第七話 ディック救出戦―友情のセブンハート
夜が明けた。
地中海の水平線が赤く染まり、焼け焦げた工場跡が朝靄の中に沈んでいる。
潮風に混じるのは、まだ消えぬ油と鉄の匂い。
昨日の戦いの爪痕が、そこかしこに残っていた。
イーグルは瓦礫に座り込み、破損したブルーバードの翼を磨いていた。
「ディックの奴、まだあの中に……」
ジュリアスは沈黙したまま、夜明けの空を見つめていた。
マントの裾が潮風に揺れ、眼差しには迷いがなかった。
「助けに行くんでしょ、イーグル?」
「当たり前だ。あいつに借りっぱなしじゃ寝覚めが悪い」
イーグルが立ち上がると同時に、ブルーバードのジェットノズルが再起動する。
「準備できてる。行こう、相棒」
「了解。悪い奴には、トリックでお返しさ」
ふたりは夜明けの空を切り裂き、再び“死の工場”へと突入した。
内部は依然として炎と煙に満ちていた。
ディックのマグナム《ミサイルアーミー》は、廃棄炉の前に吊り下げられている。
外装は剥がれ、コクピットの中の彼は意識を失っていた。
「ディック……待ってろ、すぐ助ける!」
イーグルのブルーバードが鉄骨を薙ぎ払いながら突入。
その瞬間、床下が唸りを上げ、巨大な影が立ち上がった。
「再来か……愚かな連中め」
フランケンシュタイナー。
青白い電流が全身を駆け抜け、鉄骨をも焼き焦がす。
その瞳に、狂気の演算光が灯っていた。
イーグルがブルーバードを加速させ、空中から突入。
ジュリアスはアルセーヌ・ルパンで屋根伝いに進み、フランケンの背後に回り込む。
ドォォン!
鋼鉄の巨人の鉄拳が地面を叩き、衝撃波が周囲を吹き飛ばす。
「ディック!耐えろ!」イーグルの声が響く。
ディックのミサイルアーミーは必死に反撃するも、フランケンの腕に掴まれ、ボロボロに破壊される。
「くっ……パワーが桁違いだ!」
ジュリアスはマントを翻し、マジック発動、イリュージョンの連鎖!
空中に無数のアルセーヌ・ルパンの幻像が現れる。
「ディックは俺だ!」
「ブルーバードだ!」
「俺が本物のジュリアスだ!」
フランケンシュタイナーの視界は混乱。
実体の見分けがつかず、鉄拳が空を切る。
「目に映るのは幻……だが力は確かだマジックイリージョン!」
ジュリアスの声に呼応するように、幻像が飛び回り、フランケンの動きを封じる。
「くっ……目が、見えぬ……!」
鋼鉄の巨人は光と幻像の連続攻撃でバランスを崩す。
「今だ、イーグル!」ジュリアスが叫ぶ。
ブルーバードの翼を反射盾にして、光を集中させフランケンの目をくらます。
「トリックハット、発動!」
マントから飛び出した帽子が爆発的な煙と光を放ち、幻像と連携してフランケンを完全に惑わせる。
そして最後の一撃
「これが、怪盗紳士の最終仕掛け、セブンハート!」
7枚の特殊カードが空中で光を反射し、フランケンの頭部に集中攻撃。
ドォォォン!
鋼鉄の巨人は地面に叩きつけられ、工場の床に亀裂が走る。
煙が晴れると、ディックのマグナムは無事に解放されていた。
「ディック!大丈夫か!」イーグルが駆け寄る。
「……くっ……助かった……」血と油にまみれながらもディックは微笑む。
静寂。
焦げた工場跡に、三人のマグナムだけが立っていた。
イーグルが笑う。
「ははっ、やったな……ディック!」
ジュリアスも微笑む。
「仲間って、いいものですね」
ディックは少し顔をそむけた。
「お、おい……二人ともあんまり仲良くしすぎんなよ……」
二人は笑い、夜明けの光が海を照らした。
友情のセブンハート、ここに刻まれた。
ジュリアスも息を整え、マントを翻す。
「さあ、次は……黒い工場へ向かうわよ!」




