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第1話 プロローグ
※この作品には、作者の過去作品と繋がる部分があります。
「部長が倒れたときに、異世界が見えたり、行ったりしませんでしたか?」
部下の静田くんに聞かれて、肝を冷やした。
――実は、私は異世界に行ってきたんだ。
静田くんは、なぜ、そんなことを思ったんだ?
焦りながらも、とっさの機転で、なんとか誤魔化せたようだ。
さすが、私だ。
長年部長をしてきただけのことはある。
この機転で、数々の修羅場を乗り越えてきたんだ!
それにしても、異世界に行って来たなんて、いい年したオジサンが言えるはずもない。
しかし……
私は、本来、お喋りなんだ!!
何があったのか、喋りたくてしかたないぞ!!
妻にも子供にも、会社の同僚にも話せない。
言ったところで、笑われるのがオチだろう。
それに、私は約束したのだ。
私の耳に、あの子の声が蘇る。
――「ここに来たことは、誰にも言ってはいけない。『あの日』が来るまでは。」
それは、モフモフで、小さな、狐の神様だった。
約束は、きちんと守らないといけないだろう?
社会人としての基本だな。
おしゃべりな私の、精一杯の抵抗で、あの日が来るまで、ノートに書くことにした。
きっと、あなたと私だけなら、あの子も怒ることはないだろう……。




