第十四話 神の砦、崩れぬ壁
「ここだ……ソラリア・コア!」
ジュリアスが叫び、光の刃を解き放つ。
「ジョーカー・切り札!」
光が黒い装甲に直撃。
轟音とともに閃光が走ったが
「……くっ、ダメだ! 装甲がまったく焼けない!」
ゼウスⅡの装甲はまるで生きているかのように再生を始める。
表面の金属が蠢き、傷口が塞がっていく。
「自己修復装甲……!?」
ディックが震える声で呟く。
「もう……どうやって壊せばいいんだよ……!」
「神の砦」と呼ばれた理由が、ようやく理解できた。
その硬さは、地上の兵器では到底届かない。
「エネルギー出力120パーセント……限界突破モード!」
イーグルが叫びながら機体を突っ込ませる。
「俺がやるしかねぇだろ!? 今日の主役は――俺だッ!」
「イーグル、待て!」
ジュリアスの制止も聞かず、
イーグルの機体がゼウスⅡの砲塔に突撃した――。
ドゴォォォォン!!
爆炎が広がり、通信が一瞬でノイズに飲まれた。
「イーグル!? 返事しろ!」
「……お、おい……大丈夫だって……ちょっと焦げただけだ……」
通信の向こうで彼が弱く笑う。
「俺のギャグより寒くなったかもしれねぇがな……」
誰も笑わなかった。
ゼウスⅡの額部分が輝く。
内部から低い唸り声のような振動が響き渡る。
「バリバリバリッ!! ゴォォォォォォン!!」
「これは……!? まさか――神の鉄槌か!」
ディックの顔が蒼白になる。
上空の雷雲が一瞬で渦を巻き、
ギリシャ全土に巨大な雷の柱が落ちた。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
街も神殿も、一瞬で蒸発。
オリュンポスの遺跡が粉々に砕け散る。
「ゼウスⅡの攻撃圏内……人類の領域じゃない……」
ジュリアスの声が掠れる。
「もう一撃食らったら……終わりだ……」
「無理だよ、ジュリアス……もう、装甲も出力も限界だ……」
ディックが呟く。
涙が一筋、頬を伝う。
「まだだ……まだ、終われねぇ……!」
ジュリアスが血を吐きながら立ち上がる。
「私たちがここで止めなきゃ、ギリシャが世界から消える!」
雷鳴の中で、ジュリアスが剣を構えた。
その瞬間。
空が割れた。
厚い雲を突き破り、黄金の光が差し込む。
銀色の艦体が、雷を切り裂いて現れた。
「……まさか……!」
女神、光を裂く 宇宙戦艦ノア。
艦首には紅の女神の紋章。
通信回線が自動で開く。
「ジュリアスちゃーん、妹のピンチ!助けに来てあげたわよ!」
ジャンヌの声が響いた。
その笑みは鋭く、残酷で美しい。
「でも、男どもは死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「ま、まさかの姉さん!?」
「女の世界を汚した報いよッ!! 三連メガ粒子砲、発射ッ!!」
ドォォォォォォン!!
青白い閃光が嵐を貫き、ゼウスⅡの胸部を撃ち抜いた。
防御壁が歪み、初めて悲鳴のような金属音が響く。
「やった……! 装甲が割れたぞ!」
ジュリアスの瞳に光が戻る。
「姉さん! そこをもう一撃!」
「命令するんじゃない!……でも、女の勘がそう言ってるのよ!」
ノアの砲口が再び光を帯びる。
三連砲撃が連続で直撃し、ついに黒い装甲が崩れ落ちた。
「ソラリア・コア……見えた!」
赤く脈打つ球体が、装甲の奥に露出していた。
ジュリアスが光の剣を構える。
「全出力、解放・セブンハート!!」
紅の閃光がゼウスⅡの心臓を貫いた。
巨大な爆発が起こり、機体全体が揺れる。
「やった……! ついに……!」
しかし
煙の中で、低い電子音が響いた。
“ZEUS-PROTOCOL:Ω起動”
「なっ……!?」
ゼウスⅡの残骸が再構築を始める。
壊れた装甲が浮遊し、コアが黒く脈動を始めた。
「バリバリバリッ!! ゴゴゴゴゴゴ……!!」
ジャンヌが目を細める。
「やっぱり簡単には死なないわね……男と同じで」
ジュリアスが呟いた。
「……ああ、ここからが本当の“神殺し”だ」
雷が空を裂く。
そして戦いは
地上から天空へ、最後の決戦へと舞い上がった。




