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幻想怪物討伐組織  作者: 眼鏡 純
3話:『覚醒』
171/176

H─6

 「六夢…なのか…」

十刃は自分の前に立つ女性の名前を呟く。

 銀色の瞳は紫の猫目となり、目の周囲に血管が浮かび上がっている。紫色のパーマロングの髪は艶やかな銀色へと変色していおり、左太股に埋め込まれているUFの周囲も血管が浮かび上がっている。そして力が体の内から溢れんばかりに出てきて、人智を超える動きが容易いレベルであった。


──この力、『覚醒』であった。


 「皆さんの魂を返していただきます、牛の怪物さん。」

六夢がスナイパーライフルを構える。

「汝、我カラ魂ガ解放サレテイタノカ。」

憤怒に満ちる顔で、蚩尤が六夢に話しかけてきた。

「そうです。とても嫌な空間でした。だから他の皆も早く皆も解放させていただきます!」

次の瞬間、六夢はスナイパーライフルのスコープを覗く。覚醒の影響により、照準を合わせる際の集中力が異常に高い。そのような状態のため、的確に兜や鎧で隠されていない部分に弾丸を命中させていく。

「グッ…!オノレェェェェェェ!」

撃たれ続け、体中に空いた穴から血を流す蚩尤は、怒りに任せて戈と戟を振り回してきた。六夢は集中し、的確に攻撃の隙間を見極めて回避する。そして回避動作中に、ノールックでスナイパーライフルの引き金を引き、四つの目の内の一つを撃ち抜いた。

「ヴォッ…!」

目を撃ち抜かれた痛みに怯んだ蚩尤に対し、六夢は残り三つの目も撃ち抜いた。それにより蚩尤は更に怯んだ。

「これで終わりにします!」

六夢はスコープを覗き、頭を撃ち抜くために兜の隙間から見える僅かな額に照準を合わせて引き金を引いた。

だが次の瞬間、蚩尤の身体中の傷から突如どす黒いオーラが禍々しく出始めた。六夢の放った弾丸はオーラによって遮られてしまった。蚩尤はどす黒いオーラで全身の傷を塞いでいくと、切断している腕をオーラで形成し、潰れた四つの目を再生させた。すると持っている全ての武器をその場に捨てた。

「ヴモォォォォォォォォォオォオオオ!」

耳を押さえたくなるほどの咆哮をすると、兜と鎧が砕け散り、代わりに筋肉が膨張し、身長が五メートル以上となった。そして己から放つどす黒いオーラで、六つ全ての武器を作り出すと、自身の周囲に浮かばせた。

「これは…真の力ですか…!」

六夢は目を丸くして、無意識にスナイパーライフルを握る手に汗が流れた。

「ヴオォォォォオォォォォォォォーー!」

また咆哮をする蚩尤に、殆ど自我は残っていないようだ。そしてもう一度咆哮をした瞬間、周囲に浮かぶ武器の中、弩以外の五つの武器が六夢に向かって飛んできた。六夢は剣や矛などの攻撃を回避し続け、反撃の隙を伺うが、なかなか隙がなく防戦状態となってしまった。

(一か八かです…!)

このままではジリ貧だと判断した六夢は、一か八か舞う武器の中でスコープを覗き、蚩尤の目に向けて弾丸を放った。蚩尤は巨大な盾で弾丸を防いだ後、そのまま六夢に突進させた。六夢は巨大な盾の突進を避けきれず、衝突されて吹き飛んでしまう。

「くっ…!」

六夢は空中で一回転してから着地するが、ダメージが大きく片膝をついてしまう。

「殺ス…汝ヲ…殺ス…!」

僅かに残った自我──殺意に従う蚩尤が、真っ赤な四つの目を六夢に向ける。

(どうしましょう…勝機がありません…)

六夢は一分も経たない戦闘で歴然の力を味わい、頭の中にネガティブな思考が過った。




 青い空を飛ぶ一台のヘリコプターは、後ろから鴆に追いかけられながらも、ナンバーズがいる島へと向かっていた。

「ほらほら!もっと速くしないと追い付かれるよ!」

ヘリコプターの後部座席に座る、緑色のポニーテールにオレンジの瞳、白衣を身に纏い、茶色のフレームの眼鏡をかけた二十代後半の女性──『科楽(かがく)理香(りか)』が、何処か楽しそうにヘリコプターの操縦士を煽る。

「分かっている大人しく座ってろ!」

三十代後半のベテラン操縦士は必死にヘリコプターを操作しながら、後ろから煽ってくる理香に命令する。理香は口を尖らせてブーブー言いながら、素直に後部座席に座った。

「待っててね皆、最高の手土産用意したから。」

理香はグヒヒと笑いながら、島に到着するのを待つことにした。

 「死ンダ…?死ンダ…?死ンダ…?」

蚩尤が残り僅かの自我で、足元に横向きで倒れる、身体中ボロボロの六夢を見下ろし、死んでいるかどうか確認している。

(ダメ…力が入りません…)

逃げなければ殺される──そんなこと頭で理解している。だが、体が動いてくれない。加えて心臓が鼓動を打つ度に痛みを生じる。これは十刃の覚醒が切れてしまった際と同じ症状、つまり六夢も覚醒が切れてしまっている。

「生キ…テル?生キテル…生キテル!」

蚩尤は六夢がまだ息をしていることに気付き、己の拳を振り上げ、止めを刺そうとした。その時、背後からロケットランチャーが直撃し、大きな爆発が発生する。その爆風によって六夢は少し飛ばされてしまったが、結果的に蚩尤と距離が空くこととなった。蚩尤は少し焦げた背中をそのままに、ぐるっとロケットランチャーが飛んできた方向に体と視線を向ける。

「ちっ…ロケラン直撃して傷一つなしかよ…」

ロケットランチャーを発射した当人である十刃が、全くダメージを受けていない蚩尤に舌打ちをする。

「我ヲ…傷付ケシ汝…殺ス…!」

蚩尤の標的が十刃に変わる。

(保ってくれよ…俺の体…!)

十刃はUFを起動し、更に覚醒状態となる。そして人智を超えし速さで蚩尤との距離を一瞬にしてなくし、一本の腕を斬り落とした。しかし斬り落とされた腕はすぐにどす黒いオーラで義手を作られ、そのまま十刃を殴り飛ばした。吹き飛んだ十刃は空中で体勢を戻そうとするが、上手く動いてくれず地面に転がった。

「くっ…!」

十刃は直ぐに立ち上がると、頭上に気配を感じ、咄嗟に前にダイブした。すると頭上から剣が振り下ろされ、間一髪で回避する形となった。しかし安堵するのも束の間、他の武器を一気に攻撃を仕掛けてきたので、防戦一方となってしまう。そして正面から突進してきた矛を刀で弾いた際、左肩を擦ってしまい、大きな傷を負ってしまった。

「ぐっ…!」

十刃は痛みを堪えつつ、最後の力を込めて地面を蹴り、蚩尤の首を撥ね飛ばす勢いで急接近した。しかし巨大な盾によって攻撃は防がれ、怯んでいる間に蚩尤に殴り飛ばされた。飛ばされた先には六夢が倒れており、気を失っているようだ。

「殺ス…!二人共…殺ス!」

蚩尤が二人に迫ろうとした時だった。顔面にロケットランチャーが直撃し、数メートルほど吹き飛ばされた。

「おー!流石最新型のロケットランチャー!威力が段違いだねー!」

新しいロケットランチャーの爆発力に大満足しながら現れたのは、科学理香であった。


──時は少し遡り、十刃が二度目の戦闘に入った頃の上空。

「あっ!見つけた!私はこのまま降下するから君はあの鳥達を引き付けてね!」

双眼鏡で十刃達を発見した理香が、操縦士に指示をしつつ、ヘリコプターの後部座席で降下準備を始める。

「ミイラ取りがミイラになるなよ!」

操縦士が降下準備中の理香に釘を刺す。

「私ただの科学者から有り得るかもね♪もし死んじゃった時はちゃんと壮大にお葬式してね♪」

パチッ♪とウインクをしてから、理香はヘリコプターのドアを開け、躊躇なく空へダイブした。一人残された操縦士はハァと溜め息をついてから呟いた。

「何がただの科学者だ。俺はお前が入隊する前からいているんだぞ。──科学理香、狩人(カサドール)として幻想怪物を討伐していた時代、数多の爆発系の武器を駆使して討伐する姿から、『爆破姫(ばくはひめ)』として名を知られていた女が、そんな奴が早々死ぬかよ。」

呟き終えた操縦士は、追い付いてきた鴆の群れから逃げるのであった。


──時は戻る。

 理香は蚩尤の前に立つと、片手で三つの手榴弾を器用に回しながら話しかける。

「さてさて牛さん、ちょっとの間待ってくれないかな?」

「殺ス…我ヲ傷付ケル者…全テ殺ス!」

蚩尤は一切聞く耳を持たず、二本の腕で理香を鷲掴みにしようとした。しかし、掴んだのは三つの手榴弾だけであった。

「ありゃりゃ?もう自我が残っていない感じか。なら、力づくで時間を作らせてもらうよ。」

軽業で蚩尤の頭の上に乗った理香は、持っている三本の細い糸を引いた。すると糸が結ばれている手榴弾のピンが引き抜かれ、蚩尤の掌の中で爆発した。

「グオッ…!」

蚩尤が吹き飛んだ腕をどす黒いオーラで作り出している間に、理香は蚩尤の周囲に黒い粉を撒き散らして距離を空けた。そして火を付けたライターを投げつけると、蚩尤の周囲を舞う黒い粉──火薬に引火して爆発を発生させた。蚩尤は全身を焦がしつつ黒い爆煙の中から出てくると、音もなく出現していた無人戦車に主砲を向けられていた。

「じゃっ♪バイバイ♪」

戦車の上に立つ理香がウインクをした後、持っているボタンをポチッと押した。すると戦車が主砲を発射し、蚩尤に直撃させると、爆発によって何百メートル先に吹き飛ばした。

「よし、今の内に♪」

理香は蚩尤とかなり距離が空いたことを確認すると、戦車をチップ化させてから気を失っている十刃と六夢の元へ急いで駆け寄った。そして二人の近くで屈むと、ある液体が入った二本の注射器を具現化させ、二人の腕に注入した。すると二人の傷がみるみる癒えていき、全回復した二人はパチッ!と目を覚ました。

「おっ!気が付いたね♪成功して良かったよ♪」

目の前でご機嫌に笑う理香と、自身のダメージが全回復した現状に、十刃は頭がついていけず、呆然とした顔で理香を見詰める。

「あっ、『自分に何をした?』って顔してるね。時間がないから簡単に説明するけど、君達二人に注入したのは字ちんが持ち帰ってきた『酒呑童子の酒』をベースにした回復薬さ。回復効果は今体験している通りね。私は他の連中の回復に向かうから、あの牛さんのことは頼んだよ。」

理香は二人に蚩尤を託すと、先に上空から他のナンバーズを見つけていたらしく、平山へ直行した。


 十刃は隣に立つ六夢と向かい合うと、無言で頷き、こちらに向かってくる身体中どす黒いオーラで再生されている蚩尤に視線を向けると同時に、覚醒状態となった。

「いくよ六夢!」

「はい!十刃さん!」

二人は同時に地面を蹴り、蚩尤に接近する。

「ヴォォォォォォォォォォォォオ!」

遂に自我を失い、ただ目の前の生物を殺すだけの獣と化した蚩尤が咆哮をすると、周囲に浮かぶ六つの武器が十刃と六夢の迎撃に向かった。

「全快になった俺達を舐めるな!」

十刃は振り下ろされた巨大な剣に対し刀を振り上げ、真っ正面から応戦した。すると剣の方に亀裂が走り、バラバラに砕け散った。その隣で六夢は矛の攻撃を回避した後、地属性を纏わせて頑丈にさせた弾丸で矛の刃を貫いた。すると刃は貫かれた部分から罅が走り、バラバラと崩れ落ちた。そんな二人に対して、蚩尤は弩でどす黒いオーラで形成された矢を連続で放つ。しかし体力全快覚醒状態の二人に、ただの乱れ撃ちなんて当たることはなく、蚩尤の目の前まで到着した。

「ヴォォォォォォォォォォォォオ!」

蚩尤は残り四つの武器を使い二人を殺しにかかる。十刃と六夢は見事なコンビネーションを駆使して応戦し、戈、戟、弩を破壊する。そして最後の盾を破壊した時、蚩尤が二人に殴りかかった。十刃と六夢は蚩尤からの攻撃を防御すると、くるっと空中で回転してから同時に着地する。そして十刃は、刀を鞘に納めた。

「これで終わりだ蚩尤!」

「皆様の魂!返していただきます!」

六夢はスナイパーライフルで四発の弾丸を放つ。一発目の弾丸は寸部狂いなく蚩尤の心臓の部分に命中する。しかし厚い筋肉のせいで弾丸は心臓まで届いていない。その時、二発目の弾丸が一発目の弾丸にヒットし、一発目の弾丸を奥へと押し込んだ。次に三発目が二発目にヒットし、押された二発目が一発目を更に奥へと押し込む。最後の四発目が三発目にヒットすると、三が二を押し込み、二が一を押し込んだ。そして遂に一発目の弾丸が心臓を貫いた。蚩尤はゴフッと大量の血を吐いて怯む。その瞬間を逃さず、十刃は全ての力を込め、蚩尤に居合いの一撃を喰らわした。

「ヴッ…!ヴォォォォォォォォォォォォオ!」

二人の攻撃が致命傷となり、苦しみの咆哮をあげる蚩尤の体がどんどんと消滅していく。そして二人が見守る中、蚩尤はその姿を完全に消滅させた。

「やりましたね十刃さん!」

六夢が天使のような笑顔を見せる。

「ああ!そうだな!」

十刃も満面な笑みを浮かべながら、六夢とハイタッチをして喜びを分かち合った。そして二人は覚醒が切れ、体から一気に力が抜けて倒れて、そのまま気を失ってしまった。


 気を失っている二人の元に、魂が戻ったナンバーズと面々と理香が駆け寄ってきた。

「おい理香、二人にさっき俺達に注入した薬を注入してやれ。」

字史が理香に命令すると、理香は首を横に振った。

「この二人には既に注入しちゃっているの。三日以内に指定した使用量を越えて注入した場合、副作用で廃人化する可能性があるの。だから次に二人へ注入出来るのは三日後だね。」

「…そうか。ならばこの二人を運ぶしかないな。」

ナンバーズと理香は、気を失っている二人を運びつつ、この島に上陸する際に使用した船の方へ戻り、全員で島を脱出する。そして二人を休ませるため、キオワナ地区基地内の病室へと向かった。



 島から離れていく船を、平山の山頂から一人の男性が眺めていた。三十代半ばで、マダムにモテそうなワイルドチックな顔つきである。だが目を引かれるのは、紅色の髪の間から生えている二本の鬼の角であった。しかしそれ以上に目が引かれるのが、背中に背負っている自分の身長とほぼ同じ長さの瓢箪であった。

「己が絶望から脱するための術があるのならば、たとえその方法が他人の命をどれほど奪おうと実行する。それが人間の底なしの欲望。」

そう呟いた時、脳内に透き通った美しい女性に似た声が響いた。

(『酒呑童子』、またあなたは人間に化けて勝手な行いをしていますね。)

「俺がどうしようとお前には関係ないだろ、『フェニックス』。」

男性の正体は、三大幻想怪物の一体──『地帝鬼(ちていき)の酒呑童子』であった。そしてそんな酒呑童子にテレパシーをしてきたのは、酒呑童子と同じ三大幻想怪物の一体──『空妃鳥(くうひちょう)のフェニックス』であった。

(ですがその身勝手な行動で、今後面倒な事になる可能性もあるのですよ。)

「知れたこと。俺はもっと欲望に溺れる人間を見たいのだ。止めるつもりはない。だからもうテレパシーをしてくるな。」

酒呑童子は一方的にテレパシーを切ると、船が消えていった水平線を眺め、

「人間の底なしの欲望…これほど面白い玩具はなかろう。」

狂った笑みを浮かべた後、その場から音もなく姿を消した。



 「ん……」

十刃が目を覚ますと、そこは病室のベッドの中であった。徐に顔を横に向けてみると、そこには隣のベッドで自分と同じ状況の六夢の姿があった。暫くボ〜ッと眺めていると、六夢が目を覚まし、こちらを向いてきた。

「おはよう六夢。」

いきなり目が合ったことに少し照れつつ、挨拶をする十刃。すると六夢も少し照れつつ返事をする。

「お、おはようございます。私達、また倒れちゃったみたいですね。」

「そのようだね。まぁあんだけ無茶なことしたんだし、当然の反動だな。」

十刃がハハハと笑うが、六夢もクスクスと笑った。そして一頻り笑った後、二人は白い天井の方に視線を向けた。病室内には時計の針の音だけが響く。

(……気まずい空気…)

十刃は病室内を包む無言の空間に耐えきれなくなってきた。

(何か話題になるものは……)

十刃は一分ほど考えた後、一つ話題を思い付いたので、早速話しかけることにした。

「六夢ってさ、何で世界の希望(ワールドエルピス)に入隊しようと思ったの?」

「入隊理由ですか?そうですね……」

六夢は少し考えた後、自分の入隊までの過去を語り始めた。



 私は森の中の小さな集落で舞葉家の一人娘として生まれました。昔からとても引っ込み思案で、いつも一人でお人形遊びをする、もの静かな子でした。ですがそんな私にもちょっと自慢がありました。私が暮らしていた集落は狩猟を得意としており、私は八歳頃から長距離射撃の能力を開花させ、集落内で一番上手かったのがちょっとした自慢です。

 そして私が十歳の頃、悲劇が起きました。集落を守ってくれていた(ハウラ)が幻想怪物達によって破壊され、襲撃を受けてしまったのです。それにより私以外の人々が全員殺されてしまいました。当然私の両親も殺され、私は一人、タンスの中で震えていると、狩人(カサドール)の方に救助していただき、ある孤児院に入ることになりました。

 元々の引っ込み思案と、家族を失った影響で酷く落ち込んでいた事もあり、周囲の人と全然話さず、自分の部屋の中でずっと一人泣いていました。そんなある日、たまたま皆が集まって遊ぶ部屋を覗いた時、部屋の隅でヨーヨーをする女の子を見付けたんです。その子はヨーヨーで色んな技を決めていました。それがとてもかっこいいと感じた私は、思わずその子に近付き拍手を送ったのです。これが『四葉』との初めての出会いでした。

 その日から私と四葉はいつも一緒に遊ぶようになり、四葉のお陰で他の女の子とも徐々に話せるようになり、いっぱい友達が増えました。そして四葉は、私が密かに望んでいた六つの夢──『友達を作る』、『友達と一緒に遊ぶ』、『友達と眠くなるまでお話する』、『友達とお出かけする』、『友達と笑ってご飯を食べる』、そして『掛け替えのない親友を作る』──この六つを全て叶えてくれました。

 そして四葉と出会って三年が経った時、狙撃能力を見込まれ、世界の希望(ワールドエルピス)からスカウトをされました。私は悩んだ末、私のような悲しい子をこれ以上増やしたくないと考え、入隊を決意しました。

そして入隊する当日、私は四葉に、「あなたは暗かった私の心を照らしてくれたお日様です。」と、最後に告げて孤児院を去りました。そして無事に入隊しましたが、やっぱり皆と、特に四葉と離れたのはとても寂しく思いました。ですが入隊した次の日、なんと基地内で四葉と出会ったのです。そして、「六夢っちは私の心を輝かせてくれたお月様だよ!だから私が決めたよ!私はうずっと六夢っちを守るから!」と言われました。私はとても嬉しくなり、私も四葉の事をずっと守ろうと思いました。



 「……これが、私の入隊理由です。」

六夢が入隊の理由を話し終えた。

「六夢って本当に四葉の事が好きなんだな。」

六夢の入隊の話を聞いて、十刃は六夢の四葉への愛情の深さを改めて認識した。

「はい。私にとって四葉は、掛け替えのない親友であり、救世主です。大好きに決まってます。」

六夢はニコッと笑った後、昔の四葉との思い出を話し始めた。楽しそうに話す六夢の横顔を見て、十刃はクスッと笑うのであった。



 三日後、十刃と四葉には酒呑童子の酒ベースの超回復薬が注入され、無事に完全回復することが出来た。そして誰も欠けることなく、全員アズマキョウへと帰還した。

その翌日、早速十刃には新たな任務が言い渡された。

「はぁ…もうちょっと休ませてくれてもいいだろ…」

いつものカジュアルな服装を身に纏う十刃が、ハァと大きな溜め息をつきつつ、円柱型の高層ビル──『ホープビル』のエントランスを歩いている。

「仕方がないですよ。幻想怪物は私達の都合なんて関係ないのですから。」

そう言いながら十刃の前に現れたのは、いつもの白と紫を基調とした可愛らしいゴスロリを身に纏った六夢であった。

「もしかして今回の任務、六夢と一緒?」

「はい、頑張りましょうね。」

六夢が天使のような笑みを浮かべて、ホープビルから外に出る。十刃も外に出て六夢の隣を歩く。六夢がここまで明るく話すようになったのは、彼女の心を明るくさせたお日様である四葉のお陰なんだろうなと、十刃は密かに思うのであった。


ED19:六つの夢を叶えてくれた、お日様のために


〔Exへ〕

「製本版はここで終了なのですが、ネット版限定で新しく『Ex』という話を追加しました。正直読者の皆様にはどうでもいいことですが、一応報告しておきます。」


「それでは最後に『Ex』をお楽しみ下さい!」

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