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幻想怪物討伐組織  作者: 眼鏡 純
1話:『初陣』
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 十刃、麗華、綾、凛之介が二頭目のミノタウロスを撃破した時、

「あんた等!そっちに牛はんが行きましたえ!」

最後の一頭である大剣ミノタウロスと戦闘していた天星が四人に叫んだ。四人が叫ばれた方向を向くと、警告通り大剣ミノタウロスがこちらに突進してきていた。四人が散開して回避するが、大剣ミノタウロスは四人に全く意を介することなく、消滅しかけている棍棒ミノタウロスの元に近付き、むしゃむしゃと食い始めたのだ。十刃達はミノタウロスの捕食を見ながら合流する。

「共食い?ミノタウロスにそのような習性、聞いたことありません。」

一度目を通した資料は忘れることはないと自負している霧宗でさえ、目の前で起きている状況は知らないようだ。

「流石に見続けると気持ち悪いわぁ……」

気分が悪くなった天星が視線を逸らす。

「てかよ!別に牛野郎の食事が終わるのを待つ必要はねぇだろ!食ってる間にぶっ倒してやるよ!」

凛之介は金属バットを構えると、共食い中のミノタウロスの背後に向かって走り出し、背中に強力な一撃を喰らわした。しかし、ミノタウロスは全くダメージを受けた素振りは見せず、無我夢中で同族を食らう。

「伍峠凛之介の攻撃がノーダメージ…あのミノタウロス、かなり防御力が上がっている。」

麗華が冷静に敵の状況を分析する。

「凛之介君!一度戻ってこい!嫌な予感がする!」

綾が自分達の所まで後退するように指示する。

「もう一発喰らわしてからな!」

凛之介は綾の指示を無視し、もう一度攻撃するべく金属バットを構えた。だが次の瞬間、共食いを終えたミノタウロスが、想定外の速さでグルッと体を反転させてきた。

「げっ…!」

既に攻撃態勢となっていた凛之介は、防御も回避も間に合わない。案の定ミノタウロスに筋肉質の腕に薙ぎ払われ、地面を転がった後に仰向けで倒れた。

「ヴモォオォォォォオオオ!」

真っ赤に染まった目で十刃達を睨みながら雄叫びを上げるミノタウロス。雰囲気から分かる──パワーアップしたと。

ミノタウロスは大剣を構えると、十刃達の方へ突進してきた。

「足を止めます!」

霧宗がファンタジーマタールである『弓』の弦を引くと、弓本体から放たれた粒子が矢の形となり、自動でセットされた。そして迫るミノタウロスに怯むことなく、冷静にミノタウロスの左脛を貫いた。しかし、ミノタウロスはその突進を止めることはなかった。

「これは暴走していますね…」

止まる気配がないミノタウロスを見て、霧宗が白フレームの眼鏡をクイッと上げる。

「とにかく一旦避けるぞ!」

綾の合図で、十刃達は散開してミノタウロスの突進を回避する。すると麗華が回避と同時にガンソードの引き金を引いて銃弾を放つ。しかし、ミノタウロスが銃弾を大剣で防ぐというまだ知能が残った行動で防御してきた。

「あてが動きを止める!」

天星がファンタジーマタールである『鞭』に雷を纏わせると、ミノタウロスの右腕に巻き付けた。雷はミノタウロスの全身に走り、少し動きを鈍らせた。

「十刃君!合わせてくれ!」

「ああ!」

綾と十刃の二人は動きが鈍ったミノタウロスに走り出す。ミノタウロスは二人に攻撃するべく大剣を振り上げるが、天星が雷の鞭のせいで動きが鈍い。

「わざわざ攻撃しやすくしてくれて感謝するぞ!」

綾がファンタジーマタールである『薙刀』を構えると、刀を構える十刃と共にミノタウロスの懐に入り込み、クロス攻撃でミノタウロスの腹部にバツ印の傷を負わした。

「ヴモォォオォオオオオオオ!」

今の一撃で怒りが増したミノタウロスは、痺れる体で無理矢理暴れたことにより、鞭の拘束が解かれてしまった。綾は薙刀で防いだものの、暴れるミノタウロスの腕に当ってしまい吹き飛び、地面に仰向けに叩き付けられてしまった。そんな綾に狙いを定めたミノタウロスが、綾に向かって大剣を振り上げた。

「させません!」

「させない!」

その動きを止めるべく、霧宗が右の手首を、麗華が左の手首を撃ち抜いた。

しかしミノタウロスの攻撃は止まらず、大剣が綾に向かって振り下ろされた。大剣は地面に接触すると同時に大きく土煙を舞い上げる。

「綾!」

十刃が視界を奪う土煙に向かって綾の名前を叫ぶ。すると数秒後、綾を抱きかかえた凛之介が土煙の中から現れたのだ。

「はぁ…!はぁ…!たく…全身打撲の奴に運び屋させるんじゃねぇよ!」

片膝を立てて座り込む凛之介が、女の子座りをする綾に怒鳴る。

だが決して本心ではない。恐らく凛之介並みの助言なのだろう。

「すまない凛之介君、感謝する。」

綾は薙刀を支え杖として立ち上がり、自分を助けてくれた凛之介に礼を言う。

「やるやん凛之介はん!見直したで!」

天星が座っている凛之介の頭を手でバシバシ叩く。

「いてっ!いてっ!いてぇよもう!」

凛之介は天星の手を振り払いながら立ち上がる。からかい終えた天星は満足気の顔をしている。

「ふざけている場合はありませんよ。この間も緋雀と壱桜が戦っているのですから。」

霧宗が向ける視線の先では、十刃と麗華がミノタウロスと対峙している。

「綾はん動ける?」

「大丈夫です。」

天星の問いに、綾が薙刀を構えながら答える。

「皆!そっちに行ったぞ!」

その時、十刃が綾達の方にミノタウロスが接近していることを知らせた。

「私が動きを止めます!」

霧宗は粒子の矢を迫ってくるミノタウロスの足元に突き刺した。すると粒子の矢が輪に変形された。そしてミノタウロスが粒子サークルの真上に来た瞬間に縮小し、両足を拘束した。急に両足の自由を奪われたミノタウロスは俯せに倒れる。

「耐久はそんなにありません!今の間に総攻撃を!」

「合点だ!」

最初に動いたのは凛之介。金属バットを構えると高く跳び上がり、空中から渾身の一撃を後頭部に喰らわした。

「あてもいくで!」

次に動いたのは天星。炎を纏った鞭を巧みに操り、連続でミノタウロスの闘牛の頭を叩いた。

その時、粒子サークルの拘束が破壊され、ミノタウロスが俯せの状態から立ち上がろうとした。しかし、凛之介と天星の攻撃がかなりダメージとして蓄積されていたらしく動きが悪い。

「立たせるか!」

「止める!」

次に動いたのは綾と麗華。麗華が体を支えている左腕を剣型に変換させたガンソードで、綾が反対の右腕を薙刀で切り裂いた。それによりミノタウロスはまた俯せに戻された。

「止めだ緋雀十刃!」

麗華が空を見上げ、高く跳び上がっていた十刃の名を叫ぶ。

「はぁぁぁぁああああああ!」

十刃は刀の刃で俯せに倒れるミノタウロスの喉を貫いた。それが決定打となり、ミノタウロスはその姿を消滅させた。勝利を確信した十刃達は、全員一度UFを解除した。

「はぁ…はぁ…あぁ〜!終わったぁ〜!」

凛之介が大きく溜め息をついて緊張から体を解放させた。

「残念ながらミノタウロスは作戦のメインターゲットではありませんので、作戦は続行されます。」

白フレーム眼鏡をクイッと上げる霧宗が無慈悲に現実を告げる。

「早く本戦に戻る。皆、急いで。」

早くも移動を開始しようとしている麗華。

「待つんだ麗華。今のまま作戦を再開したら無駄に傷を負う可能性がある。少しだけ休憩をしよう。」

綾が提案すると、

「……代理指揮官がそう判断するなら従おう。」

麗華は素直に従った。

「じゃあちょっと休憩。あて、体の傷に効くお茶持ってきたでぇ。」

丁度良い大きさの岩に腰掛けた天星が水筒と人数分のコップを具現化させると、皆にお茶を配った。


【麗華・綾・凛之介・霧宗・天星:『好感度1UP』】


 天星のお茶で一息ついたドライアド討伐班は、バイクで森の北側へと移動し、侵入するタイミングを伺っていた。すると森の中が騒がしくなり。グリフォンの鳴き声が聴こえてきた。

「向こうがグリフォンと接触したようだな。皆、準備は良いな?」

すっかり代理指揮官が板についてきた綾が、他のメンバーに確認をとる。すると残りの五人が頷いた。


殿(しんがり)を務める→N─1へ〕


〔先陣をきる→N─2へ〕

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