盗賊美味しいです。
盗賊は美味しい。物語的に。というか、ご都合主義的に。
「ソニアー、終わったぞー」
一旦洞窟から出た霧也が、かなり近くまで来ていたソニアを呼ぶ。
「思ったよりも時間がかかりましたね」
「まぁ、散々遊んでたからな」
「なるほど、そういう事ですか」
そんな事を話している間に、2人は気絶させた盗賊団の元へ戻って来る。
「あれ、殺してはいないんですか?」
それを見たソニアが、そんな物騒な質問をする。
「お前、中々ヒドイ事聞くな……まぁ、地球に戻る可能性がある以上、殺しのハードルは下げない方が良いと思ってな」
「……帰られるのですか?」
霧也がそう返すと、今度は不安げな声で質問する。実際に、その目元にはうっすらと涙が浮かんでいる。
それを見た霧也が、慌てて――という事もなく、普通に説明する。
「まぁ、1つだけ帰る理由があるからな。もちろん、その時はお前も連れてくさ」
その言葉を聞いたソニアが、途端に笑顔になる。
霧也はそれを横目で確認してから、思い出した様に口を開く。
「……そうだ。盗賊団の討伐って、報酬出たりすんのか?」
「あっ、えぇと、はい。冒険者ギルドか街の兵士達に報告すれば貰えたはずです。それに、盗賊が盗んだ物も全て討伐者の物になるので、場合によってはいきなり大金持ちですね」
「なるほど。でもここ、結構な量の盗品があるよな……どうやって持って行こうか」
「そうですね。アイテムボックスか空間魔法でもあれば楽なのですが」
考え込む霧也に、ソニアが言葉を返す。それはなんとなく思った事を声に出しただけだったが、霧也としては看過できない情報が含まれていた。
それに気付いた霧也がソニアの手を掴み、早口に聞き返す。
「お前今、空間魔法っつったか!?」
「え、は、はい、言いましたけど……」
「空間魔法があれば解決するんだな!? ランクはⅠでも良いのか!?」
「ひゃ、ひゃいぃ……」
霧也のあまりの勢いに、ソニアが押されまくっている。
しかし当の霧也は、そんな事気にもせず、1人ガッツポーズを決めている。
「あ、あの、ご主人様、どうしたんですか……?」
その言葉に我に帰ったのか、霧也が顔を上げ、悪い、と苦笑して説明を始める。
「実は、こいつらの中に[空間魔法Ⅰ]を持ってる奴がいてな。それを模倣してたんだよ」
その説明を聞いたソニアが、驚いたように目を見張る。
「それは……凄いですね。空間魔法というのは、使い手が少ない事で有名だったのですが……」
「へぇ、そうなのか。それはラッキーだったな。で、何が出来るんだ?」
「えぇと、確か……ランクⅠの段階でも、異次元に収納スペースを作って、そこから自由にアイテムの出し入れをしたりだとか……あとは、ランクが上がれば、空間を切って敵にダメージを与えたり、別の場所への転移が出来るようになると聞いた事があります。さすがに異世界へは行けないと思いますが……」
その説明に、霧也の時間が一瞬止まる。
「……ご主人様?」
「ソニア。それ、マジか?」
「マジです」
「……分かった。ちょっと待って」
そう言うと霧也は、大きく息を吸い込み、
「――っしゃああぁぁぁぁ!!」
「ひゃっ!?」
叫ぶ。ソニアが驚き、おかしな声を出す。ソニア的にもうこれはデフォだ。デフォルトだ。
「……あの、その、ご主人様……?」
「ん? あぁ、わりぃ。興奮して、思わず……」
「いえ、それは見れば分かりますけど、急に何故?」
ソニアに聞かれた霧也が、普段あまり見ない程真面目な表情になる。
「俺はな、快適で自由な生活を送るために、そして異世界のテンプレを経験するために、鑑定、アイテムボックス、転移系移動手段は必要不可欠だと考えてたんだ。そしてそれが、今回である意味3つ全部揃った。興奮するなって方が無理な話だろ?」
「はぁ……」
当然のような顔で言われても、ソニアとしては曖昧に頷くしかない。
「そうと決まれば、早速回収だな。ソニアも手伝ってくれ」
「分かりました。では、ここに集めますね」
「おう」
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それから10分。2人の力により、洞窟内の盗品は全て1ヶ所に集められ、盗賊達も全て洞窟にあった縄で縛られ、転がされていた。
「おぉ、結構な量になったな。全部入るかな……」
「容量は、ランクだけでなく魔力にも左右されるそうですから、行けると思いますよ」
「なるほど、了解。それじゃあ早速――《時空庫》」
霧也が魔法名を唱えた直後、集められていた盗品が消滅する。
ちなみに、霧也は[無詠唱Ⅰ]により今回も先程の戦闘時も魔法名を唱える必要すら無かったのだが、それはロマンを優先したらしい。男の子はロマンには敵わないのだ。多分。もちろん、余裕が無い時などはそんな事をするつもりは無いが。
「おぉ、消えた。と言うか、エフェクトが無いのはもう安定か」
「これは……思ったよりも便利そうですね。ご主人様、出す事は出来ますか?」
「出来るぞ。ほれ」
面倒な時も唱える気は無いらしい。「ほれ」のひとことと同時に、霧也が広げた右手の平の上に、宝石が散りばめられた指輪が出現した。
霧也はそれを握り、再び格納する。
「ソニア、こいつら置いてっても平気か?」
霧也がソニアに聞くと、間を開けずに返事が返ってくる。
「しばらく目を覚まさなそうですし、縛ってもあるので、問題は無いかと。念の為腕や脚の2、3本折っておいても良いかもしれませんが」
それを聞いた霧也が、腕をさするようにして若干身を引く。
「ソニアさん、ちょくちょくサイコパス入りますよね……まぁいいや。さっさと街行って捕獲報告しちまおうぜ」
「はい」
ソニアにサイコパス属性入りまーす。嘘でーす。




