↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【SF5位達成】『哀しみのマグナム』リバイバル  作者: 虫松
第四部 オーストラリア大陸戦線

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/101

第十話 大統領の書状

オーストラリア シドニー


空港、夜。

滑走路の向こうで赤いランプが点滅している。


ミレーユは重いキャリーを引きずりながら到着ゲートを出た。

大統領の書状が入った封筒を胸に抱きしめる。


(兄さん……本当にここでいいの? “連絡要員が待っている”って言ってたけど……)


異国の空気が冷たく、どこか血の匂いがした。


その時


「ミレーユ様ですね?」


振り向くと、艶やかな赤いドレスの女が立っていた。

サングラス越しの瞳が光を弾く。


「はい……あなたが兄の?」


「ええ。大統領の書状を安全にお届けするために来ました。」

彼女の声は妙に落ち着いていて、どこか芝居がかっていた。


ミレーユは首をかしげた。

(……赤いドレス? こんな目立つ格好、軍の連絡員がするはずないわ)


後ろで、マロとハーン将軍が大声で騒ぎ出す。


「にゃー!この空港、空気が悪いにゃ!マロはすぐ酸欠になるにゃ!

もう王族待遇のリムジンじゃないとダメですにゃ!」


「こら、静かにしろ、マロ!」


女は微笑んだ。

「ご安心ください。特大リムジンをご用意しておりますわ」


「やっとマトモな旅ができるにゃー♫」

マロは浮かれて先に進む。


(……ダメ、やっぱり何か変。兄の言葉には“決して単独行動するな”とあったのに)


女が静かに振り返る。

その瞬間、彼女の笑みが消えた。


「証拠を見せてください。あなたが兄の部下だと証明できるものを。」


「証拠?」

女はわずかに唇を歪めた。


次の瞬間 、ナイフが閃いた。


「これが証拠よ。」


「ひゃあああああ!?」

ハーン将軍が悲鳴を上げる間もなく、

女は彼の背後に回り込み、冷たい刃を喉元に押し当てた。


「動くな。お嬢様。」


(やられた……!兄の言ってた“罠”ってこれのこと!?)


ミレーユの胸が凍る。

足がすくんで動けない。

周囲の人波が消え、音が遠のいた。


「その封筒を渡してもらおうか。

大統領の書状──“戦争を終わらせる鍵”なんだろ?」


「あなた……誰なの?」


「そこ!何をやっている!」

空港の職員が走ってやって来た。


「....黙って車に乗りな!」


ナイフがハーン将軍の喉をかすめ、血の線が細く走る。

「ひぃいっ!助けてにゃあああっ!」


「静かに。さもないと次は喋れなくしてあげるよ」


ミレーユは拳を震わせながらも、逆らえずに頷いた。


バーバラは満足げに笑うと、コンボイトラックのドアを開けた。

鉄の匂い、ガソリンの臭気、

そして荷台の奥には、

“赤い蠍”の紋章が塗られていた。


(まさか、兄さんの任務が……敵に漏れていたなんて)


夜風が唸る。

エンジンが轟き、コンボイは荒野へと走り出した。


遠ざかる空港の灯りを背に、ミレーユは唇を噛みしめた。

封筒を握る手が汗で濡れている。


(アクス……早く気づいて。私、敵の手に落ちたかもしれない)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。