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第九十七話 聖なる心臓



 敵を撃退した後、皆は、アジトに集まっていた。


 ウィードが何やら古い紙を懐から取り出してみせた。

「これがレビ記の破いたページです」


「なんてかいてあるんだ?」

 ファイが頭を抱えながら言う。


 みなの視線が破いたページに集まる。


 エリューが横やりをいれた。

「古代魔法文字ですね」

「エリュー読めるの?」

「はい、少しなら」

 そういい、ウィードから、破いたページを受け取った。


 ウィードも少しは読めるのだろうが、内容は知っている顔つきをしていたがいわなかった。


 そのときエリューの目がパチリと驚いて見開いた。

「えとですね、邪神バルバトスを……」


「バルバトス?」


「おそらく、フォライーがいってた魔神のことだな」

 ヒョウが腕組をし、壁に背中をもたれかけた状態でぼそりといった。


「『邪神バルバトスを聖なる心臓に封印したと。心臓の魔力を振り解くには二つの神玉が必要だ』とあります」


「心臓の魔力?」「二つの神玉?」「聖なる心臓?」


「一体、何のことだ?」

 一同がエリューの言葉に面食らって、驚愕していた。


 しばらく、沈黙が続いた。


 ウィードが黙っていた口を再び開いた。


「エトワル城の裏の山林の奥地に、我が一族の繁栄を讃えるレビ神殿があるのです。その神殿の書物だったのが、レビ記なのです」


 それをきき、ひとトーン置いて、イーミ姫様が重い口を開いた。

「なるほどね、それで帝国博物館にあったてわけね」


「そうなのです。その結界は僕が解いてしまいましたが、父に聞いたことがあるのです。レビ神殿には隠された部屋があると。その部屋には堕天使レビが自身の魔力で作り上げた神像があると。それに堕天使レビは、苦戦の末、邪神を封印し、その神像から心臓に魔力をこめ、二つ切り取ったと」


 ウィードは意味深な言葉を耽々と述べていく。


 テアフレナが考察し言葉を綴った。

「もしかすると、堕天使レビがそれに何か細工したのではないかと?」


「そうとも考えられます。何か細工を施しているのでしょうが、レビ記によれば、魔族が入れないくらい強力な結界が張られていると書いてありました」


「結界ね」

 イーミ姫様の顔が重い。


 かなり、厄介なことだと、みなに意識があるのだ。魔族が絡んでいるのには違いない。


 ウィードがしゃべりだした。

「我が一族に伝わる伝説なのです。ほんとかどうかはよくわかりません」


「で、二つの神玉ってのはどういうことだ? お前はなぜ魔剣を隠していた?」

 ヒョウがよいしょと壁にもたれていた態勢から腕組仁王立ちになってウィードの方を向いていった。


 ウィードは笑顔で切り返した。

「鋭いですね。書いている通り、神玉は二つあります。一つは、これ、ディスチャージ」

 いうと同時に魔剣フィンウィンドがウィードの手元に現れた。


 そして、ウィードは魔剣の柄の方を指さした。


「魔剣フィンウィンドの柄に付いている、目のような形をした装飾品の宝玉です」

「これがその神玉だというの?」

 イーミ姫様が頓狂な顔をする。


「はい、そうみたいです。子供のころから父に聞かされていたので父の話がほんとであれば、間違いありません」


「じゃぁ、もう一つの神玉はどこにあるの?」


「それが、わからないのです」

 ウィードが困った顔をした。


 イーミ姫様もあごに手をあて、黙って熟考していた。

 その矢先、エリューが言い寄ってきた。

「じゃぁ、フォライーが先にみつけて、ウィードさんの神玉を奪ってしまい、その神像の心臓に神玉で魔力か何かを付与すれば、もしかして?」


「そうです、封印していた邪神バルバトスが復活する恐れがあるのです」


「邪神バルバトス?」

「こわいダス―」

 レイティスとボンが、顔を見合わせて、嘆息をついた。

 ファイが不敵な笑みをみせた。

「どっちにしても、魔族が関わってる以上、やるしかねー、止めるぞ」


「そうだな、坊主、復活阻止だ」

 レギンとファイが意気込み、ぽんと手を叩きあった。


 この二人はこわいという感情がないのか。強いがゆえに挑戦的だった。

 そのときキュラがパンと手を叩き、士気を上げ、言葉を紡いだ。

「よし、そうと決まれば、明朝出発だ、エトワル帝国にいくぞ」

 キュラがはっぱをかけると、皆一様に構えた。


 続けてキュラがファイの方を向きいった。

「ファイ、それにみなのもの、今日は英気を養え」

 キュラがそういった矢先だった。

 アジトの角っこにあった小さな魔法陣がかかれた台から光りがでてきた。


 爺さんの容姿をしたボヤっとした光りがあらわになった。

 イーミ姫様があちゃ~と顔を手で隠した。

「あ、いけない、場所がバレたわ、サントス爺に」


「魔法電話か」

 テアフレナもニコリ笑った。


 そのぼやっとした光の人物、サントス爺が姫様に話し出した。

「姫様、政務をほっておいて、どこにいっておるのですじゃ」

「サントス様、すまぬ、私の一存なのです」

「テアフレナ様。しかし、政務が?」

 サントス爺は困った顔をする。


「やだもん、もう、朝から晩まで座って、書類にぽんぽん、印押して、サイン書くの何て」

 姫様は強調したいのか、ほんとに嫌なのだろうふくれ面をした。


 サントス爺が毎度のことなのか、頭を抱えた。

「姫様、国民のためです。やだもんではないでしょう」

「だって、肩こるんだもん」


「サントス、私の顔に免じて、許してくれ。魔族撃滅のためにも姫様の協力で、作戦を遂行している。これも自国の国民を守るためだ」


「キュラ大将軍がそういうなら。しかたありませぬな。安否確認ができればよいとのことです。こうはいっても王様は周知ですぞ」

 キュラの言葉にサントス爺も納得し言葉を控えた。


 そしてサントス爺は姫様の方をむいていった。


「政務は王妃様が代わりにしてくれるそうですじゃ」


「アリスマリア王妃様が。もうしわけない、サントス爺」

「キュラ様、テアフレナ様、その代わりしっかり、娘を守ってやってくれとのことですじゃ」

「ああ、任せておけ。心強い仲間もいる。な、ファイ」

「へっ」

 ファイは照れくさそうにし、笑った。


 サントス爺はトーンをおいて、またしゃべりだした。

「シルバ王様には爺よりちゃんと伝えておきますじゃ。それでは」

 そういうと、魔法電話は終わり、魔法陣が消えた。サントス爺の姿も当然ない。


 テアフレナが微笑み、イーミ姫に言葉を紡いだ。

「温かい王様と王妃様でよかったですね」


「過保護すぎるのよ。それに一日中、座るのは無理だわ」

「姫様らしいですね」

 エリューが明るい笑顔になり、笑った。


 姫様は皆をまとめる不思議な魅力がある。

 庶民的でなじみやすいのだろう。高ぶらないところもいいのかもしれない。


「よし、事は決まった。明日出発だ」

「おー」

 キュラの言葉をみな胸に秘め、歓声があがると、皆、自身の英気を養った。


 そして、眠りについた。果たして二つの心臓とは、バルバトスとは? 






魔族が関わっている以上、熾烈を極めるのは誰の目にも映っていた。








☆☆


遅い時間帯でも読んでくださっているかたありがとうございます。

今日はまだアップします

物語として更新していくのでブックマークや感想していただけるとうれしいです。


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