56 謁見
*エルトン視点*
王城・謁見室
「公爵、アリシア公女、堅苦しい挨拶は無しだ。気を楽にして座ってくれ」
「それでは、お言葉に甘えて失礼します」
謁見室にやって来たのは、パルティアーズ公爵と娘のアリシア公女。この場に呼んではいないが、ナディーヌも一緒に登城して、今は第一王子とお茶をしているそうだ。あの2人は馬鹿なのか?まぁ、お似合いと言えばお似合いだ。国王が何も言わないと言う事は、そう言う事なのだから、私が気にする事ではない。
「今日来てもらったのは、最終確認をする為だ」
「最終確認ですか?」
「ピサンテに関わる事だ」
ピサンテに関わる事は極秘扱いとなる。勿論、今現在進行形のカイリーに関しては、パルティアーズ公爵もアリシア公女にも報せてはいない。
今、国王が言った最終確認とは、それとは違う事に関してだ。
「先ずは、ピサンテに残っている家の事だ。ピサンテもようやく後始末が終わってね。あの領は完全に国が受け入れる事にした。これからは王族管理となる。それでだ、あの家をどうするか。公女が望めば、あの家がある一帯をパルティアーズの所有地にする事もできる」
あの家は、ブライアンが家族を思って建てた家だ。思い出もあるだろうけど───
「私にとってのピサンテは……辛いものでしかありません。それに、あの家をもらったところで、もう二度と行く事は無いと思いますし、ブライアンも居ませんから、あの家は必要ありません」
「一度、王族所有となれば、簡単にアリシア公女の手に戻る事は無いが、それでも?」
「はい、大丈夫です」
「そうか……」
本当に、辛いものしかなかったのか?
ナディーヌとブライアンとの思い出は残っていないのか?と、私が心配しても仕方無い。何をどう選ぶのかは本人次第なのだから。それに、今回この場に呼んだ本来の目的は──
「それと、ナディーヌの事だ」
ナディーヌに関してだ。
「ようやく見付けた娘だ。親子鑑定も90%だった故、間違い無いだろうが、色んな憶測や噂があるのも否定できないだろう?」
親子鑑定で90%が出れば、疑われる事は無い。神官が不正を働く事はない。だが、ナディーヌの親子鑑定に関しては、調べてみると、貴族の一部ではあるが“鑑定に不正があったのでは?”と言う噂があった。おそらく、本来魔力無しだった筈が魔力持ちになって現れたから。そして、アリシア公女の記憶が失われている上に、ピサンテの惨劇でアリシア公女やナディーヌを知る人間が居なくなったから。
貴族の人間はゴシップネタが大好きだ。しかも、その対象が筆頭公爵家のネタなのだから、面白可笑しく騒ぎ立ててもおかしくはない。
「アリシア公女には黙っていたが、ナディーヌ嬢は、まだ正式にパルティアーズ公爵家の籍には入っていないんだ」
「えっ!?なっ…お父様、それは本当ですか!?」
これには、私も聞いた時は驚いた。これは、パルティアーズ公爵の意向だったそうだが、ナディーヌが本当に孫なのか─を見定める為に、入籍申請はしているが、まだ手続きは済んでいなかったのだ。
「本当だが、もうナディーヌが本物だと思っているから、手続きを済ませる予定だ。安心しなさい」
「分かりました………」
「手続きを済ませる前に、もう一度親子鑑定をするつもりはないか?」
「はい?」
親子鑑定が目的だ。
「もう一度親子鑑定をして90%が出たら、変な噂も払拭できるだろう?万が一にも無いだろうけど、入籍した後に偽者だったとなれば……パルティアーズ公爵家の問題にもなる。『やっぱり偽者でした』と切り捨てたところで、パルティアーズ公爵家の問題になる事は変わりない。なら、もう一度親子鑑定をしておけば安心ではないか?」
私としては、もう一度親子鑑定をして、それでも90%が出たら、それはそれで『良かったね。偽者と仲良くどうぞ』と言えるし、否定結果が出たら出たで『ざまあみろ!』と言ってやりたい。
「必要ありません。ナディーヌは私の子です」
「私も、必要無いと思っています。二度目となれば、あの子が気に病むかもしれませんから。あの子は私の孫娘です。他の者に何と言われようとも」
ーその言葉、しっかり聞かせてもらいましたよ?ー
誰かが何と言おうとも『孫娘だ』と言ってもらいましょう。
「ふむ。2人がそう言うのなら、もうこれ以上私が言う事は何も無い。そのまま手続きを済ませて、正式にパルティアーズ公爵家に迎え入れてあげてくれ」
「勿論です」
そこには、ホッとした顔のアリシア公女と、笑顔の公爵が居た。
2人は、謁見室を出た後、そのままナディーヌの入籍の手続きを済ませて、正式にナディーヌはパルティアーズ公爵家の孫娘となった。
これで、完全にセレーナとパルティアーズの縁が切れたのだ。
どちらが泣き、どちらが笑うのか───




