第23話 今度は永瀬くんが
「ふあぁ〜!!」
お昼休み。私は大きなあくびをした。
あれからGoogle Earthを使って、連日夜中まで稲荷神社を見続けた。
おかげで、寝不足気味だった。
しかも、いまだにギンコは見つからなかった。
三大稲荷だけじゃなくて、他も探してみるか?
目をショボショボさせながら、肩を揉んでいると、
「部長、お疲れですか?」
永瀬くんが声をかけてきた。
「さっき、相沢さんに京都のお土産をもらったんです。給湯室に置いてあるんで、部長も食べますか?」
京都が好きな相沢さんは、度々旅行に行っているようだ。
私は、密かに彼女のお土産を楽しみにしていた。
「ああ、すまんな。今回は何のお菓子だい?」
「今回は、阿闍梨餅です。持ってきますね」
永瀬くんは、よく気がつく。
彼には、私の仕事も手伝ってもらっているし、感謝しかない。
永瀬くんがフロアから出ていこうとした、
その時。
永瀬くんがふらつくのが見えた。
「永瀬くん!」
バタッ!
次の瞬間、永瀬くんが壁に向かって倒れてしまった。
「大変だ、救急車を呼んでくれ!!」
自分で呼べばいいのに、パニックになった私は、叫ぶことしかできなかった。
フロアにいた従業員が救急車を呼び、永瀬くんは病院に運ばれた。
永瀬くんは、幸いにも、すぐに目を覚ました。
良かった……。
静田くんみたいに、三カ月も目を覚まさなかったら、どうしようかと思った。
私は、さっそくお見舞いに行った。
倒れた時に打ったのだろう。頭に巻かれた包帯が痛々しい。
「体調はどうだい、永瀬くん?」
すると、永瀬くんは困ったような顔を向けた。
「すみません……、あなたはどなたでしょうか?」
何だって?
呆然とする私に、医師が説明してくれた。
「永瀬さんは、どうやら記憶を失ってしまったようです。ご自分の名前はわかるようですが、それ以外のことは覚えていないようですね」
なんてことだ。頭を打ったせいなのか?
すまなそうにする永瀬くんに、自分は永瀬くんの上司の木村であることを説明した。
「来てくださり、ありがとうございます。」
丁寧に頭を下げる姿は、いつもの永瀬くんと変わらなかった。
「なんだか、頭に靄がかかっているようで……。覚えていなくて、本当にすみません。」
永瀬くんは何も悪くないのに、謝っている。そんなところも、彼らしい。
「気にしないでいいんだ。疲れるだろうから、今日は失礼するよ。次は会社のみんなと来るからな」
挨拶をすると、病室を後にした。
静田くんに続いて、永瀬くんまで倒れるなんて、
――もしかして、私がギンコを早く探さないからなのか?
まさかとは思うけれど、そんなことが頭に浮かんでしまった。




