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The Game 20

ぶうぶうというUさんからの文句を聞き流しながらも車は順調に進んだ。

未来の展望をUさんは語ったが、それが夢に溢れた明るいものだとは思えない。好きな二次元キャラを好きなだけ召喚するとか、地獄絵図になるとしか思えない。


市職員だけがズルいと言われても知らない。


電話がかかってきたのは、だからある意味では助かった。

到着するまで聞き続けなくて済んだ。


Cさんからの連絡だった。

かつて未来の味を先取りし、蜘蛛神に捕らえられて改変者となり、目の中に金魚が入った人だ。


「もしもし」

「……」

「もしもし?」


だが、返答をしなかった。


着信番号は間違いないはずだが、荒い呼吸音だけが聞こえた。

イタズラ電話の類かと思ったが、様子が違う。


興奮ではなく、命の危機にある人の呼吸だった。


「改変、されたんです……」

「はい」


かつてそのような被害に遭った人だ。


「ど、どうしてか、わからない。たぶん、まだ調整が、ピントが合っていなかった」

「Cさん?」


Uさんが、どうかしたかという視線をよこした。


「けど、今はよくわかる」

「申し訳ありませんが、今は急いでいます。緊急の要件でなければ後日というわけにはいかないでしょうか」

「ホテルは正解です」


切ろうとした手が止まる。


「そこにZさんがいることは、間違いない。それは分かりました」

「どういうことですか?」

「ははは、だから、改良されたんですよ……見えなかったんじゃなかった、こっちの認識が追いついていないだけだった……」


まさか……


「今は、未来のことが以前よりも、もっとよく分かる。あの蜘蛛に、そう改良されてしまった」


失われたはずの未来予知が、より強力なものとなっていた。


「すべてを言うことはできない、言葉としては伝えられない、これも見えたらよかったのに、間に合わなかった。けれど、向かってください、止まっては駄目です。ぎゃ……」

「ぎゃ?」

「逆です。考えて。もうこれくらいしか……」


電話が切れた。

あるいは、誰かにスマホを潰された。

切れる直前、破砕の音が聞こえた。


「どうしたんですか?」

「不明、けど、警戒」


市職員が感じていた危機感もまだ続いている。

その直感に、裏付けが与えられた。


しかし、逆?

いったい何が?


「ふふん、いまさら誰が何をできるんですか? スピードの速い異常とかもうないですよね、このままホテルについてZさんを助け出して、パーティです!」


大きなフラグが立った。

むしろ市職員も「やあ、そうだね、いいシャンパンも用意した、皆で乾杯しよう!」と言ってフラグ積み重ね、逆に折るべきかと考える。


「え」


それよりも先に。


「あの、その? こんな道、ありましたっけ?」


妙求市の異様が牙を剥いた。

それは、迷いの路地ではなかった。


「なんか、風景が全体的に……」

「電線の数が、増えている」


窓から上方を注視した。

進むほどに数が増えた。

一本が二本に、二本が四本に、無限に増殖するかのように空を覆う。

昼間にも関わらず暗くなる。


「え」


かつてY家を襲った異常だ。

植物が繁茂する様子を早送りするかのように、電線が成長を続ける。


空は、あっという間に巨大ドームの様相と化した。


「な、なんで……?」


これは、捕獲者側が行ったことだ。

敵対する側ではない、そのはずだというのに、黒い空には明確な敵意が垣間見えた。


走る車を中心に電線の数は増えている。


「職員さん、これ、どうし――」


それら黒い紐の群れが、一斉に千切れた。

黒の隙間から青空が見えた。


電柱から外れたそれらは、しかし、車には向かわなかった。

すべて周辺のビルへと巻き付いた。


「なにごと!?」


轟音と共に、建物が動く。

地盤工事など無いかのように、重々しい音をさせて引きずる。

道路ですらも追随するかのように移動した。


街がズレた。


「本当になんでですか!?」


Uさんのツッコミも虚しくグニャリと曲がる。

今まであった道が消える。


「Y家のものとは違う。これは――」


遥か向こうのビルの上で、踊り続ける人がいた。

イヤフォンをつけ、リズムに合わせて動いている。

それに追随するかのように、「消失物で作られた街」が動き出した。


「Iさん!」


かつて電線に覆われた街の様子を報告し、見えない誰かと踊り、道の陥没を引き起こした人が妨害役をした。


「ちょ、ちょおお!?」


道路がグネグネと曲がる。

常識的にはあり得ない、難易度の高いコースとなる。


左右に揺られ、ついには前を塞がれる。

壁ではなかった。


「一般道路にジャンプ台とかないんですよ! 職員さん、口閉じて!」


車が浮遊し、叩きつけられるように着地する。

車体がアスファルトにこすれる音が全体から鳴った。


「ひえ」


その向こうから、巨大な怪物が姿を現した。

四足のそれは、ビニール製の巨大な姿だ。

どこか愛嬌を感じられる。


「そこまで育ったか」


その怪物の前では、Eさんが満面の笑顔で両手を広げた。



挿絵(By みてみん)

コーヒー

https://ncode.syosetu.com/n9386ju/3/

真偽

https://ncode.syosetu.com/n9386ju/57/

鍵屋と市職員

https://ncode.syosetu.com/n9386ju/73/

赤い視界

https://ncode.syosetu.com/n9386ju/92/



電線

https://ncode.syosetu.com/n9386ju/21/

見張り

https://ncode.syosetu.com/n9386ju/77/

ゲーム仲間

https://ncode.syosetu.com/n9386ju/97/



ビニール

https://ncode.syosetu.com/n9386ju/8/

臨時爬虫類店

https://ncode.syosetu.com/n9386ju/70/

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