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ぼっちが転移で自由人。  作者: 浅野陽翔
とりあえず、異世界だから冒険者
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ヒロイン達をオークと戦わせてみる。

 オーク×ヒロイン=虐殺。

 まぁ、この作品のヒロインは別にさほどチートでもないと思うんですけどね。

「そういや、リラは冒険者になるために故郷を出たんだったよな?」

 オークの群れがいる場所へ向かう途中、ふいに霧也が、そんな質問をする。

「えぇ、そうだけど……それがどうしたの?」

「いや、なんで冒険者になろうと思ったのか気になってな」

 地球の創作物――ライトノベルなどのフィクションの世界では、エルフというのは排他的というか、あまり人間と関わらないような閉鎖的な種族だというのがよくあるパターンだ。霧也はすでにこの世界にラノベの常識が通用しないことはうっすらと察しているが、それでも聞かずにはいられない。何か事情があったりするのではないか、と。

 しかし、この世界は尽く霧也の常識を裏切るようだ。

「え、やりたかったからよ?」

 首を傾げながらあっけらかんと答えるリラに、霧也は「はいはい分かってましたよ」とでも言いたげな複雑な笑みを浮かべる。

「……あぁ、そう」

「何よ、人に聞いておいてその反応は……」

 霧也の雑な返事にリラが不満気な表情になるが、霧也は相変わらず気にしない。

「……お」

 リラが重ねて文句を言ってやろうと口を開いたところで、霧也が何かに気付いたかのように声を上げる。

「どうされました?」

 霧也の行動の唐突さはいつものことなので、慣れた様子で聞き返すソニア。それに霧也は、正面を見ながら答える。

「オークの群れがこっちに向かって来てる。多分気付かれたな。もう大分近くなったし」

「それでは、迎撃ですか?」

「あぁ。今回はあくまでもお前等2人がメインだから、さっきと同じように基本は任せる。危なくなったらカバーするから」

「はい」

「了解よ」

 霧也が簡潔に方針を伝えると、ソニアとリラはすぐに戦闘の準備を始める。

 ソニアは予め魔法の詠唱に入り、リラは持ち前の身軽さで木に登って射線を確保する。霧也は少し下がって観戦モードだ。

 それからすぐ、複数の重い足音が聞こえてくる。オークのものだ。

 ソニアが詠唱を終え待機状態に入り、リラが弓を引き絞った直後、オークが姿を現す。その数、10体。これだけで依頼を2回は達成できる。明らかな過剰討伐である。

「……ホント、最初にこっち見つけてりゃまだ楽だったんだけどなぁ」

 霧也がそうぼやくと同時に、オーク達が声を上げる。

「「「プギイィィィィッッ!!」」」

 その目は欲望に塗れ、あろうことか涎まで垂らしているように見える。その視界に、霧也は入っていない。

([異種間繁殖]こっわ……模倣コピーしなくてホント良かったわ)

 霧也がそんなことを考えている間に、オーク達はソニアとリラに向けて突進を始める。それぞれに5体ずつ、群れを綺麗に2分した形だ。本気で霧也のことは眼中にないらしい。

(これはこれでつまんねぇ……)

 魔物が目の前にいるというのに、霧也はあぐらをかいて頬杖を突いている。しかも、《時空庫ストレージ》に入れておいたシートまで敷いている。いつ買った。

 寛いでいる霧也をよそに、戦闘が開始される。

 最初は、オークの1体が持っていた棍棒をソニアに振り下ろすことから始まった。

 簡単に意識を刈り取るであろうその一撃を、余裕を持って回避するソニア。そのまま、待機させていた魔法を発動させる。

「《消去デリート》」

 魔属性魔法ランクⅠ、《消去デリート》。対象の「何か」を消す魔法。それだけ聞くと強力な魔法にも聞こえるが、所詮ランクⅠ魔法である。「何か」の内容を決めることは出来ないし、消せるものも大したものではないのだ。

 しかし、今回は引きが強かったようだ。

 目の前のオークが持っていた棍棒が唐突に消える。それを見て不思議そうな顔をするオーク。次の瞬間、その巨体が吹き飛ばされる。ソニアが杖を使って思い切りぶん殴ったのだ。さりげなく霧也の血を吸ってドーピングしていたソニアであれば、たとえオークでも殴り飛ばすくらいは出来るのである。

「うーん、やっぱりこの魔法は使いづらいです」

 試しに使ってみた《消去デリート》だったが、ソニアには合わなかったらしい。すぐさま《虚無ヴォイド》の詠唱を始め、オークをどんどん呑み込んでしまう。

「ふぅ」

 とりあえず自分に迫っていたオークは倒したということで、リラの様子はどうだろう、と目を向けるソニア。

 しかしその直後、後ろから攻撃の気配。

 ソニアが振り返ると、そこには最初に吹き飛ばしたオークが、その巨大な拳を振り上げている姿が。

(間に合わないっ――!)

 回避も、防御も、迎撃も。

 ソニアは思わず目を瞑る。しかし、

「大人しくしてろよ、クソ豚が」

 耳に入ってきたのは、拳が発する風切音でも、殴られたことによる衝撃音でもなく、彼女が敬愛してやまない主の怒りが混じった声だった。

「ブヒィィィィィッ!?」

 オークの叫び声に、ソニアが恐る恐る目を開ける。

 すると目の前のオークは、先程振り上げた右腕を失い、そこを抱えて蹲っている。その手前には、ソニアとオークの間に彼女に背を向けるようにして霧也が立っている。

 霧也が持つ紅煉が閃く。

 オークの四肢が全て斬り落とされ、達磨状態になり、地面に転がる。

 そのまま霧也は、紅煉を逆手に持ち替えてオークの頭に突き立てる。そして、

「燃え尽きろ。《紅煉》」

 オークが一瞬にして燃え尽き、灰となる。

「ご主人様っ!」

 思わず、といった様子で霧也に抱きつくソニア。

「……っと」

 それを受け止めた霧也は、ソニアに真剣な眼差しを向ける。

「ソニア、油断は禁物だ。最初の奴なんて、明らかに死んでなかったじゃねぇか」

 最初は殴り飛ばしただけで、絶命にまで至っていないのは誰の目にも明らかだった。

 それをよく分かっているソニアは、シュン、と項垂れる。

「……はい、すいません……」

「……まぁ、今後は気を付けろよ」

 仕方ないなぁ、と言うように、ソニアの頭を撫でながらそう言う霧也。

 すると、とっくに戦闘を終えて2人の様子を見ていたリラが、2人にジト目を向けながら近寄ってくる。

「貴方達、何イチャイチャしてるのよ……」

「断じてしていない。それよりもリラ、お前の地形を利用した戦い方はかなり良かったぞ」

 リラの言葉を即刻否定して、彼女の戦闘に関してのコメントをする霧也。

「……そう。それはありがとう」

 それに対しリラは、ほんのりと頬を染めて目を逸らしながら礼を言う。

 霧也はその様子に気が付いていたが、別にどうでもいいや、と持ち前のスルースキルを発揮する。

「じゃあ、依頼も達成したし、ギルド戻るか」

「はい」

「えぇ」


==========


 その後、ギルド本部に戻った霧也は、

「――げっ」

 思わぬ再会を果たすことになる。

 誰との再会かな?

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