希望を冠する悪魔・断章
――僕らはどうしたら絶望と仲良く出来るのだろう?
その悪魔の名前は希望である。なにものよりも分ちがたくそして、機縁に満ちたこの世界にただひたすら、自分の居場所を求めている。
炎が微かに飛び散った。それが始まりの終わりだった。
誰にとってもそうだった。
これはきっと届かない想い。
それだけ詰め込めてもまだ、どこかに隙間が残っている。
その隙間を、その隙間を、どうしても埋めてしまわなければ、どこにも辿りつけないだろう。
どうしても、埋めてしまわなければならない。
そこに希望を詰め込んだ。
切って、刻んで、千切って、くしゃくしゃにした希望をもってしても、隙間は埋まらない。
どうせなら、もっとたくさん埋めてしまいたい。
転げ落ちた希望の欠片をまだ寄せ集めても足りない。
それは触れると温かいばかりでは無く、ちょっとだけ柔らかくて、でもどこか冷たい。
広げ過ぎたものは折りたためば良い。
畳んで、畳んで、どんどん小さくなったその一欠けらをまた、詰め込んで。
ああ、安らぎに至るまでの遠く険しい道のりはまた、なぜ険しくなければならないのだろう。
遠巻きに見ても、それは隙間だらけで、まだ埋め合わせの余地を残している。
まるで穴だらけの世界地図だ。
もう使えないその地図は、宝のありかをそっと記した思い出とともに、くしゃくしゃにしてまた隙間を埋める。
それだけのことをしてもまだ、隙間は埋まらない。
色々なものを捨てて来た。それで帳尻合わせても、埋めた隙間がまた広がる。
それ以上は辛いだけだから、きっと、やめてよ。
鏤められた欠片が、融けてやがて、薄く沁み込んで行く。
それは、どこか冷たくて、柔らかく、そして端の辺りが少し温かい。
だったらまた、少しずつ希望の色を数えて行く。
透明が過ぎ去った今もまた、僕らの隙間を埋めるのは、真っ黒な希望。
絶えて無くさないように、そっと包み込む。
濁流に押し流される事無く、灰色の空の下で雪を見つめる。
たったそれだけだ。それだけなんだ。
空が近くても、遠くても、隙間はまだ埋まらない。
希望が携えてやってきたのは、まだ生まれても居ない想いの残滓。
消え入りそうな声で呟く声は、またやってきた透明に掻き消された。
届かぬ闇の凍てる遥かに、沈みゆく絶望の影一筋。
そしてまた、広がる隙間を埋める為に、希望を集めて、また散らす。
まるめて捨てた古地図のように、色褪せた薄靄に融けて消える。
This continuation is in the next "229".