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異界事変 ~狂いし妄者は殺戮の日々を味わう~  作者: 結城 からく


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第74話 異界事変③

 食後、俺と医者はロド商会に向かう。

 殴って粉砕した医者の顔面は既に再生していた。

 痕跡一つ残さず綺麗に回復している。


 大王の死体を気に入った彼は、こまめに改造を施していた。

 今度は髪や目の色を変えると自慢していた。

 身長もあと少しだけ伸ばすそうだ。


 まるで人形感覚だが、死霊術師の医者からすれば、本当にその感じなのだろう。

 ほとんど不死に近いこの男は、皮肉にも常人より生き生きとしている。


(こいつも"終焉"の妄者に挑むのか?)


 オーナーの部屋で椅子に座った俺は、悠々と資料整理をする医者を一瞥する。

 なんだかんだで付き合いも長くなってきたが、こいつもそれなりの実力を持つ悪党だ。

 その気になれば、国一つを支配できるような能力がある。

 本人の興味が限られた方面にしか向かないのでそういったことは起きないが、俺よりも危険人物だった。


 元々、妄者のことを徹底して調べて研究に取り込んでいた医者は今回も入念に調査しているだろう。

 当然ながら"終焉"のこともある程度は暴いているはずだ。

 神話の存在なので一般には虚実の混ざった情報が流れているが、この男ならば取捨選択も難しくないと思われる。

 こうして動いているということは、やはり勝利する算段があるに違いない。


 俺が躊躇いなく依頼を受けられるのは、こいつがいるからだった。

 日頃の言動には苛立つが、それに見合う実力の持ち主である。


 そんな医者から詳細を聞こうとした時、騎士が部屋に入ってきた。

 彼女は漆黒の鎧と大鎌を装備した状態で、既に臨戦態勢に入っているのは明らかだった。


「お前も参戦するのか」


「妄者は、殺す。件の"終焉"は、危険すぎる」


「じゃあ俺も殺してみるか?」


「できるのなら、苦労はしていない」


 騎士は悔しげに答える。

 未だに俺の殺害は諦めていないようだが、まだ達成できないと確信しているらしい。

 その辺りの潔さには好感が持てる。

 無謀さはなく、虎視眈々と狙っているのが良い。


 医者はそんな騎士の見解に触れて笑う。


「もし個人で"虐殺"の妄者に勝てる存在がいるのなら、是非とも見てみたいがね。それが今回の標的なのかもしれないが」


「俺が死ぬとでも?」


「相手は神代の妄者だ。君どころか世界が滅びかねない。既に情報を聞き付けた各国上層部は対策を練っている。じきに君のもとに依頼が来るだろう」


「ちなみに俺以外にも"終焉"殺しは頼んでいるのか?」


「そうだね。ロド商会の伝手を利用して各地の強者に連絡している。どこまで通用するか分からないが、まあ最低限の働きは期待できるはずだ」


 医者は流暢に述べながら資料をめくる。

 やはり彼なりに色々と考えているようだ。

 追加戦力がどんなものか知らないが、とことん利用してやろうと思う。

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