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第百十五話 一つ目の輩の脅威、守れるか!?


「きゃぁ!」


「ダギラサイクロプスが火を噴いてきたー、こわーい」


 結界の真正面から敵が炎を吐いてきたが、まともに当たるものの、相殺されていた。


 ニミュエとエリューが身震いし、後ろ手に動いた。ニミュエは涙目だ。


「ニミュエさん、大丈夫だと思います。ヒョウさんの氷の結界はヒョウさんの力がなくならない限り破られないはずです」


 エリューはいうと、杖を構え、万が一の時の為に、防御態勢を取る。


 そのときだった。


「きゃーまた、火だ!」



「GUGYAOOO」



 凄まじい雄叫びを上げ、ダギラサイクロプスがけたたましく地を蹴り、結界の上からのしかかってきた。


 だが、敵の攻撃は見事に、結界を貫通することなく、地面にクリーンヒットした。


 岩石が飛び散った。その場には亀裂が入り、大きな穴があいた。


「きゃー」

 ニミュエは口をカクかくしながら、結界の中の地面に余りの怖さでへたりこんでいた。


 エリューがキッと、敵を睨みつけ、もしもの場合を考慮し、魔法をいつでも叩きだせるようにスタンバイしていた。詠唱の言葉も唱え終わっていた。エリューが口を開いた。


「大丈夫です、パンチやキック、力技をしても外からでは壊せないはずです」


「エリュー、こんなのいやー。こわいよー、ファイ早く来てよー」


「きっと来てくれますよ、誰かが助けに。でも、ニミュエさん、外からは壊せないし、中からもこの術は壊せません」


「じゃぁ、万が一あったら?」「大丈夫です。ヒョウさんの身に何かない限り、安全です」


 懸念していることが的中した場合を想定し、二人にも算段があった。


 ニミュエはエリューより羽根がついているためスピードが速い。だが、エリューは生身の人間。動作を速くする魔法を使っても、敵の攻撃を掻い潜るのは無理だった。


 算段すればするほど、苦渋の色で満ちていく。ファイたちはまだ到着していない。


 一体この危機をどうするかが、ネックだった。




☆☆



 その頃、結界の外では、敵とヒョウの攻防戦が繰り広げられていた。


「チぃ、巨体の割に、スピードが速い! さっきの一撃で、腕一本か。(これだけ、数がいると厄介だな。動きさえ封じれば)」


 ヒョウが考察し、鋭い眼光を放ち、横手に走りながら、睨みを利かせた。


 敵は怯む様子もなかった。


 ダギラサイクロプス、五匹が、ヒョウを取り囲んだ。そして、一斉に五匹が大きく口を開けた。



「GUGYAAAAAA」



「何、五匹の炎! チぃ」


Buoooo!


 なんと、ヒョウのいる中心に向かって、敵はまともに強烈な炎のブレスを吐いてきた。


 地盤がとてつもない熱量で当たると同時に溶けてえぐれた。


 ヒョウはブレスを吐いてきたギリギリのところで、上手く後方に飛び退いた。

「(躱し切れるか)後ろ!」


GAKINN!


 奴さんの物凄い重いだろうパンチをまともに真正面から魔剣で受け止めた。


 さすがのヒョウでも、怪力に押され、後方にそのまま吹っ飛ばされた。


 うまく、後方にあった木に足を付け、第二波に対して、木を蹴って、突っ切っていった。


「く、なんてパワーだ、ラスタを高めても押し切られる」


氷魔風(アイスブリザード)!」

 その術を仕掛けた瞬間、地にいたダギラサイクロプスの足を氷漬けにし、動きを封じた。


「もらったぁ」


「GYAAAALOOOO!」


 敵の何匹かは、凍らさせられた足に自身の強烈な炎のブレスを吐いて溶かしていく。


 しかし、対応が遅かった。


 ヒョウは瞬足に地を蹴り、魔剣を振りかざし、三匹の首を一瞬ではねた。


 三匹の巨大な体躯がその場に倒れ伏した。血だまりがその場にできていく。


 だが、まだ七匹いる。


「後、七匹! 自動小刀(オートナイフ)!」

 ヒョウはすかさず、連撃でオートナイフを右手方向にいた四匹に向けて何発も放った。


 だが、それも相手のスピードを考えると躱されるのは目に見えていた。それも計算ずみだった。


 ヒョウはニヤリと不敵な笑みをみせた。


「二発よけたか、だが、五発あたれば十分だ!」


「凍れ!」


オートナイフが五発あたり、ヒョウが術を仕掛けようとラスタを発生させ手を握った、その時だった!


「しまった、地中からだと!」


「ぐ、くそ、脚を掴まれた」


 なんと、地中からダギラサイクロプスの手が二本伸びてきて、二本の手でヒョウの右足を掴み込んだ。


 そのまま、下にダギラサイクロプスは引っ張り、思いっきり凄い怪力で手を握りこんだ。


「ぐぁああぁぁッ」


 ヒョウの右足は粉砕された。痛みでヒョウは魔剣を下に落とし、声音をあげた。


 悲鳴がその場に響き渡る。仲間はこれを見ていられなかった。


「ヒョウさん! 今助けに行きます」


「だめよ、エリュー、相手のスピードが速すぎるわ」


 ニミュエはエリューの前に立ちはだかり、両手を水平に広げ、行かないでのジェスチャーをする。


 だが、エリューの剣幕は尋常じゃなかった。


「でも、みて見ぬふりなんて、できない。この術が解けなくても魔法なら遠隔操作ができるわ」


「待って、やめて。もしがあったらりしたら、ヒョウさんがしてること、無駄骨よ」


 ニミュエが涙目で必死に止めようとする。


「ぐあぁあぁ、(魔法? まさか?)やめろ、エリュー、殺される」


 その時だった。


 掴んでいたダギラサイクロプスの首から血飛沫がとんだ。


 一体どうした? その場にいる誰もが唖然となり口をぽかんと開いた。


「よう、ヒョウ、あぶねーところだったぜ、あいつに頭つかまれてたら、あの怪力で頭粉々にされてたぜ」


「ファイ」「ファイさん!」「ファイ―」


 どうやら、ファイの一撃が、ヒョウを掴んでいたダギラサイクロプスに命中して仕留めたようだ。

 皆の顔に、笑顔が戻った。


 後ろにレイティス、ウィード、レギンもいる。


「ウィード様、レイティス、それにレギン殿まで」


 ヒョウが痛みをこらえ、魔剣を松葉杖のように地面に刺しながらいった。


「へ、大猿、俺たちがきたからには、そう簡単にはいかせないぜ」


「こいよ、大猿、力には力をだ。わしの腕がなる」


 レギンが拳を鳴らした。ポキポキと骨の音がする。


ファイとレギンがそういった時だった。



「GYAOOOA!」


 なんと、一斉にダギラサイクロプスが退散していく。どうしたのだ?


「な、なんだ? ダギラサイクロプスが逃げていく? 一体どうして?」


 ファイが懸念しながら口を開いた。


 続いて、ヒョウが言葉を紡いだ。


「恐らく、そいつだ。ファイがやったそいつが、大将だったんだ」


「なるほどな、ボスをやられたから逃げたってわけか」


 ファイがへんと鼻を鳴らした。


 ヒョウの様子がおかしい。

「ぐ、くそッ、俺としたことが、立てない」


「ヒョウ、お前まさか、さっき足を掴まれたときに」


「どうやら、死に土産を置いて行ってくれたみたいだな。不覚だ」


 ヒョウが立てないのをみて、ファイはヒョウの脇から腕に自身の頭を入れ、かついだ。


「とりあえず、テアフレナ様にみてもらおうぜ、ほらよ、ヒョウ、歩けるか?」


「片足はどうにかな、動くみたいだ」


 ヒョウの言葉にファイはへへっと頷き、ゆっくりと歩いていく。


 ヒョウは足をひきずっていた。右足は全く機能していない。


 その時、敵が退散するのを見届けると、ヒョウが結界を解除し、ニミュエとエリューが近寄ってきた。ニミュエがファイに飛びついた。


「ファイ―、怖かったよー、何でもっと早くきてくれなかったのよー」


「わりぃ、わりぃ、俺が察知するのが遅かったみたいだな」


「すまないな、閉じ込めてしまって」


 ヒョウが済まなさそうな顔つきで言った。


 ニミュエが切り替えした。


「いいよ、怖かったけど助かったから」


「さて、ねぐらに帰ろうぜ、帰って治療してもらって、美味しい飯、食べて寝ようぜ」


「今日はわしの方が食べるの速いぞ」「おっさん、負けねーぞ」


「もう、みなさん、最終的にまたそれですか」


 ファイとレギンのいつもの掛け合いに、エリューが釘を刺した。


 その一連の模様を後ろからウィードはみながら、ずっとほほ笑んでいた。


「(ここにいる人たちは、みんな、信念があるのかな。僕のいたところの人間とは人間味が違う。もっと

早くこの人たちと出会えていたら、国は変わっていたかもしれない)」

 ウィードは、仲間という温かい絆を感じてるようだった。


 自身にそういう心強い味方、あるいは、信じれるものがいないのか、または政治の関係で、人間不信なのか、ウィードには羨ましく思えたようだった。


 これから、邪神復活を阻止する戦いが始まっていく。ウィードにとっては、国そのものに影響を及ぼすくらい大切なことだった。民を守るためには。


 もし、邪神が復活すれば、無残にも多くの人が殺されるのは、ウィードもわかっていた。




☆☆


 上空では、気配を消し、道化師が薄ら笑いを浮かべていた。


「ほほう、ダギラサイクロプスを撃退したか。運のいい奴らだ」

 フォライーだ。フォライーが動きを察知していた。


「しかし、邪神バルバトスの復活は阻止できぬぞ、ウィードよ。くはは、血祭りにしてくれよう」

 フォライーはそういうと、すんなりとその場から姿を消した。








 

☆☆















遅い時間帯でも読んでくださっている方ありがとうございます。

作者なんとなくわかります。

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