↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界事変 ~狂いし妄者は殺戮の日々を味わう~  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/101

第46話 死霊退治⑩

 俺は医者を観察する。

 佇まいは素人ではないが、戦士とは違う。

 近接戦闘の苦手な魔術師といったところか。


 死霊術師という情報は本当だろう。

 肉弾戦は不得手と思われる。


 とは言え、魔術師がどんな隠し玉を持っているか分からない。

 決め付けるのは早かった。

 霧の幻惑だって持っていたのだ。

 様々な能力を想定して動くべきである。


 俺は観察しているうちに違和感を覚える。


(……こいつ、妙だな。何者だ?)


 医者がおかしな気配を帯びている。

 妄者ではないが、人間でもない気がした。

 その中間とも言うべきか。

 なぜか曖昧な領域といった印象を受ける。


 理由を考えていると、医者が嬉しそうに語る。


「僕の正体を疑っているね。それも当然のことだろう。君ほどの妄者ともなれば、感知能力も極めて高い。僕がただの人間でないことにも気付いているはずだ」


「死霊術で何か仕込んでいるな?」


「そうだね、色々と弄っている。人体改造は得意分野なんだ」


 両手を広げた医者は誇らしげに頷く。

 自分語りが好きなタイプらしい。

 こいつは成果を見せびらかしたいのだ。


「さっそくだが、君の疑問を解消してあげよう」


 医者が右腕を掲げて、白衣の袖をめくり上げていく。

 そうして露わになったのは、褐色肌の腕だった。

 筋肉質で逞しく、濃密な魔力を内包している。


 医者の肌はどちらかと言えば色白で、身体つきも細身だった。

 その腕だけが異質なのだ。

 よく見ると、肘の上あたりに縫合痕がある。

 そこを境に肌の色が切り替わっていた。


(別人の腕を移植したのか?)


 その時、腕が変貌を始めた。

 皮膚が千切れて剥がれ落ちて、血の代わりに液体の金属が噴き出す。

 それが徐々に硬質化し、ひび割れながらも定着した。


 腕の表面に球体状のガラス玉がいくつも浮き出る。

 色に規則性は無く、なんとなく視線を感じた。

 ガラス玉の一つひとつが眼球の役割を担っているようだ。


 変貌した腕は所々が錆び付いている。

 あれは劣化ではない。

 魔力の濃淡を表しているだけだ。

 錆はむしろ力の象徴とも言える部分だった。


(間違いない。あれは哭いている)


 魔術ではなく、妄者特有の力であった。

 しかし、医者は妄者ではないはずだ。

 これはどういうことなのか。


 様々な疑問が一瞬にして湧き上がるも、俺はこれまでの情報から答えに辿り着く。


「なるほどな。妄者の死体か」


「その通り。死体から拝借した腕を触媒に、残留した力を使わせてもらった。普段は眠らせているから、君の感知でもはっきりとは感じ取れない。通常の妄者とは大きく異なる点だね」


 医者は妄者の腕を移植し、人間のまま能力を行使できるようになったのだ。

 ただ移植しただけでは不可能なので、おそらくは死霊術で活性化させている。


 妄者は哭き止んだ状態でも感知できるが、この男の場合はそれが難しい。

 ベースが人間のままだから中途半端なのだ。

 奇妙な気配の正体は、移植によるものであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] >医者は妄者の腕を移植し、人間のまま能力を行使できるようになったのだ。 >ただ移植しただけでは不可能なので、おそらくは死霊術で活性化させている…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。