人外からの、旅立ち。
いや、ちゃんとプロローグは終わらせましたよ? 宣言通りに。ただ、分量が普段の倍近くなってますけど。反省? してない。後悔? してない。
それから1ヶ月程が立ったある日。
最近ようやく慣れつつある戦闘訓練を終え、自室に戻った霧也がステータスを開く。もちろん、ソニアもすぐそばにいる。霧也はそちらには慣れきっている。
「ステータスオープン」
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村崎霧也 男 17歳
職業 異世界人、学生
体力 245
攻撃力 227
防御力 239
敏捷 248
魔力 235
魔法攻撃力 224
魔法耐性 228
スキル
[完全模倣Ⅱ][自動翻訳]
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「っしゃあぁぁ!!」
「ぅひゃっ!?」
柄にも無く叫び声を上げる霧也に、ソニアがおかしな声を上げる。
「やっと、やっとランク上がったあぁぁ……」
霧也がおかしくなっていく。しかし、霧也と一緒にいた事でソニアのスルースキルも鍛えられている。つまり、気にしない。
「やっと、とは言いますけど、1ヶ月でランクアップって今まで聞いた事も無いですよ?」
「あぁ……まぁ、起きてる時はずっと何かしら複製してたからなぁ……寝ながら複写するなんてこともたまにあったか……」
霧也が苦労の日々を思い出して遠い目をしているが、相変わらずソニアは無視だ。メイドとしてはあるまじき行為だが、霧也自身が気にしていないのだからこれでいい。はずだ。
ちなみに、ソニアは霧也の専属メイドになったことをアルフレッドに伝えた時に、メイド長をクビになっている。何でも、専属メイドを責任ある立場に置く事は出来ないのだそうだ。
「スキルもそうですけど、ステータスのバランスも変わってますね。最初は体力が1番高かったのに、今は敏捷の方が上ですよ」
「あぁ、そうだな。どうでもいいから、早く詳細を見ようぜ」
霧也が、ウズウズしているのを隠しもせずに言う。体が少し震えている。
「あ、はい」
霧也がその言葉を聞いた瞬間に手を伸ばす。速い! どこかの北斗さんも顔負けのスピードだ! アタァッ!
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完全模倣 ランクⅡ
・視認した物質(生物・非生物問わず)の姿を複写し、同じ姿になる事が出来る。自身の意思で元の姿に戻れるが、再び同じ姿になるにはもう一度視認する必要がある。持続時間は無限。
・手で触れた物質(非生物のみ)を複製する事が出来る。出現可能範囲・持続時間は、ランクアップによって増加する。
・視認した対象のステータス・スキルを模倣する事が出来る。スキルはランクも同時に模倣する。ステータス・スキルは再び模倣する時は上書きされる。また、模倣したステータスは成長せず、模倣したスキルは消去する事が出来ない。
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「「……」」
霧也とソニアが顔を見合わせる。再びウインドウを見る。顔を見合わせる。ウインドウを見る。顔を見合わせる。以下略。
その後、2人同時に息を大きく吸い込み、
「「――はあぁぁぁぁっ!?」」
「ソニア、口調」
「はっ!?」
叫んで冷静になった霧也が冷静に指摘し、ソニアが赤くなる。
「ご主人様、強すぎます」
「だよな……ソニア、ちょっと試してみてもいいか?」
「はい? 私のステータスを模倣するんですか?」
「ステータスはとりあえず置いといて、スキルをな」
「んー……分かりました。私は既に全てをご主人様に捧げた身! 今更隠す事など、あんまりありません!」
「捧げられた記憶はねぇし、捧げられるつもりもねぇ。あと、最後は言い切れよ」
霧也の冷静なツッコミが入る。ソニアが自然に目を逸らす。
「はぁ……まぁいいや、行くぞ。[完全模倣]」
しかし何も起こらなかった。
と、いう訳では無い。
「やっぱエフェクトは出ねぇか。まぁ、他の2つがそうだったからな。さて、スキルはっと」
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スキル
[完全模倣Ⅱ][魅了Ⅱ][吸血Ⅰ][魔属性適性Ⅲ][家事総合Ⅳ][自動翻訳]
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「……んん?」
気になるスキルを見つけて、霧也は思わず2度見する。
(魔属性適正は分かる。家事総合ってのも……ランクすげぇ高いけど、まぁメイドだし。で、魅了? は、まぁいいや。うん。1番の問題はこれだよな。[吸血])
「なぁソニ――アっ?」
霧也がソニアに確認しようと彼女を見ると、なんと綺麗な土下座をしている。ステータスウインドウを表示して。
「え、何やってんの? お前」
霧也が戸惑いと共に声を発すると、ソニアは土下座したまま無言でウインドウを指差す。
霧也は首をひねりながらも、指示された通りウインドウを見てみる。と――
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ソニア=グランディ 女 21歳
種族 吸血淫鬼
職業 専属メイド(主:村崎霧也)
体力 312
攻撃力 308
防御力 323
敏捷 305
魔力 319
魔法攻撃力 320
魔法耐性 303
スキル
[魅了Ⅱ][吸血Ⅰ][魔属性適性Ⅲ][家事総合Ⅳ]
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(あれ、俺より強くね? いや、今はそれ関係ねぇか)
「吸血……淫鬼? えっと、ヴァンキュバス? 何それ」
見た事の無い項目に、見た事の無い名前。霧也に現実逃避させるには十分過ぎるインパクトだ。なにせ、今まで普通に接してきた相手が人間じゃ無かったということになるのだから。
ソニアは、土下座したまま声をはりあげる。
「申し訳ございません! 今まで、今までずっと、隠していて! これを知られて、それで、ご主人様が離れてしまうかもと思うと、怖くて、ずっと、私ぃ……」
ソニアの、叫び。そして、涙混じりの告白。
その潤んだ声が、霧也を冷静にさせる。
「……ソニア。吸血淫鬼ってのは何だ?」
まるでソニアの言葉を無視していたかのようなその質問に、彼女は顔を上げて不思議そうな顔をするが、メイドとしての性質かしっかりと答える。
「へっ? え、えっと、私は、淫魔と吸血鬼のハーフで、両方の性質を持っています、けど……」
「ふーん。で、魅了は良いとして、吸血スキルのランクが低いのは?」
「えぇと、ついこの間まで、吸血なんてしたこともありませんでしたから……」
ソニアの答えに、霧也はなるほど、と頷いて自分の首を軽く抑える。
「つまり、1ヶ月前――こっちに転移してきた翌朝から毎朝首に走る痛みは、お前が血を吸ったせいだと」
「うっ……つい、我慢出来なくて……ごめんなさい」
霧也に図星をつかれて言葉遣いが少し崩れるソニア。
しかし、霧也は気にした様子も無く、
「んで、お前が人間じゃねぇから何?」
「ふへっ?」
そう。先程は急だったので驚いてしまったが、ソニアが人間では無いからといって、何かが変わる訳でも無い。霧也にも、お前と過ごした時間は変わらない、などと気障な台詞を吐くつもりはないが、内心は似たようなものだ。
そして何より、霧也は自由人だ。他人の感性がどうだろうが、この世界がもしソニアの様な存在を迫害していたとしても、霧也には全く関係無いし、気にもしない。
「……なぁ、ソニア。俺、明日の夜、ここを出て行くんだ」
「――えっ?」
霧也の言葉を聞いたソニアが、自分が吸血淫鬼だから離れていってしまうのだと、悲壮な顔をする。しかし、霧也はその勘違いに気付いて、違う、と首を振り、
「元々、完全模倣スキルがランクⅡになったら出ようと思っていた。俺は、縛られるのは好きじゃねぇし、俺の力をしたくもねぇのに他人のために使うつもりも無かったからな。……で、だ。ソニア、付いて来てくれねぇか?」
最後の部分を照れたように頬をかきながら付け加える霧也。それを見て、ソニアは涙をこらえるように口元を抑える。
「……私なんかが、私みたいな半端者が、ご一緒しても、良いのですか……?」
「良いっつってんだろ。何だかんだでお前に世話されるのも慣れちまったしな」
これは事実。しかし、自分を納得させるための建前でもある。だが、顔を赤くしたその姿は、1ヶ月ずっと側にいたソニアからすれば素直じゃないのはバレバレであり、何より、愛情をより深く、より感じさせるものであった。
「ご主人様……ご主人様、愛してますっ!!」
「うおっ!?」
だからソニアは、飛びかかり、押し倒す。
「ちょっ、待っ、ソニッ――アッーーーーー!」
だってそれが、ソニアの淫魔としての本性なのだから。
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朝。雀が鳴いている。
「……これが、噂に聞く朝チュンというヤツか……」
「んふふぅ……ご主人様ぁ……」
右腕を包む温もり。目を向けると、一糸纏わぬソニアの幸せそうな寝顔。すぐに目を逸らす。そうでもしないと、霧也の男の子な部分が朝から張り切ってしまう。
「うぅっ……お母さん、僕汚されちゃったよぉ……」
落ち着かせるためにネタに走る霧也だが、そういや途中から俺もノリノリじゃなかった? と昨夜の光景を思い出し、逆効果となってしまう。
「……もっと現実的な思考をしよう。そうだ、脱走計画を練るなんてどうだろう。いや、適当でなんとかなりそうだな」
「複写で壁にでもなればいいんですよ」
「うおっ!?」
唐突に聞こえた声に体をはねさせる霧也。声のした方を見ると、ソニアがニッコニッコしている。とても嬉しそうだ。
「……そ、そうだな。えっと、ソニア、そろそろ離れ」
「嫌です」
「……離」
「嫌です」
「は」
「絶っっっ対離しませんっ!」
「えー……」
霧也には、この後やらなければならない事がある。しかし、ソニアはギュッとしがみついて離そうとしない。
「……はぁ。もう少しだけだぞ」
(あ、犬化した。こいつ実は、吸血淫犬なんじゃねぇかな)
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そして夜。
霧也のやらなければならない事というのは、クラスメイト全員のスキルと、ステータスの最大値の模倣だった。
その結果、霧也のステータスはこうなっている。
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村崎霧也 男 17歳
職業 異世界人、学生、半分人外
体力 1028
攻撃力 2019
防御力 2007
敏捷 2041
魔力 2013
魔法攻撃力 2004
魔法耐性 2025
スキル
[完全模倣Ⅱ][聖剣生成][魅了Ⅱ][吸血Ⅰ][聖剣術Ⅰ][武術総合Ⅰ][回復魔法Ⅰ][回復力強化Ⅰ][雷属性魔法Ⅰ][氷属性魔法Ⅰ][影属性魔法Ⅰ][基本属性適性Ⅰ][基本属性強化Ⅰ][基本属性耐性Ⅰ][物理耐性Ⅰ][身体強化Ⅰ][魔力増幅Ⅰ][無詠唱Ⅰ][気配察知Ⅰ][気配隠蔽Ⅰ][鑑定Ⅰ][隠蔽Ⅰ][家事総合Ⅳ][自動翻訳]
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おかしい。色々とおかしい。
ステータスは、体力だけが勇者産となっている。その他は、特化型のチート勢のステータスだ。つまり、勇者なんて雑魚だ。
スキルは、集めまくったらまとめられたものが存在する。
そして霧也にとって1番の問題は、職業欄にある。
「半分人外……人外って……模倣しまくっただけなのに……一部だけなら同じステータスの奴いるのに……」
霧也は、王城の監視の目をかいくぐり、あっさりと外へ脱出してから嘆く。複写を使えば、それはもう楽勝だった。ソニアを連れていてなお、楽勝だった。
「まぁまぁ。職業なんて適当なんでしょうし……ご主人様強いじゃありませんか。だからほら……後でじっくりたっぷりねっとりと慰めてあげますから……じゅるり」
ソニアの声を聞いた霧也の体が震える。果たしてそれは、歓喜か、恐怖か。
「自重しろこの野郎っ!」
拳骨。
「いひゃいっ!」
危うく舌を噛みかけるソニア。自業自得だ、と考えた霧也の[気配察知]に、こちらに向かってくる反応がある。
「キリヤさんっ!」
霧也はその声に、後ろを振り向く。駆け寄って来るのは、寝ようとしていたのかネグリジェを着た、エルガド王国第一王女・エステリアだった。
「エリー……どうしてここに?」
霧也が、驚いたように目を見張る。
「はぁ、はぁっ……書き置きを見て……何ですか、『じゃあな』って。素っ気なさすぎですよ……」
息を整え、クスッ、と笑いながら言うエステリア。しかしすぐに真面目な表情になって、
「……本当に、行ってしまわれるのですか?」
「あぁ。俺にとってここは、居心地が悪過ぎる。俺は自由気ままに生きて行きてぇんだよ」
「そう、ですか。……ソニアさんも一緒に?」
「……あぁ」
「……」
「……」
静寂。エステリアが何かを言おうとして、やめて。また言おうとして――霧也はそれを待っている。
やがて、エステリアが何かを決意したような表情になり、すぐに涙を浮かべ、しかし流さず、
「……また、会いに来てくれますか……?」
霧也が口ごもる。ここは、適当な誤魔化しを言ってはいけない場面だ。だから、自分に問いかける。彼女にまた会いたいか? 彼女とまた話したいか? この1ヶ月、その中でも少ない時間だったが、彼女と共有した時間を自分はどう思っていた?
自問自答を繰り返し、霧也はいつの間にか閉じていた目を開き、微笑んで答える。
「また必ず、エリーに会いに来る。約束だ」
それを聞いて、エステリアはついに涙を流す。
「待って、ます。いつまでも、ずっと……!」
「あぁ。じゃあ――いや、また、な」
「はいっ!」
そうして2人は、旅立つ。
当然のようにカットした1ヶ月間は、そのうち書くかもしれません。少なくとも、エステリアとのエピソードはどこかのタイミングで絶対に書きます。だって霧也君、エステリアのこと愛称で呼んでたし。いつフラグ立てやがったこんちくしょう、ってね。まぁ、まだ考えてないんですけど。え、後悔? するわけ無いじゃん。
……ん? 霧也君? いやいや、落ちてないって。若干自棄が入ってるだけだから。好きではあっても愛では無いから。そのはずだから。……そのはずだからっ!




