第九十六話 レビ記、強奪
ウィードが段平を裏返した。
「貴様ら、許さないぞ、大勢の人たちを魔神バルバトス復活のために私欲で巻き込んで」
始まった。ウィードが間合いを詰めるべく、地をけたたましく蹴った。
「いけ、風魔弾」
魔剣フィンウィンドの刀身の切れ目から、先のとがった銃弾のような金属が幾本もでてきて、瞬時にデステールビーに向かっていく。
「(風の魔剣士だったか、なんだあれは剣から銃弾のようなものが、がは)」
ヒョウは意識が朦朧としながらも、片目で、ウィードを見遣り、意識を失った。
ニミュエはまだ、他の人を介抱している。ヒョウの毒の回りが遅ければいいが。
助けるのが早ければポイズンプリズナーが残っていれば見込みはあった。
ウィンドブリッドはデステールビーに八発ほど全て命中した。
デステールビーが大きく咆哮をあげた。当たった箇所から体液が吹き飛んだ。
「ぐはぁ、猪口才な、笑止この程度で我が装甲は貫通出来ぬぞ!」
「わかってないな、僕の狙いはそこじゃない」
「なに?」
デステールビーが妙な顔をした。
「風魔弾よ、風を起こせ、ブレイク!」
「があああー、何? 弾から突風が!」
なんと、ウィンドブリッドが破裂し、そこから、ウィードの術なのだろうが、凄まじい勢いの突風が出でた。
勢いが強く、その場に立っていられないほどだ。
その突風で鱗粉も吹き飛んだ。まだ二つは破裂せず刺さったままだった。
「これで、毒霧は使えないぞ」
ひとトーン置き、ウィードは躊躇している、ニミュエの方を向き直り、急いでいった。
毒霧が使えない今が助けるチャンスだ。
「早く助けないと、ニミュエさん早く」
「うん、わかった」
ニミュエはこくりと頷くと、倒れてるみなにポイズンプリズナーを一滴ずつ飲ませようと羽を飛ばした。音速で飛んでいく。
ウィードの怒りは頂点に達していた。
「まだ、皆を痛めつけた罪は重いぞ、いっきに肩を付けてやる、この蜂めぇッ」
いうと同時にウィードは蜂の真正面から突っ切っていった。
デステールビーは動こうとするが、破裂したウィンドブリッドから未だに突風がでているため、羽を動かせて飛ぶのもままならない状態だった。
「しまった、風速で飛ぶのが制御できん」
デステールビーに死角ができた。これを見逃すウィードではなかった。
真っ向からウィードは間合いを詰めるように向かってくる。
「小童め、毒の尾をくらえ」
デステールビーは焦り、対抗で全身に今ある全ての毒の尾をウィードに発した。
毒の尾がクジャクの羽根のように扇状になってウィードを襲った。
スピードは可也のものだ。
ウィードは不敵な笑みを見せた。
「わかってないようだな、何故、僕が二つウィンドブリッドを残していたか」
「飛べ、ウィンドブリッド!」
ウィードは風の紋章を光らせて、拳をギュッと握った。
「何、刺さっていた弾が、まさか」
なんとデステールビーに刺さっていたウィンドブリッド二つが自在に動き身体から抜け落ち飛んだ。
その弾は瞬時にウィードを襲おうとしている、毒の尾に向かった。
この一連の模様をエリューが固唾を呑んでじっとみていた。
「(すごい、あの人、意思で操ってるみたい)」
「よかった、エリューさん意識が」
ニミュエがエリューにポイズンプリズナーを飲ませたところだった。
助かり、息を吹き返し、ニミュエに安堵の色がみえた。
毒の尾がウィードを確実に捉えようとしていた。もう間合いがない。
「その程度のスピード、音速の僕には敵わないぞ」
そういい、ウィードは素早く宙を舞った!
その瞬間ウィードが念じると残りのウィンドブリッドが思い通りに動いていく。
「いけぇ、風の弾よ! 風斬烈」
瞬時にウィンドブリッドから風の牙が巻き起こり、デステールビーの毒の尾を全て斬った。
斬った尾は地に落ち、体液がその場に広がった。
今の状況、デステールビーは毒の尾を斬られ、手足以外丸裸だった。
「なに、毒の尾っぽを斬っただと?」
死蜂人形は動揺の色を隠せなかった。その上に、ウィンドブリッドの効力が続き、突風が巻き起こっているため飛べなかった。
焦りの色が色濃く映った。
フォライーがこの模様を空中に浮き、じっと睥睨していた。
「ほぅ、ウィードめ、飛び道具か」
「おのれぃ、もう一度毒牙で!」
「遅い、風の塵となれ! 吹き飛ばしてやる」
デステールビーが毒の尾を発生させるよりも速く、ウィードは動いていた。
デステールビーの頭上に舞い降りた!
「風魔斬!」
次の瞬間、魔剣フィンウィンドから、莫大な風のエネルギーが集り放たれ、それは見事にデステールビーの身体を両断していた。
地に体液が広がっていく。
風の作用もあり、ズタズタにみじん切り状態だった。
かまいたちとでもいうべきか。
「ぐはぁ、こんな馬鹿な。禁獣魔法で生まれし、我が……」
このウィードの大技の一撃が、勝機を決した。
ドロットした声でデステールビーはいうとその声は二度とその場には響かなかった。
禁獣魔法で生まれし、超越した生命体の最期だった。
「最後に、お前への賛辞だ。風と共にお前の身体を塵として流してやる」
ウィードがそういい、拳を握ると、風が巻き起こり、死蜂人形の身体が風の力で塵と化して空に流れて行った。
もうこの世に、死蜂人形、デステールビーはいない。
そのときだった。
「くはは、誤算だな、ウィード!」
「しまった、それは」
ウィードが悔しそうな顔で空を見上げると、フォライーが手にレビ記をもっていた。
恐らく攻撃した時に懐から落としたものと考えられる。
ちょうど、死蜂人形のいた場所の近くだったからだ。
「レビ記はもらったぞ、くはは、バルバトス様復活じゃ」
フォライーは高らかと手を上げ、哄笑を響かせた。
しまったと、その場にいる誰もが思い、目を凝らせた。
「くそ、さっき攻撃した時に落としたのか、貴様、それをよこせ」
「このぉ」
ファイが魔剣をフォライーに放り投げた。
しかし、クリーンヒットすることなく、フォライーは瞬時に消え、また姿を現せた。
「フハハ、威勢のいいことだ。だが、もう、お前たちに用はない、さらばじゃ」
そういうと、瞬時にその場から、フォライーは消えた。
「くそ、奪われた」
ファイが悔しそうな顔をする。
「ふぅ、乗り切りましたね」
「ウィードさん乗り切ったって、奪われたじゃないですか、重要なレビ記を」
エリューが頓狂な顔をして言う。
「大丈夫ですよ、こういうときのために、もしもと想って、復活の手法や、復活素材をかいてるページは僕が破いておきましたから」
そういい、破いたページをウィードは服から取り出してみんなに見せた。
「へぇ、結構、大人しいのに周到ね」
「ええ、まあ、はい。でもよかった、みなさんにポイズンプリズナーがいき渡ったみたいですね」
イーミ姫様の答えに、ウィードも愛嬌をもって返し、懐にまた破った紙をしまった。
「もしも、ウィード様のポイズンプリズナーがなければ、俺たちはここで全滅だった」
「ありがとよ、ウィード様」
レギンとファイがいう。
「いえ、そんな大したことではないので、頭を上げて下さい。ただ、僕は解毒魔法が使えないのでもっていただけですので」
「おい、ウィード様よ、俺たちにそのレビ記の端材に書かれてあることを話せ。これからのためだ」
ヒョウが重い重厚な声で言う。説得力がある。
ウィードが顔色を曇らせた。
「それは……」
「ウィードさん、話してくださる? 私たちもそうしてくれないと力になってあげれないわ」
「わかりました」
イーミ姫様の問いに納得したのか、ウィードは明るく返事をした。
だが、このページに書かれてあることが実践されればとんでもないことが起こる。
誰の目にもそれが予兆として映っていた。
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遅い時間帯でも読んでくださっているかたありがとうございます。
今日はまだアップします。
おつかれさまです。
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