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第25話 【解決?】王女様を救ったのに全然スッキリしないので反省会……ハインツの企みを暴くために危険すぎるあの場所へ再突入します!

 エレノア王女の感動的な家族の再会を背に、俺たちは静かに豪奢な寝室を後にした。


 張り詰めていた緊張の糸が切れた途端、強烈な空腹感が押し寄せてきたため、俺たちはひとまずアマリア王国の街中にある大衆食堂へと足を運ぶことにした。


 俺達にはこういう大衆食堂がしっくりくる。賑やかな雰囲気で冒険者や住民たちが食事を楽しんでいる。


 だが――俺たちの食卓の空気は、周囲の雰囲気とは裏腹に重く沈み込んでいた。


「まったく!大樽酒を用意していないとはどういうことじゃ!…グビッ…グビグビッ!うまいっ!」


 俺の左腕から離れたラシュガルは、片手サイズ(といっても人間基準ではかなりの量だ)の木樽をテーブルの上にずらりと並べ、まるで大酒飲みのおっさんのような豪快な勢いで酒を煽っていた。すっかり赤くなった白蛇の肉体は、なんとも満足そうな表情を浮かべている。


 一方、シロとノアも目の前に運ばれた肉料理やスープを黙々と口へと運んでいた。


 空中へ持ち上げられた肉やパンが、咀嚼音とともに何もない空間で忽然と消えていく異様な光景に、遠巻きに見ている店員や他の客たちは「ひぃっ、怪奇現象だ……!」と青ざめて生唾を飲み込んでいる。普段ならノアが「うるさいなぁ…。」と軽口を叩き、シロが苦笑いするような場面だ。


 しかし、今の二人にそんな余裕はなかった。


 解決したはずなのに誰一人として笑っていない。ハインツが残していった冷酷な言葉と手加減されていたという圧倒的な実力差、そして未だ見えぬ巨大な陰謀の影が全員の胸に重く圧し掛かっていたからだ。


 沈黙が支配する食卓の中で、俺はふと、心に引っかかっていた言葉を口にした。


「……レグナード……。」


 ぽつりと漏れ出たその名に、料理を口に運んでいたシロとノアが同時にピクリと反応し、顔を見合わせた。


「(……? ユウキさん……急にどうしたの……?)」


「推理が好きなんてハインツに言われたのは正直かなり癪だけどさ……あいつ、もしかして『レグナード』のことを言っていたんじゃないかと思って。」


「酒、おかわりっ!!」


 場のシリアスな空気など知ったことかと言わんばかりに、ラシュガルが真っ赤な顔で空の木樽をカツンと叩いて店員を呼びつける。


「(レグナード……灰燼街だよね。死のオーラに包まれて廃墟になっていた……)」


「あぁ。ハインツは『アムリタ王国も死の海になるところだった』と言っていた。つまり……最初にあのレグナードが、ハインツの凶悪な呪術の犠牲になって滅ぼされたんじゃないかって思ったんだ。ヴェルガルドやアムリタに手を伸ばす前の、最初の実験場として。」


 俺の推理を聞き、ノアがハッと息を飲んで眉をひそめた。


「……だから、あんなに手が施しようのない怨霊ばっかりで溢れかえっていたってこと……?」


「そうなんだ。レグナードの怨霊たちは、俺たちが今まで出会ってきた霊とは明らかに違っていた。どれもこれも正気を失っていて、会話すら成立しない強い怨念ばかりだった。ずっとあの中にいたら、生きている俺たちの方が精神を病んでおかしくなってしまうほどに。……だけど、もしあの強い怨念の正体が、ハインツの残酷な術式によって、何の罪もないのに突然日常を奪われ、命を絶たれた人々だとしたら……?」


 シロが胸元に手を当て、悲痛な瞳で頷いた。


「(確かに……そんな不条理で理不尽な死を強制されたなら……生きているユウキさんに理不尽な怨念をぶつけにきたとしても、ちっとも不思議じゃない……。みんな、苦しかったんだ……)」


「酒、おかわりっ!!」


 ラシュガルの豪快なおかわりコールが再び響く。彼の飲むペースは落ちるどころか、さらに加速していた。俺はラシュガルの千鳥足を横目に見ながら、思考の続きを二人に提示した。


「さっき、エレノア王女の背中に刻まれていたあの禍々しい刻印は、ラシュガルの神聖な浄化の力が効いて完全に消え去った。……だったら、ハインツの術式で歪められたレグナードの怨霊たちにも、ラシュガルの浄化の力が効くかもしれない。」


「……なるほど。試してみる価値はあるかもしれないね。」


 ノアは顎に手を当てて納得しかけたが、すぐに現実的な疑問を口にした。


「でもさ、仮にレグナードの怨霊たちを浄化して救えたとして……どうするの? それでハインツの足取りが掴めるわけじゃないでしょ?」


「……そうだな。でもこのまま城に留まっていても、ハインツの足取りは永遠に分からない。だったら、あいつの足跡が確実に残っている始まりの場所……レグナードへ行ってみるしかないと思うんだ。あそこに眠る魂を救えば、ハインツの術式のカラクリや、次の狙いの手がかりが得られるかもしれない。」


 俺の決意に満ちた言葉に、シロとノアは力強く頷いた。


「(うん……私、行く。ハインツの思い通りにはさせない……!)」


「決まりだね。惨めな気分のままここに居座るより、ずっとマシ。」


「よし、じゃあラシュガルにも話して――って、あれ?」


 俺が腕輪蛇の方を振り向くと、そこには山のように積み上がった空の木樽の横で、お腹を丸く膨らませたまま「フォ……フォ……」と気持ちよさそうな寝息を立てている白蛇の姿があった。


「ラシュガル……寝ちゃった。」


 シロが呆れ半分、可愛らしさ半分といった眼差しでぽつりと呟く。あれだけの大酒を喰らえば、いくら神聖な蛇神といえど沈没するのも無理はない。


「しょうがないやつ。よし、このまま寝かせた状態でレグナードの近くまで連れて行こうよ。起きる頃には現地到着だ。」


 ノアが笑いながら酔い潰れたラシュガルを優しく抱え上げた。


「……じゃあ、行こうか。」


 俺たちは静かに食堂を立ち上がり、立ち込める暗雲を払いのけるべく「レグナード」を目指して再び歩み出すのだった。


第25話を読んでいただきありがとうございます!第一章が完結しました。


ハインツの言葉とユウキのこれまでの旅から、レグナードがハインツの犠牲になった街、と推理しました。


ラシュガルは大酒飲みで寝てしまいましたが、きっとレグナードに着くころには起きてるでしょう。


第一章の完結に伴いまして、少しの期間、お休みを頂戴いたします。その間にも、円滑に投稿できるように書き溜めていきたいと思います。


それではまお会いしましょう!


ぜひブックマーク登録と下部の**評価(★★★★★)**をよろしくお願いいたします!

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