第二話 ハーン将軍 蜀の部隊
中国大陸・南西部 蜀軍司令部。
雨季の湿った空気の中、旗が重たげに揺れていた。
室内には、赤い絨毯と歴史的な武具が並ぶ、古風な装飾の司令室。そこに響く声は軽やかで、しかし場違いな猫語混じりだった。
「火星軍は新型アーマドマグナムを開発したそうですにゃー」
将軍席で、奇妙な仕草をしながら首を傾げるのは――ハーン将軍。
軍服を着てはいるが、どこか子どもじみた雰囲気がにじみ出ている。
側近の参謀が資料を手に答えた。
「確認されているだけでも三機。従来型とは段違いの性能のようです」
ハーン将軍は「うにゃ〜」と声を漏らし、椅子から立ち上がると部屋を落ち着きなく歩きまわった。
「困ったですにゃー、どうしましょうかにゃー!中国のピンチですにゃー!!」
それを見ていたマーシャルは、眉ひとつ動かさず、背筋を伸ばして静かに言った。
「将軍、落ち着いてください。状況は深刻ですが、慌てるべきではありません」
「マーシャル殿、あなた冷たいのですにゃ〜。この国の未来がかかっているのに!」
その時、格調高い声が部屋に入ってきた。
「ご安心を。すでに対応は進めております」
入室してきたのは、白い長衣に軍扇を持った若き軍師の諸葛孔明であった。
冷静沈着な瞳で資料を確認しながら、ゆっくりと説明を続ける。
「すでに、劉備、関羽、張飛、馬超――“四霊獣部隊”が出撃しております。火星軍の新型に対抗できるのは、彼らしかいません」
「そうですにゃ! 朱雀!青龍!玄武!白虎! 最強の4機ですにゃー!」
(……指揮はこの孔明が実質的に握っている。将軍は……飾りか)
マーシャルは口には出さずとも、落ち着いた視線で全体を観察していた。
「私はその現場の様子を確認しに行きます。本部への報告も兼ねて」
孔明は軍扇を軽く下げ、一礼した。
「ご同行をお願いします、マーシャル殿。バーバラ殿もご一緒に」
バーバラは軽く頷く。
「中国の機体、見せてもらおうかしら」
「くれぐれも油断なきよう」
その数日後――
霧雨に煙る山岳地帯。列を成して進む兵士たちの中で、ひときわ異彩を放つ巨体が4機。
それが、中国伝統の霊獣に名を冠した、蜀のアーマドマグナム部隊だった。
【朱雀】
劉備専用:空を切り裂く鳥型マグナム。火焔に包まれ、空中突撃を得意とする。
【青龍】
関羽専用:長大な青龍刀を備えた中距離型。破壊力は圧倒的。
【玄武】
張飛専用:鉄の甲羅で重装防御、巨大な鎖釜を振り回し広範囲をなぎ払う。
【白虎】
馬超専用:四足歩行型。爪と牙による接近戦に特化した突撃マグナム。
兵士たちは静かに整然と進軍する。歩調の乱れは一つもない。
バーバラがそっとつぶやく。
「すごい……機体も兵も、完全に訓練されてる」
マーシャルは無言で歩きながら、低い声で続けた。
「精神面の練度も高い。アクスたちにとっては、今までにない難敵となる」
彼の目は前方の戦線を捉えていた。その先に、火星軍の気配が漂っている。
その頃、火星軍・アクスたちはパキスタンからインド国境へと進軍を開始していた。
「これから……俺たちは本当の地獄を見ることになるかもしれないな」
アクスは、空を仰ぎながら小さくつぶやいた。
インド戦線、そして四霊獣との激突が、刻一刻と近づいていた。




