女性、怖い
週一でこの文字数だと一向に進まない……。だからといって変に更新頻度上げたり文字数増やしたりすると、今度は普通に更新頻度を上げるとき(別シリーズが一区切りつく)までもつかが不安で……難しいっすね。
「おらぁっ!!」
「ブモォッ!!」
セイグラッドから東におよそ5キロティア、ゴブリン平原と呼ばれていた場所の反対側にある別の草原に、豪快な掛け声と、断末魔の声が響き渡る。
勇者パーティーの一員である大吾が、その手に持つ巨大な槍斧で赤牛を叩き斬った音である。
「…………」
「!?」
別の赤牛に音もなく忍び寄った恵が、いかにも忍刀、というような短刀で赤牛の首を掻き切る。
訳も分からず絶命する赤牛。
「《火球》!」
「モ゛ォッ!!」
琴音の火球――いや、「豪火球」と呼ぶに相応しい巨大な炎を受け、また別の赤牛がその身を灰と化す。
「モォォオオッ!!」
「ふっ――やぁっ!」
「モォオッ!?」
そしてまた別の、一際大きい赤牛が、紘輝に突進を受け止め、受け流され、すれ違いざまに首を両断される。
「ふー……」
息を吐き出しながら腰にある鞘に剣をしまった紘輝は、その人並外れた膂力をもって、頭の無くなった赤牛を持ち上げる。
「お? 紘輝、何やってんだ?」
それを見て不思議そうに問いかける大吾。
紘輝は、肩に担いだ赤牛を見て答える。
「このレッドブル、肉が美味しいとかで、結構高く売れるんだってさ。だから、生活費の足しにしようかなって」
「生活費? ったって、王サマから結構な額貰ってんぞ?」
「まぁ、それもそうなんだけど……やっぱり、それに頼りっきりになっちゃうのも良くないかなってね。もちろん、依頼の報酬も貰えるけど、使えるお金は多いに越したことはないし」
「なるほどなァ……じゃ、俺も持って帰るとすっか」
そう言って大吾は、紘輝よりも遥かに軽々と傍らの頭部のひしゃげた赤牛を担ぎ上げる。
「ん……」
と、そんな大吾の脇腹をつつく恵。
「お? どうした、恵」
恵がちらっ、と視線を向けた先には、彼女が討伐した赤牛が。その後ろには、引きずられた跡もある。
「なんだ、俺に運べってか?」
コクコクと頷く恵。
「おめぇだってステータスは高ぇんだから、持ち帰ることぐれぇ出来んだろ?」
大吾のその言葉を聞いて、不満そうに口を尖らせる恵。実は意外と長い付き合いの大吾は、そんな彼女の言いたいことをしっかりと察する。
「へいへい、か弱い女の子に力仕事はさせませんよ、っと……」
そう呟きながら、恵が討伐した分の赤牛も担ぎ上げる大吾。明らかに自分より大きい牛を両肩に担ぐ姿は、中々にシュールである。
そんな2人を見ていた紘輝は、視線を琴音の方に向ける。
「琴音はどうす……あっ」
琴音の赤牛は自分が運んだ方がいいのかと思い声をかけようとした紘輝だが、彼女の倒した赤牛を見て思わず声を上げる。
琴音の全力の《火球》を受けた赤牛はすっかり炭化して、売れるような状態ではなくなってしまっているのだ。
そんな赤牛を悲しげに見つめていた琴音は、自分に声をかけようとした紘輝に気付き、そちらを見る。
目にうっすらと涙を浮かべながら。
「うっ……」
どう声をかけたものかと言葉に詰まる紘輝。
琴音はそんな紘輝をうるうるとした目で見つめながら1歩近付く。
それに合わせ、ジリッ、と1歩下がる紘輝。
もう1歩近付く琴音。
今度は2歩程離れる紘輝。
今度は琴音が3歩詰める。
「……何やってんだ、おめぇら」
そんなことを繰り返している2人に大吾が呆れたように声をかけると、2人の動きがピタッ、と止まる。
「……え、えっと、俺のレッドブルの代金半分あげるから……大きいからその分高く売れるだろうし……」
「うん……ありがとう、ヒロ君」
「その呼び方恥ずかしいからやめてって何度も……はぁ、もういいや」
ゆっくりと頷く琴音に、小さい頃から続く呼び名を改めさせようとして諦める紘輝。自分の幼馴染が変なところで頑ななのは身にしみて分かっているのだ。
「よっしゃ! そんじゃ、勇者パーティー、帰還しようぜ!」
そう言って歩き出す大吾を、ぽけーっと虚空を見つめていた恵が追いかける。
「ほら、ヒロ君、行くよっ!」
すっかり機嫌が直った琴音が、大吾達の方へ歩きながら呼びかける。
「今行くよ! ……はぁっ、今はどっちかというと、『勇者パーティー』の方がやめてほしいかな……」
そんなことを呟きつつ、紘輝も歩き出すのだった。
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ギルドの換金所で赤牛を全てお金に換えた紘輝達は、その足で依頼の達成報告のため受付に向かった。
「はい、どのようなご用件――でっ!?」
顔を上げた受付嬢が、紘輝の顔を見ておかしな声を上げながら動きを止める。
(やっぱり、依頼受けたときと同じ人にしておけばよかったかな……)
それを見てそんなことを考えつつ苦笑いを浮かべる紘輝。こういう反応には慣れたものだし、その理由も十分に理解しているからだ。
受付嬢は頬をほんのりと染め、にこやかに問いかける。
「本日は、どのようなご用件でしょうか?」
「依頼の報告をしたいんですけど……」
「かしこまりました。それでは、依頼票とギルドカードをご提示下さい」
それを聞いた紘輝は、後ろのパーティーメンバー全員のギルドカードを集め、依頼票と一緒に受付嬢に渡す。
それを笑顔を崩さぬまま受け取る受付嬢。
「はい、確かに。……チッ」
「「「!?」」」
(舌打ち!? 今この人、舌打ちしたよ!? 女性怖っ!!)
パーティーメンバーの中で最も紘輝の近くにいる(それでも微妙な距離感はあったが)琴音を見たときだった。恵を除く3人は戦慄した。……ちなみに恵は、当然のごとくぽけーっとしていた。
依頼票を確認し、ギルドカードを少したどたどしく魔法具に通していく受付嬢。
その内容を確認した受付嬢は、1つ頷いて紘輝にギルドカードを返す。
「はい、依頼の達成が確認出来ました。……常識的な結果でよかったです……」
ボソッと呟いた受付嬢だったが、紘輝の耳はそれをしっかりとキャッチした。
「常識的?」
それを聞いた受付嬢が、若干慌てたようにしながら謝罪する。
「あっ、もっ、申し訳ございません、聞こえてしまいましたか。……えっと、サーラせんぱ――ギルドの先輩の受付嬢が、異常な討伐数のギルドカードを渡してくる新人冒険者に会った、と話していたもので……」
「それって……ゴブリンを全滅させたっていう?」
先程ボブに聞いた話のことかと問い返す紘輝。
それに受付嬢は頷く。
「ご存知でしたか。何でも、ほんの1、2時間でゴブリンを300体以上倒したとか……しかも、おそらくその1、2時間はほとんどが移動時間なのに、です。それに、その冒険者は、その後ギルドマスターに勝って、一気にランクⅣになったらしいんです」
「それは……凄い、んですか……? すみません、冒険者になったばかりなので、よく分からないんですけど……」
「凄いなんてものじゃないですよ! 冒険者になった翌日にランクⅣに昇進なんて普通じゃありません! それに、ギルドマスターとの模擬戦で審判をやったその先輩の話だと、ギルドマスターに圧勝したとか! ギルドマスターのランクはⅤですよ!? 尋常じゃないです!!」
そう鼻息荒く語る受付嬢に、紘輝が気圧されたように1歩下がる。
そんな紘輝の様子を見て受付嬢は我を取り戻したようで、顔を真っ赤にしながら俯いてしまう。
「申し訳ございません、つい熱くなってしまって……」
「あ、いや、それは別にいいんですけど……やけに興奮してましたね?」
「あっ、えっと、やっぱり、強い男性というのは、とても憧れるものでして……って、私、なんでこんな話を……!」
(へぇ。その冒険者って、男の人なんだ)
などと考えつつ。
これ以上は色々な意味でいけないと判断したらしい別の受付嬢に報酬を受け取った紘輝達は、それを分配して、宿へと向かうのであった。
ちょくちょく、というか、結構ガッツリ霧也の話題は出て来ます。名前こそ出て来てないけども。




