第27話 屋上の神社
皆が退勤した夜。
私は、会社の屋上にやってきた。
佐藤くんの話では、
「会社の屋上にある神社の、狐の像を倒してしまった」
と言う事だった。
私は、屋上に上がったことはなかったが、若い社員たちは、そこでランチをしたり休憩したりしているらしい。
もしも屋上の神社にギンコがいたら、それこそ灯台下暗しだな。
はやる気持ちを抑えながら、屋上を見渡す。
すると、小さな赤い鳥居が見えた。
あそこに違いない。
持参した懐中電灯の明かりを頼りに、神社に近づく。
そして、ついに鳥居の前に来た。
鳥居の向こうに、小さな狐の像がある。
佐藤くんが倒した狐の像は、かわいそうに、2つに割れていた。
「今、直してやるからな……」
両手で石を抱えると、力を振りしぼった。
これは、なかなか重いぞ!
しかし、私は力だけは無駄にあるのだ。
なにを隠そう、高校時代はウエイトリフティングの選手だったのだ。
今でこそ、ただのメタボ気味の中年のおじさんだけど、若い時は筋肉自慢だったんだぞ!
バーベルを上げていた時の、懐かしい感覚が蘇る。
「はっ!」
掛け声とともに、石を持ち上げた。
思わず、頭上まで石を上げそうになり、腰の辺りで慌てて止めた。
危ない、そこまで上げる必要はなかった。
クセというのは、何年たっても抜けないらしい。
台座の上で、割れた石を慎重に組み合わせる。
どうにかピタリと重なり、狐の像になった。
ハァハァ……。
息を調え、改めてライトで照らした。
狐の顔を照らすと……、
「ギンコだ。ギンコがいる!!」
一目でわかった。
狐の像は、紛れもなくギンコの顔だった。
小さな子供の姿ではなく、私を背中に乗せて走った時の姿をしている。
「懐かしいな、ギンコ。やっと会えたな」
思わず、狐の像の頭を撫でていた。
その時。
狐の像から声が聞こえた。
「そうだよ、部長さん。ちょっと見つけるのが遅かったんじゃない?」




