第22話 便利な物
妻に不審に思われた私は、神社に行きにくくなった。
これはどうしたものか……。
ネットで検索した結果によると、残りの有名な稲荷神社は、伏見稲荷大社と、笠間稲荷神社、祐徳稲荷神社らしい。
ただ、三大稲荷については諸説あるようだ。
それぞれ、バラバラの県にある。
全部を調べるのは、なかなか骨が折れそうだ。
「うーん、これは難しいな……」
スマホを見ながら唸っていると、娘が通りかかった。
「お父さん、なに唸ってるの?」
「『銀子ちゃん』と遊びたいの〜?」
娘が、ニヤニヤしながら、スマホの画面を覗きこんだ。
妻のやつ、娘に話したな!?
「お母さん、怒ってたよ〜。当分、飲み屋には行けないね。」
ご愁傷様です、とご丁寧に手まで合わせてきた。
「違う、誤解なんだよ」
弁解したいが、娘は違うことに気が移っていた。
「稲荷神社の検索して、どうしたの?豊川稲荷だけじゃなくて、他も行きたいの?」
「うーん、まあ、そうだな……」
曖昧な返事をする。
「色々行ってみたいけど、どこも遠いんだよなあ」
画面を見ながらボヤくと、娘が意外なことを言い出した。
「なるほどね!じゃあ、家にいながら行った気分になったらいいんじゃない?」
「家にいながら行く?」
そんなこと、できるのか??
疑うように、娘を見る。
「まあまあ、私に任せなさ〜いっ」
娘は私のスマホを操作すると、『Google Earth』というアプリをインストールした。
「こら、勝手に変なアプリを入れるんじゃない!」
慌てる私に、
「怒らない、怒らない。ほら見て」
娘がアプリを操作すると、画面に伏見稲荷大社の鳥居が現れた。
「おおっ!これは伏見稲荷大社だな?」
連なる鳥居は、有名だよな。
「それだけじゃないんだよ。ほらっ」
娘が操作すると、まるで自分がその場を歩いているかのように、境内の様子が見えた。
キツネの像も、ちゃんと見える。
こんな便利な物があったのか!
「便利でしょ〜!」
得意になった娘に、操作の仕方を教えてもらった。
面白い。
後で、他の場所も見てみたい。
「これはすごいな。ありがとう。とても助かったよ!」
なんて役に立つ娘なんだ!!
さすが、私の娘だ!!
スマホを片手に感激していると、娘がスッと右手を差し出してきた。
「なんだ?」
手をヒラヒラさせて、娘が言った。
「手数料、1000円でーす!」
ええっ、チャッカリしてるな。
ホラホラと、手を振る娘。
私は、渋々財布から1000円を取り出した。
「やった!毎度あり〜!」
サッと1000円を掴むと、小躍りして娘は行ってしまった。
思いがけない出費だった。
こうして私のお小遣いは、また減ってしまったのだった……。




