プロローグ ここに金髪のバカ1匹
「――よしっ、これなら完璧だろ!」
部屋の鏡に映る自分の姿を見て、佐藤晴真は満足気にニヤリと笑った。金髪を雑にセットし、使い古された安い革鎧を羽織る。見た目だけなら、それっぽい冒険者に見えなくもない。
世は空前のダンジョン時代。
この世界は、石造りの街並みや馬車が走り交う中世のような街並みや文化を残しながらも、ダンジョンの発見によって一部の技術だけが異常な進化を遂げていた。
魔導技術によって小型化された浮遊カメラ、そして世界中に映像を届ける魔法通信アプリ『I-live』
文明の利器と、剣と魔法の中世的世界観が融合したこの時代において、若者たちが一攫千金と名声を夢見る職業――それが「ダンジョン配信者」だった。
「有名になってモテまくりたい。金も稼いで豪遊したい」
そんなあまりにもバカっぽく、直球すぎる理由で、晴真は明日からダンジョン配信者としてデビューすることを決意していた。
「見てろよ……。俺の秘められた才能に、世界中がひっくり返るぜ」
晴真は根拠のない謎の自信に満ち溢れていた。
「行くところはズバリ!『ナウラダンジョン!』」
ナウラダンジョンとは未だに最下層がどこにあるのかすら分かっていない、ベテランダンジョン配信者も「嫌だ」と即答するような。世界最大にして最凶と恐れられるダンジョンだ。
普通なら、新人は街の近くにある安全な小規模ダンジョンで、コブリン相手にちまちまと配信を始めるのが常識である。
だが、晴真の頭の中に「下積み」という文字は存在しなかった。
「いきなり世界最大のダンジョンを下っていけば、一撃で大バズり確定だろ! 俺ってば天才か?」
晴真はまだ知らない。
ナウラダンジョンは、下層に行けば行くほど「魔素」が濃くなり、ヤバいモンスターが蠢いていること。
そして、高層(上の方)には「濃い魔素を吸うと死んでしまうような、弱くて害のないモンスター」が生息しているという特殊な生態系になっていることを。
「まあ俺強いし?こんなところちょちょいって終わらせて、あとは宝をぜーんぶ売って人生楽しもうかなぁ」
そして何より――自分自身が、驚くほどバカで弱いヤツだという客観的な事実を。
端末の画面を開き、配信アカウントの作成画面を操作する。
アカウント名は『ハルマ』
「明日から俺の伝説が始まる……!」




