スキルが謎なんだけど。
プロローグは次回で完結です。
「知らな――いや、少しだけ知ってる天井じゃねぇか。くそっ」
翌朝、目が覚めた霧也は、あのネタを惜しい所で言えなかったため、いきなり悪態をつく。
「あ、ご主人様。おはようございます」
「ん?」
横から聞こえてきた声に目を向けると、ソニアが霧也の腕に抱きついて尻尾を振っている(比喩的表現)。
霧也の腕がソニアのあれに埋まる。霧也は気にしない。気にしたら負けだとすら思っている。使い方がどこか普通と違うが、それこそ気にしたら負けである。
「……あぁ、おはよう。そして邪魔だ、どけ」
「邪魔……? ……はっ! も、申し訳ございません!」
挨拶の直後に邪魔だと言い放つ霧也だが、ソニアは何が邪魔なのかすら理解していなかった。ソニアの方が1枚上手だ。何がだ。
「くふぁ……痛っ」
ソニアがどくのを見て、起き上がりながら欠伸をする霧也だが、その途中で急に首筋に走った痛みに顔をしかめる。しかし、その痛みはすぐに引く。
(気のせいか?)
「ご主人様、どうしました?」
「……いや、何でもない。ところでソニア、メイド長さんは平メイド達の所に戻らなくていいのか?」
霧也が、ふと感じた疑問を口にする。ソニアが目を逸らす。
「……ソニア?」
「……えぇと、だ、大丈夫、です、よ? ほら、私、もうご主人様の専属メイドですし」
「……」
ジトーッ。
「そ、それよりもご主人様!」
「おぉうっ!」
霧也のジト目に耐え切れなくなったのか、いきなり声をはりあげるソニア。霧也が普通に驚く。
「……何?」
ソニアが軽く咳払いをすると、だらしなかった表情が真面目モードになっていく。これぞ匠の技(絶対違う)。
「ご主人様含む勇者の皆様は、明日より半年程、騎士団の元で戦闘訓練の予定です。今日は、それに備えてゆっくりと休養なさるべきかと」
真面目モードのソニアは、出来るメイド長なのだ。霧也が今までとのギャップに笑いそうになっていても、それに気付いたソニアが顔を赤くしていても、出来るメイド長なのだ。
吹き出さずにしっかりと笑いを堪えた霧也が、それでも軽く微笑みながら口を開く。
「分かった。俺は部屋にこもってゆっくりと自分のスキルを調べる事にする」
「あれ、詳細見ていないんですか?」
「誰のせいだと思ってんだ」
「うっ……そ、それもそうですね……」
霧也が再びジト目を向けると、ソニアが気まずそうに目を逸らす。
「そ、その、朝食を用意します、ね?」
「……あぁ、持って来てくれ」
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「ステータスオープン」
ソニアが用意した朝食(シンプルなサンドイッチ)をペロリと平らげた霧也は、食休みもそこそこに、早速ステータスウインドウを開く。
「うーん、やっぱこのスキルだよなぁ……」
異世界人の共通スキルらしき[自動翻訳]を除き、霧也が唯一持つスキルである[完全模倣]を見ながら、霧也は首をひねる。
「ご主人様、見てもいいでしょうか?」
それを傍らから見ていたソニアが、少しソワソワしながら口を開く。この近いようで密着はしていないという微妙な距離にソワソワしているのか、霧也のステータスを見たくてソワソワしているのかは不明だ。
「いいぞ。ほれ」
そんな事気にした様子も無い霧也は、ソニアが見やすいように体をどかす。そうして出来たスペースにソニアの体が入って来る。
「えぇと……完全模倣、ですか? 初めて聞くスキルですね……ちょっとスキル名に触れてみてください」
ソニアの言葉にレアスキルかな? と期待しつつ、指示に従ってウインドウに触れる。すると、ステータスウインドウの手前にもう1つ、スキルの詳細が書かれたウインドウが出現する。
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完全模倣 ランクⅠ
・視認した物質(生物・非生物問わず)の姿を複写し、同じ姿になる事が出来る。自身の意思で元の姿に戻れるが、再び同じ姿になるにはもう1度視認する必要がある。持続時間は無限。
・手で触れた物質(非生物のみ)を複製する事が出来る。出現可能範囲・持続時間は、ランクアップによって増加する。
・???(ランクⅡで解放)
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「……ふむ。ソニア、どう思う?」
真面目な表情で内容を読みこんだ霧也が、同じく真面目な表情をしているソニアに尋ねる。
「これだけ見ると地味……ですが、使い方次第ではかなり強力なスキルかもしれません。そして……」
「――ハテナの部分が気になる、よなぁ。やっぱ」
「はい。というか、ランクアップで新しい効果が解放されるスキルなんて、見た事も聞いた事もありませんよ」
ソニアが真面目な顔のまま頷く。霧也は笑いそうになっている。
(ソニアって、なんか真面目な顔が似合わねぇんだよなぁ……)
もちろん外には出さない。
「……それでソニア、このランクってのは何なんだ?」
「ランクというのは、ランクⅤまで存在し、そのままスキルの強力さに直結する数値です。例えば、同じ剣術スキルでも、ランクⅠとランクⅡの間には大きな差があると聞きます。ランクはスキルを使い続ければ上がるのですが、ランクⅡに上がるまでは比較的容易で、その後が難しくなるので、完全模倣スキルの追加効果はそう遠くないうちに手に入るかもしれませんね」
最後の部分をクスクスと笑いながら付け加えるソニアを見ながら、霧也は自分のスキルについて、そして今後の行動について考える。
(とりあえずランクⅡに上がるまではここに残って戦闘訓練を受けよう。で、ランクが上がったら、それで解放されるのがどんな効果だろうと、ここを出て行く。そしたら、その時ソニアは……)
はっ、と自分の考えを笑い飛ばしながら、やっぱり心を許しすぎだな、と苦笑する。
ソニアを連れて行くか、残して行くか。この答えを出す事は、霧也にとって、ランクアップと同じ程に大きな課題となる。
(……まぁ、ソニアは付いて来たがりそうだがな)
霧也は、再び苦笑する。
ソニア! あとほんの少しで霧也が落ちるよ! やったね!
……はい、霧也そんなにちょろくないです。前回の後書きもこんな感じだった気がします。




