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異界事変 ~狂いし妄者は殺戮の日々を味わう~  作者: 結城 からく


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第48話 死霊退治⑫

 異形と化した医者の腕が破裂した。

 金属片が生物のように散開し、奴の周りを高速で回転する。

 その一部が、無数の刃となって俺達に飛んできた。


「そう来たか」


 俺は指の刃で防御する。

 背後でも金属を弾くような音が聞こえた。

 それぞれの手段で防いだようだ。


「ふむ。今の量では不足だったか」


 医者が呟くと同時に、残る金属片が同じように飛来する。

 俺は突進しながら指の刃を振るって切り裂いた。

 痺れのような衝撃が走るも欠損はない。

 そこから一気に間合いを詰めていく。


(やることは決まっている。近付いて八つ裂きにするだけだ)


 俺の近接戦闘を最も得意としている。

 相手との距離が縮まれば縮まるほど有利ということだ。

 医者が何をしようと、とにかく近付かなければ話にならない。

 奴の策を捻じ伏せながら命を奪ってやろう。


「蛮勇だな。そう来るとは思っていたが」


 ぼやく医者の腕は、針金のような骨格が露出していた。

 しかし、徐々に膨らんで元の形状へと戻りつつある。

 破裂させた分が回復しているようだ。


 腕の各所に残るガラス玉が明滅する。

 その直後、青白い光線が放たれた。


「……っ」


 俺は咄嗟に身を翻す。

 光線はジャケットの裾を貫通していった。

 追加の光線が来るも、今度は指の刃で受け流す。


 焼ける痛みが巡る。

 見れば刃の先端が欠けていた。

 ちょうど人差し指と中指にあたる部分だ。

 光線に削られてしまったらしい。


「ははは、この術は特別製だ。さすがの君でも直撃は避けるべきだね」


 医者は得意げだ。

 俺を負傷させたことを喜んでいる。


 奴はさらに光線を飛ばそうとするが、何かに気付いて振り向く。

 そこには大鎌を振りかぶる騎士がいた。

 俺が陽動となっている間に、迂回しながら接近していたのだ。


「ほう」


 妄者の腕が再び破裂し、金属片が浮遊する。

 それらが大鎌の斬撃を食い止めた。

 かなり強固な術で位置が固定されているらしい。


(攻防一体の能力か)


 反撃とばかりに、光線の連発が騎士に襲いかかる。

 後退する騎士は大鎌を回転させて凌いでいた。

 しかし、それも長続きはしないだろう。

 騎士と医者は、能力的な相性が最悪だった。


 彼女は人間だ。

 光線が致命傷となった場合、たぶん助からないだろう。

 修道女なら蘇生させられるかもしれないが、もれなく彼女の奴隷となってしまう。


 せっかく手に入れた美人の秘書なのだ。

 奪われるわけにはいかない。

 ここは手助けすべきだろう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! >奴はさらに光線を飛ばそうとするが、何かに気付いて振り向く。 >そこには大鎌を振りかぶる騎士がいた。 やはり、妄者殺しは医者兼死霊術師を敵と見做したか。 …
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