第102話 時間送り
櫟の言う通り戦いの時以外は抜刀しないようにしよう。
最も戦いなんてそんなことがなくこの刀は飾りになるのが望ましいのだけれども。
☆☆☆
「お姉ちゃん、どうする?」
桜が問いかけてきた、どうするも何も卯月はいなくなったし
日本刀はどうしようもないし。
「どうしようか。くぬぎ、ひもとゆかたでももってきて。」
「え?あぁ、似合うのあったかな?聞いてみるか。」
櫟は少し驚いたような反応を返すと1回に降りていった。
「お姉ちゃんに似合うのあるの?」
「さくらのおさがりのゆかたがあったような?」
「私のかあ、確かにサイズは丁度よさそうだね。でもお姉ちゃん浴衣着てどうするの?」
「いへん。」
僕は異変解決しなければいけない。本能がそう言っている。
「お姉ちゃんでもそれは危ないよ。妖怪とか出てきたらどうするの?」
それは…刃物でもあれば対抗出来るんじゃないかな。
僕の手元には今2本の刃物がある。
どちらとも枝のような模様が描かれた鞘に包まれている。
中身は鋭い刃だ、鉛筆ですら豆腐のように切ってしまうのだからきっと手を添えただけでも指は切れてしまうのだろう。
妖怪に対しても同様であっては欲しくない。僕はこの刀は攻撃手段に使わない。
桜の問いかけにこたえるべきだろうか。
「うーん…」
「お姉ちゃんだって戦いたくはないのでしょ?、そもそも小さな体で戦うのは無理だよ。なんで櫟に浴衣を持ってきてって言ったの?」
桜は目に涙を浮かべていた。今にも泣きそうだった。
「ごめんなさい。」
「ごめんなさい。で済む問題じゃないけどなってしまった以上仕方が無いしお姉ちゃんは悪くないんだよ。」
僕はただ学校帰りに光に覆われて体を作り替えられただけの話だ。
あれ?今思うと僕って完全に被害者側じゃない?
☆☆☆
トントントントンと音がする。櫟が登ってくる音だろうか。
時計を見たら午後10時だった。夜中だ。寝る時間だろう。
僕は自分の部屋に戻ろうとした。
「お姉ちゃん、何したいの?」
「もう寝る時間だよね。」
ガチャっと扉開ける音がした。上を見る。櫟だった。
何も持っていない。
「聞きに行ったら無いって言われたしもう寝る時間だぞ。」
「なかったの。」
どうやらなかったらしい。そんな昔のもの持ってるのはおかしいよね。
「お姉ちゃん。私の部屋にいてもいいよ。」
「えっ」
「まあ、うん。その方が得策だよな。」櫟まで何を言っているの!?昨日一緒に寝たけどさ。あれは卯月がいてこそだし
そういえば卯月戻ってこないね。
僕は現実逃避するように部屋に入るとベッドの毛布をかぶった。
かぶったあとで気付いた。
ここ桜の部屋だ。「お姉ちゃん。ぎゅー」
さくらに抱き抱えられた。
「あぁ、うん。おやすみ。俺も寝るわ、おやすみ。」
櫟は部屋から出ていった。電気消して扉まで閉めて出ていった。
そういえば水着のままだった。僕は無理やり寝るために目をつぶった。
桜の腕の温度が暖かく感じる。毛布で壁を作ると僕は眼を瞑った。
時計を見る。午前8時、僕にしては早く起きた方だと思う。
桜は既に起きたのかいなかった。
毛布から顔を出して部屋を見てみる。真っ暗だった。
おかしい。夜は開けたはずだ、もう一度見る、真っ暗だった。
毛布の中と同じくらい真っ暗だった。
「のじゃ?」
金色の猫科のような目と目が合った。というかこんな目をしている存在を僕は1人しかしらない。
僕はその存在にちっちゃな手を見えないけどなんとなく触るように突き出してみる。
もみもみ、もみもみ。
「にゃにをするのじゃー!」
金色の瞳さんは驚いた様で僕の腕を手で掴んで耳から無理矢理外した。
「えっと…うーちゃん…」
「なんなのじゃ、その呼び方は。」
えっと某ピンク髪のうさぎみたいな口調をする…擬人化の子の呼び方だけど。
「人の世の存在は知らぬのじゃ。」
あ、っ、心読まれてる気がする。
「読んでるのじゃ、それよりおぬしらに協力してもらいたいのじゃ。」
何を?妖怪から協力って僕らには何もすることないんだけど。
「止まった時を動かしてほしいのじゃ。」
時が止まっている?どういう意味なんだろう。時計はちゃんと動いていた。
☆☆☆
時が止まっているって…時計は動いてるし桜はちゃんと起きてるよ?
「時が止まっているというよりも、時を止めていると言った方が近いのじゃ」
なにそれ、意味がわからない。
「我ら月衆、頭領様と干衆、隠神様が戦争しているのじゃ。」
首領様?よくわからない。卯月は確か旧暦では4月だ。
ということは月衆は
睦月、如月、弥生、卯月…だったっけ。
「だいたいそんな感じなのじゃ。」
干衆は予測出来ない。数が同じじゃないと片方の軍が不平等になるんじゃないだろうか。
あぁ、卯月ちゃん意外に頭いいね。日本ではそれ旧暦っていうんだよ。
「旧暦は知らぬが月衆はそんな感じであってるのじゃ。我らの方の味方なのじゃ。ついでに妾も月衆なのじゃ。あと、衆の人数はどちらも同じなのじゃ。」
えっへんとない胸をはる卯月だが真っ暗なせいで何も見えていない。
こんな時に白花装備あれば一瞬で明るくなるのにな。
僕じゃ電気のとこには届かないし。卯月なら届くかな?多分届かなさそう。
まあ、卯月は先程も言った通り4月だ、先程あげた例にも入っている。予想はできていた。
「電気の?ってなんじゃ?」
やっぱりわかっていなかった。もういいよ。
トントントントンと階段の登ってくるような音がする。
しばらくすると音は収まった。
「何かいるのじゃ?」
多分桜じゃないかな、妖怪がおばけに怯えるなんて珍しい気がするが。
ガチャ。
「あ、電気付け忘れてた。…ん?」
「ん?」
「のじゃ?」
桜がなにかに気づいた。っぽい。そして電気を付け忘れるって…
「お姉ちゃん、おはよ。卯月ちゃん、おかえり。」
昨日の夜酷い事を言われたはずなのに苦もなく対応してみせるあたり
桜は精神面が強いのかもしれない。
「たたいまなのじゃ。」
卯月も卯月でそれなりに強い。僕だったら閉じこもってるよ。きっと。
「さくら、おはよ。」
桜は手を降ると天井に伸びている紐に指を引っ掛けて下げた。
カチカチッ、という音と共に電気が付いた。
「ニュースで夜が明けないの騒ぎになってたけど。この一連の異変について妖怪さんは関係している?」
どうやら桜もニュースを見たらしい。
妖怪に関しては関係しているというかおそらく僕の予想では原因そのものなんだよ。
「ごめんなさいなのじゃ、妾達のせいなのじゃ。」
卯月は桜に謝った、それはもう綺麗な土下座だった、金色の尻尾も床についている。
「どういうこと?」
「うづきのとうりょうとてきたいがわのとうりょうがせんそうしてるらしい」
「この街を舞台にしているのじゃ」
なんともはた迷惑な話である。解決しなければ朝は来ない。きっと。たぶん。
「で?なんでこの街で?」
桜が最もな疑問を卯月にぶつけてきた。
「それは。頭領がこの街が1番能力を発揮しやすいからと。」
どういう基準だ。たしかに田舎だし住み心地は言いけれども。能力を発揮しやすいというのは迷惑である。
ニュースでは今頃騒ぎになっているし商店街の方はさぞかし迷惑であろう。
「そっか。なら仕方ないね。」
桜も桜で納得しないで!?もしかして桜の認識もバグってきたの!?




