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幻想怪物討伐組織  作者: 眼鏡 純
3話:『覚醒』
172/176

H─7

 「霧宗…なのか…」

十刃は自分の前に立つ男性の名前を呟く。

 茶色の瞳は灰色の猫目となり、目の周囲に血管が浮かび上がっている。灰色で無造作の髪は艶やかな茶色へと変色していおり、左手の甲に埋め込まれているUFの周囲も血管が浮かび上がっている。そして力が体の内から溢れんばかりに出てきて、人智を超える動きが容易いレベルであった。


──この力、『覚醒』であった。


 「貴様、蚩尤だな。我々の仲間の魂、返してもらうぞ。」

霧宗が弓を構え、力を込める。

「汝、我カラ魂ガ解放サレテイタノカ。」

憤怒に満ちる顔で、蚩尤が霧宗に話しかけてきた。

「そうだ。貴様の中は気が滅入る空間だったよ。だから、早く他の者達も解放させてもらう!」

次の瞬間、霧宗は素早く粒子の矢を番える。放たれた粒子の矢は途中で雷を纏うと、鎧を全く意に介さず、蚩尤の右横腹を貫いた。霧宗は貫けることを確認すると、連続で雷粒子の矢を放ち、蚩尤の全身を貫いていく。

「グッ…!オノレェェェェェェ!」

全身の傷から血を噴き出しながら、蚩尤は怒りに任せて戈と戟を振り回してきた。霧宗は的確に攻撃の隙間を見抜いて回避し続ける。そして回避途中で、風属性を纏い切断力を高めた粒子の矢を二本放ち、蚩尤の両足を貫いた瞬間に切断した。

「ヴォッ…!」

蚩尤は両足が失ったことにより、ズシンと重い音を立てて四つん這いになった。

「一気に仕留める!」

霧宗が足を切断した矢を放ち、蚩尤の首を刎ねようとした。

だが次の瞬間、蚩尤の身体中の傷から突如どす黒いオーラが禍々しく出始めた。霧宗の放った矢はどす黒いオーラによって防がれてしまった。

蚩尤はどす黒いオーラで全身の傷を塞いでいくと、切断している足、腕をオーラで形成すると、ゆっくりと立ち上がる。すると持っている全ての武器をその場に捨てた。

「ヴモォォォォォォォォォオォオオオ!」

耳を押さえたくなるほどの咆哮をすると、兜と鎧が砕け散り、代わりに筋肉が膨張し、身長が五メートル以上となった。そして己から放つどす黒いオーラで、六つ全ての武器を作り出すと、自身の周囲に浮かばせた。

「真の力…と言ったところか。」

霧宗は動揺することなく、弓を構える。

「ヴオォォォォオォォォォォォォーー!」

また咆哮をする蚩尤に、殆ど自我は残っていないようだ。そしてもう一度咆哮をした瞬間、周囲に浮かぶ武器の中、弩以外の五つの武器が霧宗に向かって飛んできた。霧宗は剣や矛などの攻撃を回避し続け、反撃の隙を伺うが、なかなか隙がなく防戦状態となってしまった。

(一か八か…!)

このままではジリ貧だと判断した霧宗は、一か八か舞う武器の中、粒子の矢を番えて蚩尤の眉間に放った。蚩尤は巨大な盾で弾丸を防いだ後、そのまま霧宗に突進させた。霧宗は巨大な盾の突進を避けきれず、衝突されて吹き飛んでしまう。

「くっ…!」

霧宗は空中で一回転してから着地するが、ダメージが大きく片膝をついてしまう。

「殺ス…汝ヲ…殺ス…!」

僅かに残った自我──殺意に従う蚩尤が、真っ赤な四つの目を霧宗に向ける。

(どうする…勝機がないぞ…)

霧宗は一分も経たない戦闘で歴然の力を味わい、頭の中にネガティブな思考が過った。




 青い空を飛ぶ一台のヘリコプターは、後ろから鴆に追いかけられながらも、ナンバーズがいる島へと向かっていた。

「ほらほら!もっと速くしないと追い付かれるよ!」

ヘリコプターの後部座席に座る、緑色のポニーテールにオレンジの瞳、白衣を身に纏い、茶色のフレームの眼鏡をかけた二十代後半の女性──『科楽(かがく)理香(りか)』が、何処か楽しそうにヘリコプターの操縦士を煽る。

「分かっている大人しく座ってろ!」

三十代後半のベテラン操縦士は必死にヘリコプターを操作しながら、後ろから煽ってくる理香に命令する。理香は口を尖らせてブーブー言いながら、素直に後部座席に座った。

「待っててね皆、最高の手土産用意したから。」

理香はグヒヒと笑いながら、島に到着するのを待つことにした。



 「死ンダ…?死ンダ…?死ンダ…?」

蚩尤が残り僅かの自我で、足元に横向きで倒れる、身体中ボロボロの霧宗を見下ろし、死んでいるかどうか確認している。

(くそ…力が…)

逃げなければ殺される──そんなこと頭で理解している。だが、体が動いてくれない。加えて心臓が鼓動を打つ度に痛みを生じる。これは十刃の覚醒が切れてしまった際と同じ症状、つまり霧宗も覚醒が切れてしまっている。

「生キ…テル?生キテル…生キテル!」

蚩尤は霧宗がまだ息をしていることに気付き、己の拳を振り上げ、止めを刺そうとした。その時、背後からロケットランチャーが直撃し、大きな爆発が発生する。その爆風によって霧宗は少し飛ばされてしまったが、結果的に蚩尤と距離が空くこととなった。蚩尤は少し焦げた背中をそのままに、ぐるっとロケットランチャーが飛んできた方向に体と視線を向ける。

「ちっ…ロケラン直撃して傷一つなしかよ…」

ロケットランチャーを発射した当人である十刃が、全くダメージを受けていない蚩尤に舌打ちをする。

「我ヲ…傷付ケシ汝…殺ス…!」

蚩尤の標的が十刃に変わる。

(保ってくれよ…俺の体…!)

十刃はUFを起動し、更に覚醒状態となる。そして人智を超えし速さで蚩尤との距離を一瞬にしてなくし、一本の腕を斬り落とした。しかし斬り落とされた腕はすぐにどす黒いオーラで義手を作られ、そのまま十刃を殴り飛ばした。吹き飛んだ十刃は空中で体勢を戻そうとするが、上手く動いてくれず地面に転がった。

「くっ…!」

十刃は直ぐに立ち上がると、頭上に気配を感じ、咄嗟に前にダイブした。すると頭上から剣が振り下ろされ、間一髪で回避する形となった。しかし安堵するのも束の間、他の武器を一気に攻撃を仕掛けてきたので、防戦一方となってしまう。そして正面から突進してきた矛を刀で弾いた際、左肩を擦ってしまい、大きな傷を負ってしまった。

「ぐっ…!」

十刃は痛みを堪えつつ、最後の力を込めて地面を蹴り、蚩尤の首を撥ね飛ばす勢いで急接近した。しかし巨大な盾によって攻撃は防がれ、怯んでいる間に蚩尤に殴り飛ばされた。飛ばされた先には霧宗が倒れており、気を失っているようだ。

「殺ス…!二人共…殺ス!」

蚩尤が二人に迫ろうとした時だった。顔面にロケットランチャーが直撃し、数メートルほど吹き飛ばされた。

「おー!流石最新型のロケットランチャー!威力が段違いだねー!」

新しいロケットランチャーの爆発力に大満足しながら現れたのは、科学理香であった。


──時は少し遡り、十刃が二度目の戦闘に入った頃の上空。

「あっ!見つけた!私はこのまま降下するから君はあの鳥達を引き付けてね!」

双眼鏡で十刃達を発見した理香が、操縦士に指示をしつつ、ヘリコプターの後部座席で降下準備を始める。

「ミイラ取りがミイラになるなよ!」

操縦士が降下準備中の理香に釘を刺す。

「私ただの科学者から有り得るかもね♪もし死んじゃった時はちゃんと壮大にお葬式してね♪」

パチッ♪とウインクをしてから、理香はヘリコプターのドアを開け、躊躇なく空へダイブした。一人残された操縦士はハァと溜め息をついてから呟いた。

「何がただの科学者だ。俺はお前が入隊する前からいているんだぞ。──科学理香、狩人(カサドール)として幻想怪物を討伐していた時代、数多の爆発系の武器を駆使して討伐する姿から、『爆破姫(ばくはひめ)』として名を知られていた女が、そんな奴が早々死ぬかよ。」

呟き終えた操縦士は、追い付いてきた鴆の群れから逃げるのであった。


──時は戻る。

 理香は蚩尤の前に立つと、片手で三つの手榴弾を器用に回しながら話しかける。

「さてさて牛さん、ちょっとの間待ってくれないかな?」

「殺ス…我ヲ傷付ケル者…全テ殺ス!」

蚩尤は一切聞く耳を持たず、二本の腕で理香を鷲掴みにしようとした。しかし、掴んだのは三つの手榴弾だけであった。

「ありゃりゃ?もう自我が残っていない感じか。なら、力づくで時間を作らせてもらうよ。」

軽業で蚩尤の頭の上に乗った理香は、持っている三本の細い糸を引いた。すると糸が結ばれている手榴弾のピンが引き抜かれ、蚩尤の掌の中で爆発した。

「グオッ…!」

蚩尤が吹き飛んだ腕をどす黒いオーラで作り出している間に、理香は蚩尤の周囲に黒い粉を撒き散らして距離を空けた。そして火を付けたライターを投げつけると、蚩尤の周囲を舞う黒い粉──火薬に引火して爆発を発生させた。蚩尤は全身を焦がしつつ黒い爆煙の中から出てくると、音もなく出現していた無人戦車に主砲を向けられていた。

「じゃっ♪バイバイ♪」

戦車の上に立つ理香がウインクをした後、持っているボタンをポチッと押した。すると戦車が主砲を発射し、蚩尤に直撃させると、爆発によって何百メートル先に吹き飛ばした。

「よし、今の内に♪」

理香は蚩尤とかなり距離が空いたことを確認すると、戦車をチップ化させてから気を失っている十刃と霧宗の元へ急いで駆け寄った。そして二人の近くで屈むと、ある液体が入った二本の注射器を具現化させ、二人の腕に注入した。すると二人の傷がみるみる癒えていき、全回復した二人はパチッ!と目を覚ました。

「おっ!気が付いたね♪成功して良かったよ♪」

目の前でご機嫌に笑う理香と、自身のダメージが全回復した現状に、十刃は頭がついていけず、呆然とした顔で理香を見詰める。

「あっ、『自分に何をした?』って顔してるね。時間がないから簡単に説明するけど、君達二人に注入したのは字ちんが持ち帰ってきた『酒呑童子の酒』をベースにした回復薬さ。回復効果は今体験している通りね。私は他の連中の回復に向かうから、あの牛さんのことは頼んだよ。」

理香は二人に蚩尤を託すと、先に上空から他のナンバーズを見つけていたらしく、平山へ直行した。


 十刃は隣に立つ霧宗と向かい合うと、無言で頷き、こちらに向かってくる身体中どす黒いオーラで再生されている蚩尤に視線を向けると同時に、覚醒状態となった。

「いくぞ霧宗!」

「無論です!緋雀!」

二人は同時に地面を蹴り、蚩尤に接近する。

「ヴォォォォォォォォォォォォオ!」

遂に自我を失い、ただ目の前の生物を殺すだけの獣と化した蚩尤が咆哮をすると、周囲に浮かぶ六つの武器が十刃と霧宗の迎撃に向かった。

「全快になった俺達を舐めるな!」

十刃は振り下ろされた巨大な剣に対し刀を振り上げ、真っ正面から応戦した。すると剣の方に亀裂が走り、バラバラに砕け散った。その隣で霧宗は頑丈な地属性粒子の矢を矛の切っ先にヒットさせて矛の刃を砕いていた。そんな二人に対して、蚩尤は弩でどす黒いオーラで形成された矢を連続で放つ。しかし体力全快覚醒状態の二人に、ただの乱れ撃ちなんて当たることはなく、蚩尤の目の前まで到着した。

「ヴォォォォォォォォォォォォオ!」

蚩尤は残り四つの武器を使い二人を殺しにかかる。十刃と霧宗は見事なコンビネーションを駆使して応戦し、戈、戟、弩を破壊する。そして最後の盾を破壊した時、蚩尤が二人に殴りかかった。十刃と霧宗は蚩尤からの攻撃を防御すると、くるっと空中で回転してから同時に着地する。そして十刃は、刀を鞘に納めた。

「これで終わりだ蚩尤!」

「我々の仲間の魂!返してもらうぞ!」

霧宗は、通常の矢より二倍の大きさの雷属性粒子の矢を放ち、蚩尤の心臓を貫いた。そして十刃は全ての力を込め、蚩尤に居合いの一撃を喰らわした。

「ヴッ…!ヴォォォォォォォォォォォォオ!」

二人の攻撃が致命傷となり、苦しみの咆哮をあげる蚩尤の体がどんどんと消滅していく。そして二人が見守る中、蚩尤はその姿を完全に消滅させた。

「やりましたね、緋雀。」

霧宗がクイッと白フレーム眼鏡を上げてから十刃に手を差し出す。

「ああ。」

十刃もニッと口角を上げなら手を差し出し、二人は握手を交わして喜びを分かち合った。そして二人は覚醒が切れ、体から一気に力が抜けて倒れて、そのまま気を失ってしまった。


 気を失っている二人の元に、魂が戻ったナンバーズと面々と理香が駆け寄ってきた。

「おい理香、二人にさっき俺達に注入した薬を注入してやれ。」

字史が理香に命令すると、理香は首を横に振った。

「この二人には既に注入しちゃっているの。三日以内に指定した使用量を越えて注入した場合、副作用で廃人化する可能性があるの。だから次に二人へ注入出来るのは三日後だね。」

「…そうか。ならばこの二人を運ぶしかないな。」

ナンバーズと理香は、気を失っている二人を運びつつ、この島に上陸する際に使用した船の方へ戻り、全員で島を脱出する。そして二人を休ませるため、キオワナ地区基地内の病室へと向かった。



 島から離れていく船を、平山の山頂から一人の男性が眺めていた。三十代半ばで、マダムにモテそうなワイルドチックな顔つきである。だが目を引かれるのは、紅色の髪の間から生えている二本の鬼の角であった。しかしそれ以上に目が引かれるのが、背中に背負っている自分の身長とほぼ同じ長さの瓢箪であった。

「己が絶望から脱するための術があるのならば、たとえその方法が他人の命をどれほど奪おうと実行する。それが人間の底なしの欲望。」

そう呟いた時、脳内に透き通った美しい女性に似た声が響いた。

(『酒呑童子』、またあなたは人間に化けて勝手な行いをしていますね。)

「俺がどうしようとお前には関係ないだろ、『フェニックス』。」

男性の正体は、三大幻想怪物の一体──『地帝鬼(ちていき)の酒呑童子』であった。そしてそんな酒呑童子にテレパシーをしてきたのは、酒呑童子と同じ三大幻想怪物の一体──『空妃鳥(くうひちょう)のフェニックス』であった。

(ですがその身勝手な行動で、今後面倒な事になる可能性もあるのですよ。)

「知れたこと。俺はもっと欲望に溺れる人間を見たいのだ。止めるつもりはない。だからもうテレパシーをしてくるな。」

酒呑童子は一方的にテレパシーを切ると、船が消えていった水平線を眺め、

「人間の底なしの欲望…これほど面白い玩具はなかろう。」

狂った笑みを浮かべた後、その場から音もなく姿を消した。



 「ん……」

十刃が目を覚ますと、そこは病室のベッドの中であった。徐に顔を横に向けてみると、そこには隣のベッドで自分と同じ状況の霧宗の姿があった。暫くボ〜ッと眺めていると、霧宗が目を覚まし、こちらを向いてきた。

「おはよう霧宗。」

十刃が挨拶すると、霧宗がギッと睨み付けてきた。いきなり睨み付けられたことに十刃はビクッとする。霧宗は三秒ほど十刃を睨み付けた後、ようやく睨むのを止めた。

「ああ、緋雀でしたか。すいません、眼鏡がないので誰か分かりませんでした。おはようございます。どうやら私達はまた倒れてしまったようですね。」

「そ、そうみたいだな。まぁあんだけ無茶なことしたんだし、当然の反動だな。」

十刃は睨まれた理由が分かって安堵しつつ、ハハハと笑う。だが霧宗は特にリアクションをすることなく、白い天井に視線を向けた。十刃も同じく天井に視線を向けると、病室内には時計の針の音だけが響いた。

(……気まずい空気…)

十刃は病室内を包む無言の空間に耐えきれなくなってきた。

(何か話題になるものは……)

十刃は一分ほど考えた後、一つ話題を思い付いたので、早速話しかけることにした。

「霧宗ってさ、何で世界の希望(ワールドエルピス)に入隊しようと思ったんだ?」

「……この場で話す必要ですか?」

話す理由を尋ねる霧宗。

「いや、ちょっと無言の空気に耐えられなくって。別に話したくないなら良いよ。」

「……まぁ私も何か話すことを考えていましたので…いいでしょう話しますか。」

霧宗は話の少し考えた後、自分の入隊までの過去を語り始めた。




 私は様々な知識を得るのが好きな子供でした。そのせいで私は周囲から『物知り博士』と呼ばれていました。ですが私の『物知り』は、図鑑の内容を覚えているや、小学生が高校生の内容を知っている程度の物知りではありません。私は得た知識を頭の中で組み合わせ、論理的に話を展開させたり、新たな考えを生み出したりしていたのです。そんな子供だったため、私は世界の世界の希望(ワールドエルピス)に入隊するまでは学者をしていました。ですが、どれほど新しい理論を発表したとしても、若き学者が活躍するのが気に食わない老害どもが、私の意見を全く通してくれなかったのです。

 そんな状況に嫌気をさしていた時、私に世界の希望(ワールドエルピス)から、「あなたの知識を人類勝利に貢献しないか。」と、スカウトが来たのです。環境を変えたかった私はすぐその話に乗り、世界の希望(ワールドエルピス)に入隊した。

 入隊した私はその日から、過去のありとあらゆるデータを読んで記憶し、様々な戦法を考え、人類勝利に貢献しました。

 この世には膨大な知識が溢れています。まるで己を包む濃霧のように。私はそんな濃霧の中心にある確かな知識を得るため、私は日々新たな知識を蓄えています。




 「……というのが、私の入隊理由です。」

霧宗が入隊の理由を話し終えた。

「なんか流石は霧宗って感じだな。」

十刃は霧宗の知識量のルーツを知って、なんだか納得した。

「私は私の知識が少しでも人類勝利の糧になることを望んでいるし、私自身の喜びでもある。緋雀も、自分が誇れる能力を見つけ、それを鍛えることをお勧めしますよ。」

霧宗からアドバイスを受けた十刃は、素直にそうだなと笑って返事をした。

そして二人はまだ疲れていたらしく、一度眠りにつくのであった。

 三日後、十刃と霧宗には酒呑童子の酒ベースの超回復薬が注入され、無事に完全回復することが出来た。そして誰も欠けることなく、全員アズマキョウへと帰還した。

その翌日、早速十刃には新たな任務が言い渡された。

「はぁ…もうちょっと休ませてくれてもいいだろ…」

いつものカジュアルな服装を身に纏う十刃が、ハァと大きな溜め息をつきつつ、円柱型の高層ビル──『ホープビル』のエントランスを歩いている。

「今回の敵は神出鬼没。仕方がありません。」

そう言いながら十刃の前に現れたのは、いつものエージェントの如くキッチリとしたスーツを身に纏った霧宗であった。

「もしかして今回の任務、霧宗と一緒?」

「そうです。なので早く行きましょう。」

霧宗が任務へと向かい、淡々とホープビルから外に出る。十刃も外に出て、霧宗の隣を歩く。

「霧宗の知識ってさ、どこまでの知識持ってるんだ?」

十刃が素朴な疑問を投げ掛ける。

「それはどういうことですか?」

「例えばアニメや漫画の知識とか。」

「そうですね…時々娯楽で漫画を読むほどですが、一度見たものは一言一句覚えています。」

「はは、マジかよ…」

十刃は改めて霧宗の頭脳に驚くのであった。


ED20:霧の中心にある、確かな知識


〔Exへ〕

「製本版はここで終了なのですが、ネット版限定で新しく『Ex』という話を追加しました。正直読者の皆様にはどうでもいいことですが、一応報告しておきます。」


「それでは最後に『Ex』をお楽しみ下さい!」

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