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第九十八話 フレイア作戦会議



一行は、レイトマス都市から、姫様の記憶移動魔法でずっと北西に飛び、ちょうどフレイアという街が見えてきたところだった。


 姫様がずっと魔法を駆使していた。

 姫様が四次元光でできている記憶移動魔法の中心で魔力を投じ、額の汗を拭った。


「フレイア都市ね、まだ先は長いわね。今日中にストーム山脈は越したいわ」

 そのときだった。テアフレナが姫様の様子をみて、心配し、言い寄ってきた。


「姫様、疲れたでしょう、私が今度はかわりますよ」


「いえ、このくらい大丈夫よ、血を流して皆が戦うの考えたら」

 姫様は意思表示が変わらない。自分も回復以外に何かしたいと想いがあったからだ。

 テアフレナは心配し再三、姫様に言い聞かすように言葉を綴った。


「しかし、航続距離が長すぎます。もしも、魔力の使い過ぎで魔法熱マジックヒート魔法の病気にでもなれば……」

 キュラも言い寄ってきた。


「姫様、テアフレナのいう通りです。テアフレナも飛ばし過ぎで魔法の病気にかかったのです。レイトマス都市からフレイア都市まで姫様の力できたのです。ここは代わるべきかと。少し休んでください」

 だが、姫様は首を縦に振らない。姫様はこうと決めたことは絶対に曲げない性格だった。


 キュラが困った顔をする。


 そして、記憶移動魔法に魔力を投じながら、姫様は旋毛を曲げながら言った。

「……! 時は一刻を争うの。もしフォライーが先に神玉を手にすれば」


「しかし、まだ、奴は神像の場所もわかっていないはずです。それに神玉は二つ揃わないと機能しないはず。一つはウィード様がもっていますし」


「いやよ」


「気持ちは判りますが、姫様、何卒、テアフレナと交代してくださいませ、お願いします」

 キュラが血相を変えて、必死に説き伏せようとした。

 しかし、キュラもテアフレナも歳が近く友達であろうと、姫様の意志は固かった。

 そのときだった。


 ファイも容体を察し、姫様の方を向き、横やりをいれた。

「イーミ姫様、俺からも姫様に休んでもらいたいです。疲れを癒してください」

 ファイも長時間移動で精神的に疲れていた。疲れで寝てる面子もある。


 ボンも居眠りだ。


 自分だけでなく、姫様は皆が疲れてるのにもきづいた。

 気づくと、すまなさそうな顔をし、ファイに向かって、姫様は言った。

「ふぅ、そうね、みんな疲れてるね。少しフレイアのアジトで休もっか。みんなのこと考えてなかったわ」


「いえ、そんな俺は疲れてるっていう意味で」

 その言った瞬間、後ろからレイティスが割ってはいり、ファイの口を手でふさいだ。


「……ぶ(ごぼごぼぉ、レイティス)」


「(バカ、疲れてなくても疲れてるにしてたらいいんだよ、そしたら姫様休むだろ)」

 レイティスは姫様に愛想笑いをし、ファイをそのまま連れて後ろの方へいった。


 ファイが口を塞がれ、もごもご一人何かをいっていた。


 エリューもそれを見計らい声音をあげた。


「私も少し疲れました」

 みんなは、面子がほぼ疲れてるという作戦で姫様を休まそうとしたのだ。


 その作戦は覿面だった。統括するもの、みなの心境を汲み取るものだ。

 姫様は少しトーンをおき、ほほ笑みながらいった。


「そうよね、空中ズット円陣の中で飛びっぱなしだったもんね。羽も伸ばせないし」

 いうと、姫様はぽんと手を叩いた。


「決めた。フレイアのアジトへいきましょ。そこで作戦会議よ。少しの時間だけ休憩しましょ」

「了解」

 キュラとファイがにこりと視線をかみ合わせた。


 そう、これは言ってもきかないとわかっていたため、キュラの作戦だったのだ。


 もし、休んでいなけば魔法の病気にかかる可能性も絶大だっただろう。

 そして、姫様はフレイア街に記憶移動魔法で飛んでいた状態から降りていった。





☆☆



 一行はフレイアの街に入り、裏道をずっと歩いていた。

「ついた、ここのヒールスって宿屋の裏階段をのぼれば、我らのアジトだ」

 そして、キュラを先頭に階段をのぼり、みなアジトへ入っていく。


「へぇ、結構なとこじゃねーか」

 ファイがアジトの割には、部屋がきれすぎることに驚いた顔で言葉を紡いだ。


 前を歩いていたキュラが感心したようにファイに返事をした。

「そりゃ、ファイ、一応宿屋だからな。私とテアフレナ、イーミ姫様、アザレ副将軍、それにウィード様に入ってもらって、進路を決める。お前たちはゆっくり部屋で休んでおけ」

「了解」

 そういうと各自、ベッドで寝たり、椅子に座ったり、おっさんは地べたに座り飲み物などをたしなんだ。

 しばしの、戦士の休息だ。


 だが、これから、激戦必至だったのだ。封印された魔神が甦ればとんでもないことになる。誰の目にもそれはわかっていた。




ファイたちがいないアジトの一室でウィードも交え、作戦会議が行われていた。


キュラ、テアフレナ、アザレ、イーミ姫たちがいた。


キュラが机に地図を広げ、指で場所を指さした。

「エトワル帝国にいくには、ここフレイアから北西にずっと進まねばならない」


「距離はありますが、山道を越さなくていいからフレイアからジグルドを経由してエトワル帝国に入るのはどうかと」

 テアフレナがそういった矢先だった。


 ウィードが神妙そうな顔つきで割って入ってきた。

「しかし、テアフレナさん、我が国の首都エトワルに辿り付くまで、どこからいっても、死の境界線デッドラインが二つ張られてある」

 ウィードの言葉にみな、懸念し、怪訝な面持ちになった。


 キュラがぼそりといった。

「デッドラインか、まずいな」

「おそらく、敵がでる」


「それも二回か。なるべく回避したいものだ」

 テアフレナの考察は間違いなかった。その推察にアザレも納得したような顔つきで答えた。


 イーミ姫がみなの重い顔つきを一蹴するように明るい声で軽やかに声音をあげた。

「ジグルド経由では距離があって遠回りよ。遅すぎるわ。キュラ、ストーム山脈を越しましょ。越してヴォルスング都市のアジトで休んで、エトワル帝国領に入りましょ」


「姫様ならそういうと思っていました。みな、それでいいな」


「御意」

 姫様の言葉は絶大だった。一言で、決まるというのも説得力がある人だったからか。

 姫様の考察力と、信望がうかがわれる。

 アザレが最後に答えると、地図をしまい、各自部屋を出て行った。



 

 そして、姫様が、ファイたちの前に現れた。作戦会議が済んだ一時間後のことである。


「みんないくわよ。テアフレナ、傷復瓶ヒールポーションはまだある?」


「ありますが、姫様まさか?」

 テアフレナは姫様のまさかの言葉に絶句した。自身を回復させ魔法に臨むのは推察できたからだ。


「体力と精神力さえ回復すれば大丈夫よ。私が移動魔法を唱えて飛ばすわ」

「しかし、姫様!」

「平気よ、みんな傷ついて血を流したりしてるのに、これくらいやらなきゃ」

 テアフレナの制止を姫様は聞かなかった。やり遂げたいという意志が強固だった。


 テアフレナはしばし、間を於き、しぶしぶ、ヒールポーションを渡した。


 その姫様がヒールポーションを飲んでいる様を見たときだった。


 ウォードは心配そうな顔でイーミ姫様に語りかけた。

「少しの間なら、大丈夫かと思います。フォライーはつい先日、レビ記を強奪したばかり。それほど遠くにはいっていないはずです。それに」

「破られたページに気づけば、もう一度、襲ってくると」

「はい、そうでしょうね」

 テアフレナの言葉にウィードが同調した。


 ウィードは丁寧な口調で優しく切り返した。みな、先行きに不安を感じていた。

 常に、デッドラインを通るという事は、死と隣り合わせだったからだ。










☆☆


遅い時間帯でも読んでくださっているかたありがとうございます。

物語として更新していくので読み物としてブックマークなどしていただけたらうれしいです。

よろしくお願いいたします。

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