待って」
そのとき、火柱が二人を止めた。イワさんと呼ばれる男は寸での所で止まったが、夢は止まらず、蹴り飛ばした。
「あ、ごめん」
火柱がそう言うと、夢は距離を取った。
「今更防御姿勢とるのは遅すぎないか?」
「うるさい!」
夢が叫ぶと、火柱は狐の半面を取った。そこにいたのはやはり炎司だった。
「やはり君だったのね」
「今更だろ」
炎司がそう言うと、仮面を腹部のポケットに入れ、夢に背を向けた。
「お前がここに来るのは大黒柱が予言済みだ。着いてきな」
炎司がそう言うと、歩み始めた。夢はすかさず炎司の首筋に狙いを定める。しかし、炎司の奥から途轍もない殺気が夢を襲い掛かる。夢は尻餅をついた。夢は落ち着くと、炎司の後へ着いていった。中に入ると、十三席ある円卓の間があった。一番奥には老人が座っていた。夢は瞬時にこの老人から先程の殺気が放たれていたのを感じ取った。老人は夢を見ると、優しく微笑んだ。
「よくぞ参られた。適当な席にどうぞ」
夢は老人に言われた通り、向かい合うように席に座った。
「先程は済まないね。ホームレス王の恩寵は対象者を選べるのだが、報告しておくのをわすれておった。それよりも早速本題なのだが……」
「貴方が『徒陰』の大黒柱、大道寺政宗なのですか?」
夢がそう言うと、大道寺は頷いた。
「儂の名前は敏正から聞いていたのかな?」
夢は首を横に振る。
「いいえ。ただ、総理はよく貴方の話をします……」
「そうかそうか。居心地の悪い場所だが、のんびりしてってくれ」
夢は相手のペースになっていることを理解していた。しかし、体が思うように動かない。それほどまでに彼の殺気が凄まじいのである。夢の額から汗が噴き出る。
「夢さんは『徒陰』について聞きにきたんじゃろ?」
夢は頷く。汗が地面に数的零れる。
「すまんな。最近は気が詰まることが多くて、少々殺気だってしまっていたようじゃ。では、先ずはこの映像を見てくれぬか?」
夢は再び頷く。大道寺は思い出すような口を開いた。




