第八話 宿命の対決
象部隊は次々と内部から破壊されていった。
腹部に仕掛けられた爆薬、神経系へのジャック、そして装甲裏からの銃撃
地球軍の象部隊はその巨体ゆえに、崩れ落ちる時の衝撃もまた甚大だった。
ズズゥゥゥン!!
ガゴォン!!
爆音と共に、砕けた象の残骸が地面を転がる。
ハンガリー前線、マーシャルとバーバラの機体の前に、火星軍の中核部隊が現れる。
ドミノ軍曹が率いる特殊部隊、そして――
アーマドコアの精鋭、アクス・ディック・イーグルの三機が、静かに立ちふさがった。
(真ん中の機体……あれがアクスね)
バーバラのマグナム機は即座にロックオン。
そのとき―
「おいおい、どーすんだよ、アクス。何か手があるのか?」
ディックは背筋を走る悪寒に、思わず声を震わせた。
「白い機体がマーシャル大佐デスネ。隣の赤いのは……誰でしょうネ」
イーグルは淡々と、しかし慎重にガドリング砲を構える。
アクス「…………」
マーシャル「…………」
その沈黙を破ったのは、バーバラだった。
「大佐ができないようなら、あたしがやるよ」
突如、赤いマグナム機が疾風のように突進してきた。
「ひぃーっ!赤い機体がしかけて来たぁー!」
「プログラム、デルタアタック発動!」
「トライアングルフォーメーションね……」
◆戦術名【デルタアタック】◆
三機のアーマドコアが縦列から三方向へ分かれ、鋭い三角形を描く。
中心にバーバラを包囲し、一斉に銃撃。
ダダダダダッ!!
しかし。
「……遅い!」
バーバラの機体は、まるで戦場で舞うバレリーナのように、弾幕を優雅に舞ってかわす。
「機体の性能が違いすぎるようだね。それっ」
バーバラのナイフがディックの膝関節を斬り裂いた。
ブチッ!
「足が動かない!」
次の瞬間、バーバラはイーグルの右足に飛びかかり――
メキィッ!!
「オーノーウ、動けマセーン!!」
アクスは茫然と、その光景を見ていた。
(駄目だ……実力の差がありすぎる)
三機が一瞬で壊滅状態。自分が動いても結果は同じだと、心のどこかで悟っていた。
「大佐、いいのかい?」
バーバラは静かに、アクスの機体に近づいていく。
ナイフを構え、振り上げた。
その刹那。
ガシッ!!
マーシャルの白い機体が、バーバラの腕をつかんで止めた。
「バーバラ、撤退するぞ!」
「…………」
(お前にはあの時の貸しがある。生きのびろよ!)
その言葉は言葉にせずとも、伝わった。
マーシャルとバーバラの機体は、戦場を離脱し、輸送機に収容された。
その姿をアクスは、沈黙の中で見送った。
戦場でドミノ軍曹が動いた。
「……ハンニバル将軍、ついに止まったか。」
司令室に響いたその声に、一瞬の静寂が走る。
「よし、空軍、爆撃開始! アーマードコア部隊は続いて、サーベルタイガを叩け!」
火星の赤空を裂くように、爆撃機が次々と発進していく。
――ボォォォンッ!! カァァァンッ!!
轟音と共に爆発の火柱が吹き上がり、地表を真っ赤に染めた。
「ガードカウンター、発動!」
アクスの機体が前進し、サーベルタイガ部隊に真正面から突っ込む。
◆戦術名【ガードカウンター】◆
盾で敵の攻撃を受け止め、そのままぶつかって吹き飛ばし、
体勢を崩した敵に集中砲火を浴びせる近接迎撃戦術。
「行けえぇぇ! 盾で吹っ飛ばしなぁ!!」
ドォォォン!!
サーベルタイガの機体がひしゃげ、「くの字」に折れて吹き飛んだ。
「頂き子猫ちゃん♪」
イーグルのマシンガンが牙をむく。
――ダダダダダッッ!!
砲弾がサーベルタイガのコックピットを貫き、爆発四散させた。
「象の部隊、突撃せよぉぉっ!!」
怒声が響く。全高10メートル超の鉄の象たちが、怒涛のごとく突進してくる。
「退けぇぇっ!!」
アーマードコア部隊が散開、左右に別れた瞬間だった。
――ズドォォォォンッ!!
先頭の象部隊数体が、地中に仕掛けられた巨大な落とし穴に落下。
「罠だッ! 止まれ! 止まれぇぇッ!!」
だが、止まらぬ象。後続が先頭を押し込み、さらに犠牲が続出。
そのとき――
「突撃だ!!」
ドミノ軍曹率いる特殊部隊が動いた。黒い影が一斉に跳び出す。
「腹部に爆薬設置! 内部から突入するぞッ!」
パシッ、パシッ、パシィィィン!
腹部に仕掛けられた爆薬が次々に爆発。装甲が裂け、象の内部へ通路が開かれる。
「よし! 各班、内部侵入!制御中枢を破壊しろ!」
爆炎の中、影のように侵入していく兵士たち。
象の内部は制御室では火花が飛び交い、警報が鳴り響いていた。
「象の部隊が……全滅しそうです!」
後方の高台から、その様子を双眼鏡で見ていたハンニバル将軍が叫ぶ。
「……ここで退けば、地球軍の我が名が廃る。絶対に退けん!」
ハンニバル将軍は歯ぎしりしながら前線へ歩み出そうとした。
その時
ドゴォォン!!!
遠くで、巨大な象の1体が内部から火を噴いて崩れ落ちた。
マーシャルとバーバラのアーマードコアは、静かにその様子を見守っていた。
「……ひどい有様ね。」
バーバラの赤い機体がつぶやく。
「奴ら、本気だ。」
マーシャルは言葉少なに返す。
「どうする、大佐? もう止まらないよ。ドミノ軍曹たちは突き進む。」
「……わかっている。」
爆発の向こう側で、ドミノ軍曹の隊がついにハンニバル将軍の座する中央象に到達。
パンッ! パンッ!!
数発の乾いた音のあと―
ハンニバル将軍討ち死に。
戦局は完全に、火星軍へと傾いていく。
「……ハンニバル将軍、銃殺された。」
通信が届くと同時に、すべての象部隊が沈黙した。
「……終わったな。」
マーシャルは目を閉じた。
バーバラの機体が肩越しに振り返る。
ハンニバル将軍がいなくなったヨーロッパは火星軍の統治下となった。
ヨーロッパでの戦いが終わり。アクスは曹長となった。
イーグル、ディックは軍曹となった。それぞれ進級した。




