第六話 フランケンの咆哮
翌日。
燃え尽きたギリシャの街を離れ、ディックたちは地中海沿岸の無人島へと向かっていた。
そこにはマフィアの兵器再生工場。
ZEUSの残骸を再利用して兵装を生み出す“黒い工場”があるという。
錆びついた巨大な煙突、剥がれた鉄板、油の匂い。
潮風が鉄屑を叩き、ギィィ……と鈍く軋む音が響いた。
「……何か、嫌な気配がする」
イーグルが呟く。
ジュリアスはマントを翻し、ルパンのセンサーを起動させる。
「熱源、ひとつ……いや、違う。これは――」
その瞬間、地面が震えた。
鉄骨が軋み、壁が崩れ落ちる。
暗闇の中から、重低音のような息遣いが響く。
「ウゥゥゥ……グルルルル……」
ドォォォン――!
鉄壁が吹き飛び、煙の奥から姿を現したのは、鋼鉄の巨人。
頭部には縫い目、腕は油圧シリンダー。
かつて人間だった者の名残りを、その怪物はまだ背負っていた。
「フランケンシュタイナー……!」
雷鳴が響き、巨人の両目が青白く光る。
「……電力充填完了。破壊開始。」
次の瞬間、巨大な拳が工場の床を粉砕した。
ミサイルアーミーが咄嗟に跳ね上がるも、追撃の鉄拳が容赦なく襲う。
「ディック!避けろっ!」
「やってみろよ、この化け物ッ!」
ミサイルアーミーの肩部ミサイルが連射される。だが、
フランケンシュタイナーは両腕を交差させ、それをすべて弾き返す。
爆炎の中から突進。ディックは間一髪で避けるも、
鉄骨の束が叩きつけられ、マグナムの脚部が破壊された。
「ぐっ……クソッ、パワーが桁違いだ!」
「ディック、退け! こいつはやばい!」
イーグルが叫ぶが、その声は雷鳴にかき消される。
フランケンシュタイナーの腕がミサイルアーミーを掴み上げた。
油煙と火花が散り、鋼鉄の指が軋む。
煙の中で、ディックは血を吐きながら呻いた。
「くそっ……力が、強すぎる……!」
システム警告が赤く点滅する。
《エネルギー残量:8%》
《右腕装甲:破損》
「やめろぉッ!!!」
ジュリアスがアルセーヌ・ルパンを駆って突撃するも、
その一撃すら、巨人の皮膚には届かない。
「……撤退だ、ジュリアス!」
「でもディックが――!」
「奴はまだ生きてる! 今は引くしかないッ!」
フランケンシュタイナーが怒りの咆哮を上げた。
それは雷鳴にも勝る重低音で、工場全体を震わせる。
ジュリアスとイーグルは、爆発の中を飛び出し、夜の海へと逃げた。
そ
の背後
ディックのミサイルアーミーが、鉄の巨人の掌に捕まり、
そのまま地面へ叩きつけられた。
「ディック!!!」
炎が工場を包み、赤い閃光が夜空を染めた。
そして、鉄塊の中から、低く機械的な声が響いた。
「人間の限界。見せてもらおうか。」
炎と煙の中、倒れたミサイルアーミーの姿。
そして、その上で咆哮する鋼鉄の怪物。
フランケンの咆哮が、夜を裂いた。




