28 文化祭
このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。
そして当日。炎司たちは休日の学校に訪れた。
『夫丈工祭』。三学期に全体である『夫丈祭』とは異なり、工業科が主体となり行われる発表会である。主に学生たちが作ったものを企業に紹介する機会である。
「炎司か!」
炎司は数手に呼び掛けられると、振り返った。そこには全身青い機械に包まれた数手がやってきた。
「……数手か?なんだその恰好……」
炎司がそう言うと、数手は頭部の全体を覆っている仮面を脱いだ。
「これはパワードスーツって言ってな。誰でも着れるように調整中なんだが……。人災者から一般市民を護るために作ってるんだ!そうだ、炎司の分も……」
「炎司!中行こうぜ!」
数手の声を遮るように、茂の声が聞こえた。
「済まない。じゃあまた後で……」
炎司がそう言うと、数手の返答を待たずに去った。
炎司たちが中に入ると、そこには数々の機械が並んでいた。中には、田中雫が一昨年作った圧縮機構「SUKUNA」や伸縮性のある鉄糸「アイアンファイバー」の試作品が飾られていた。炎司たちが中を歩いていると、炎司の肩に一人の女性がぶつかった。深く帽子を被ってサングラスをしていたので、顔は見えなった。
「済まない。怪我はないか?」
炎司がそう言うと、その女性は何も言わずに去っていった。
「どうした炎司」
鳶鷹がそう言うと、炎司は首を振り、何事もなかったように歩みを再開した。
個室のトイレで先程の女性は震えていた。彼女はきららだった。彼女は今まで真面目に生きてきたからこそ、今日のように卑怯な行動に慣れていなかった。彼女はふと出立前に父親に渡された注射器を取り出した。
「……ただの精神安定剤だって言われたけど……」
きららは注射器をしまおうとしたときだった。天井に気配を感じた。瞬時に天井を見上げたが、そこには何もなかった。安堵し、視線を前の戻したときだった。眼前に見知らぬ男が立っていた。男はフードを被り、丸いサングラスと黒い不織布マスクをしている。次の瞬間、腹部に激しい激痛が襲った。暫くして男に殴られたことに気づいた。
「きららちゃん、ダメじゃんか。ちゃんと言われたことやらないと」
男はそう言うと、きららから注射器を取り上げ、彼女の首筋に射した。彼女はそのまま気絶してしまった。
『さぁさぁ!ご覧ください!今回の大目玉!自身で発電し、その不燃料を燃料とし、半永久的に稼働し続ける新エネルギー!』
二年生の字京たちが全体に向かって紹介している。彼らの横には厳重に置かれた数手の発明品が飾られていた。来場者はそれに釘付けである。炎司たちもそれを遠目で見ている。そのときだった。上空にTOP1が現れた。
「“大・損”!!!」
TOP1は大きく息を吸うと、ダストレスエネルギーが吸われていった。そのときだった。青い鎖がTOP1に巻き付いた。
「なぬ!?この色の鎖……!やが、おれの恩寵なら……」
しかし、鎖を解くことはできなかった。そしてTOP1の上空に大きな鳥の影が現れた。鳥足がTOP1を叩き落とした。TOP1は血反吐を吐きながら呟いた。
「何でナンバー8、9、10位がいるんや……!」
そこには、警察ランキング8位草木薔薇すみれ、9位布川錠介、10位鳩宗ひばりが立ち塞いでいた。
「今回の夫丈工祭は一昨年並みに重要なものと予測されていた。一昨年は田中さんが自衛システムで何とかなったが、今回は校長先生から要請がありましてね」
草木薔薇がそう言うと、TOP1をより頑丈に拘束した。そのときだった。辺り一面が小さく揺らいだ。突然、校舎から巨大な筋繊維で包まれた巨大な手が現れた。巨大な手が三人を薙ぎ払った。崩れた校舎の中から巨大な筋繊維に包まれたきららが現れた。
「なんや!ショーにしては大袈裟やな!」
拘束の解けたTOP1がそう言うと、空中に浮いた。そして、手でメガホンのようにすると叫んだ。
「“羅・波”!!!」
巨大な衝撃波がきららを襲った。きららは耳を筋繊維で覆った。そして、背中から伸ばした筋繊維でTOP1を叩きつけた。
「俺の獲物を獲るなよ……」
TOP1はそう言ってゆっくりと立ち上がった。近くに転がっていたダストレスエネルギーを切森大奈が拾い上げると、きららに向かった叫んだ。
「おう!きらら!ようやったわ!これで俺の野望が叶うぞ!」
そのときだった。大奈の背後に先ほどのフード男が忍び寄っていた。
「残念。それは俺たちのもの」
そう言うと、男は大奈の首に注射器を刺した。大奈はダストレスエネルギーを手放すと、苦しみはじめた。段々と巨大化していく大奈を横目に男は、去ろうとしたときだった。炎司の炎が男を襲った。
「……やっぱり分身の耐久そんなないなあ……」
そう言い残すと、男は解けていった。乗客者の救助を一通り終えた炎司たちは、今の状況に慌てていた。丁度周りに教員はいない。そのとき、騒ぎを聞いた数手がやってきた。
「炎司!……なんだこれ……」
「俺も今来たところだ」
「あんな巨大な人災者見たことない……。そうだ炎司、君に渡したいものがあるんだ」
数手がそう言うと、炎司に二つのブレスレットを渡した。炎司は言われるがまま、両腕にブレスレットを付けた。
『お早う御座います。大道寺炎司様。私の名前はWeekEnd。貴方の戦闘をサポートします』
ブレスレットから電子音の女性の声が聞こえた。炎司は少し驚いた。
「な、なんだこれ……」
炎司がそう言うと、数手も両腕のブレスレットを見せながら言った。
「これはさっき僕がつけていたパワードスーツに必要なものなの。ほら、このボタンを押せば……」
数手が炎司のブレスレットのボタンを押すと、遠くの方から何かが飛んできた。
「“自立型自動装着飛行ユニット”。ブレスレットの特殊な磁力を感知したパーツは、装着者の元に集まってくる。更に装着したものの磁力から更にパーツが集まることで、完全体となる」
数手が説明している間に、パワードスーツが完成した。
「炎司が装着しているのが“Red Lightning”。私が装着している“Bule Loving”を炎司に合わせて調整したモデルよ」
炎司は体を動かしながら言った。
「機械なのに、軽いし動きやすいな」
「そうなんだ!ダストレスエネルギーのお陰で、四肢の部分にエネルギーを放出させてるから、常に軽く浮いているんだ!装着者の動きを検知してサポートしているんだ!」
熱弁しかけている数手を炎司が制止すると、基本的な操作説明をしてもらった。炎司が両手、両足の放出口からエネルギーを放出すると、炎司は空を飛んだ。
「相手は二体、それに変態が一人……。どうしたもんかな」
「まてぇい!俺は今、敵意はないぞ!」
TOP1がそう言ったが、どうにも信用ならない。
「褌変態野郎は俺たちが相手する!」
そこに現れたのは、鳶鷹とそれに乗った茂だった。茂はTOP1を蔓で拘束し、遠くへ投げつけた。
「よし、襷来。俺たちでこの人災者を止めるぞ」
数手は初めて炎司に下の名前で呼ばれ、ニヤニヤしながら返事をした。
二人は空を飛びながら、手からエネルギー弾を飛ばした。しかし、ダメージを受けている様子はない。
「襷来、この胸の所から強いビームは出ないのか?」
炎司は飛びながら問い掛ける。
「この胸のやつは、容量を確認するもので、そっからビームは出ない!このダストレスエネルギーは永久のエネルギーではないんだ!エネルギー効率が恐ろしく良くて、エネルギーの存在自体は無限かも知れないが、それを収納する容器は錆びたり壊れたりする!」
そのとき、数手が大奈に掴まれた。数手は腕を刃物に変化させると、筋繊維を断ち切った。
「なあ、ウィークエンド。これの耐熱温度は何度だ?」
『はい。およそ3200度ほどです』
「なら十分!」
炎司はそう言うと、両腕を胸前で添えた。
「俺の形状に倣ってくれ!」
炎司がウィークエンドに言うと、ウィークエンドはただ一言だけ返事した。腕が変形し、一つの巨大な大砲へ変化した。炎司の炎+ダストレスエネルギーの力で、巨大なエネルギーを放出した。
一方その頃……。
「お前、人一人乗せてるのに、よくそんなに飛べるな!」
茂がそう言うと、鳶鷹はにやけた。
「しかし奴の攻撃……。“自分がイメージできる現象を具現化する力”か……。茂の予測が当たってれば、無敵に近い恩寵だぞ……?」
鳶鷹はTOP1の攻撃を避けながら言った。
「ただ弱点もあるはず。例えば、相手が想像するより前に攻撃を仕掛けるとか……。それに奴は自身にダメージが入るような使い方はしないよな?鳶鷹」
「ああ、確かに。それ最近思ったんだけどさ、炎系の恩寵者って炎司しか見たことないよな?」
鳶鷹は突然そう言うと、茂は思い出すような素振りしながら口を開いた。
「確かに。煉獄さんみたいに炎を操る人はいるけど、炎そのものになる人は炎司しか見たことないなあ……」
そのとき、真横にTOP1が現れた。
「やっほー。……自身の身体強化系は、想像に時間が掛かるから大変なんだよなァ!」
「“大・小・爆”……」
二人が爆発しかけたときだった。TOP1はコンクリートに包まれた。
「こ、膏田先生!」
地上にいたのは、2-Cの担任である膏田典太だった。他にも何人かの教員がいた。
「緊急招集されて駆けつけてみれば、よくこうも簡単に侵入されたな!」
そのとき、TOP1の口を何らかの液体で塞がれた。
「それは俺がグルーガンを改造した代物だ。俺の恩寵を遠隔で使用できる。お前は暫く喋れない」
そこにいたのは土木だった。TOP1は額に血管を浮かばせながら、藻掻いている。
「土木先生!」
鳶鷹が駆け寄ると、土木は二人の肩に手を添えた。
「よく護ったな。俺たちの努力を……」
二人は照れくさくなった。
「土木先生!それより、校舎側の方が……」
茂がそう言うと、土木は安心させながら言った。
「向こうは大丈夫だろう。なんてったって、あの二人が向かったからな……」
炎司のエネルギー砲は大奈にダメージを与えたが、決定打とはならなかった。大奈の巨大な腕が炎司に振り下ろされそうになっていた。数手もきららに握りつぶされそうになった。
「よく耐えたな」
その言葉と共に、大奈の腕が弾け飛んだ。炎司の前には教頭である豪炎寺鬣が立っていた。ほぼ同時にきららの体に巨大な恐竜の牙が刺さり、数手は抜け出すことができた。恐竜とは臥龍岡菊吾のことである。彼の恩寵は“異竜”。文字通り、古代に生きた恐竜へと変身する。臥龍岡は体当たりできららを吹き飛ばすと、尻尾で叩き落とした。たった二撃できららを沈めた。
豪炎寺の両腕が黄金に輝きだした。
「私の“黄金”は輝きが直接攻撃力となっている……」
豪炎寺は軽く飛んだだけで五十メートルほど高く飛びあがった。
「“地球割り”」
豪炎寺の拳は、大奈を真っ二つにする程の威力だった。実際、真っ二つではなく、巨大な筋繊維を二つに割いただけであるが、その光景は圧巻だった。
その後、応援の警官たちがやって来て、切森の二人とTOP1が逮捕された。警察ランキングの8、9、10位の面目があるのか大々的には報道されてはいなかった。
「あくまでの物体を動かすためのエネルギーか……。ご苦労だったね」
「ああ。でもそのダストレスエネルギーが人体に有効だったら、俺たちの計画は完全だったのにな」
「まあ、気にすることはないよ。あくまで補助だからね。それがなくても計画は成功するよ」




