第101話 異変
晩ご飯を食べて何もすることがなかったのでニュースを見ていた。
櫟がテレビをつけたのである。
変わらないキャスターがいつも通りにテレビの向こう側で情報を伝えている。
桜は卯月にあげるお菓子を持って2階にいった。
『今日、午後3時30分頃、☆☆市の商店街が不思議な現象に巻き込まれました。』
午後3時30分?不思議な現象?
櫟がニュース付けないのにニュース見ているのは珍しい。
「なあ、楓兄、これお前らに関係することなんじゃないのか?」
櫟は聡明だ。嫌なくらいに勘がいい。
お前らとは一体なんだ。他人がいるような言い方だ。
この様子だとなんか気が付いているかな?
「ぼくたち?」
「そうだ、妖怪くらいしか不思議な現象なんてないだろ。上で今日、人を入れた記憶のないのにこの家にいるはずのない声が聞こえたしな。のじゃとか言ってたか?誰かいるのでは?」
なんか卯月のことバレてるよ。櫟怖い。とはいえ、関係しないとも言いきれない。
「楓兄が協力してほしいなら俺も協力するが?その代わりあっちの世界について教えてくれないか?」
櫟は怖い、そう学んだ僕だった。
『今日、商店街の木が全て桜並木に変えられました。警察は調査を進めています。』
この時期に桜並木なんて不可解である。
というかそもそも夏に桜並木なんて咲いているのがおかしいとしか思えない。
「不可解なこともあるもんだねえ。俺を2階に案内してくれ。」
僕は櫟を2階に案内することにした。このまま隠し通したかったけども
櫟は異常に聴力がいい。地獄耳とかいう奴だ。
どうせ上にいる以上何時かはバレるんじゃないかな。
ならば今会わしておいた方がいいかもしれない。
そしてこのニュースは絶対に卯月の同族の妖怪の仕業に違いない。
☆☆☆
「楓兄、階段登れないの?」
櫟と僕は階段の前に立ちすくむ、たしかに階段登れない。
僕は部屋に行きたい。階段が登れない。登ろうとしたけども足が届かない。
ふと浮遊感を感じた。腕の付け根に手が添えられていた。
後ろを見る。櫟が腕を添えていた。
「…。」
「楓兄、だっこしてやるよ。」
僕は櫟にだかれた。男に抱かれるなんて嫌な気しかしないのだけれど。
もうお婿に行けない。誰とも結婚なんてする気は無いけど、
そもそもこの見た目でどうやって結婚出来るのか。
私は…じゃなくて僕は…あわわわわわ
「楓兄?大丈夫か?落ち着けるか?顔が赤いぞ?」
櫟はもう黙ってて、私は気絶したい気持ちだった。
階段の最上段に上がった。櫟には下ろしてもらった。
「で?ここ桜の部屋だよな?」
「うん。どあたたいて」
僕は櫟の言葉に頷く。櫟は僕の指示通りにドアを叩いた。
コンコン。
「だれ?」
中から桜の声が聞こえた。桜が本能を返したようだ。
卯月がまだいるかが問題なんだけれど。
「俺だ。楓もいる、部屋入っていいか?」
「櫟お兄ちゃん。楓お姉ちゃん。」
「楓兄、お姉ちゃんって呼ばれてんのか?」
「うん…」
「入っていいよー」
僕は頷く。否定も出来ないし桜にお姉ちゃん言われてるのは事実だから。
そして桜が入っていいって許可おろした。
「そうか、ならば楓姉だな。」
櫟も真似しなくていいから。今すぐその呼び方戻して。
「くぬぎにそうよばれるとなんかいやなきもちになる。」
「そうか。じゃあ楓兄に戻すわ。ごめんな。」
櫟に目線を合わされて頭を撫で撫でされた。
「ぼくはそんなにちっちゃいこどもじゃないもん。」
「いや、今は十分子供だと思うが?自分の見た目見てみろよ。」
したを見てみる。
ちっちゃい手足、細くて折れそうな腕。短い手足。
櫟の腰あたりまでしかない身長
揺らぐ尻尾、線の細くて長い水色の髪。
たしかに今の僕はちっちゃい子供でしかなかった。
「あ、櫟お兄ちゃん、お姉ちゃん。」
部屋に入るなり桜と目が合った。ちゃんと卯月も居るようだった。
「あれ?うづきは?」
「卯月?誰だ?」
「お姉ちゃん、そこの毛布の中にいるよ。」
僕も毛布の中に入る。卯月と目が合った。
「もふもふもふもふ」
「やめるのじゃ、くすぐったいのじゃ。そなたのみみも同じ目に合わすぞ。」
口調変わった。怒ってるのかな。僕は恐怖を感じ手を引っ込めた。
「いい子じゃ、それに、見知らぬ人の子がおるのじゃ。」
「ぼくのおとうと。」
「楓の弟であったのじゃ?人の子よ、名はなんともうすのじゃ?」
「俺か?櫟という。」
「楓に桜に櫟か、みんな植物の名前なのじゃ。」
お母さんは柚だしこの家みんな植物の名前だ。多分偶然だと思うけど。
「お父さんの名前は柳っていうんだよ。」
本当に偶然だと思う。
☆☆☆
「楓よ、これを受け取ってほしいのじゃ。」
卯月に差し出されたものは刀だった。2本もある。これで一体どうすればいいのか。
「楓には、これから戦わねばならないときもあるのじゃとおもって。」
戦う?僕が?戦うって危ないことだよね?
「お姉ちゃんにそんな危険なことはさせられない!」
「なんも出来ない小娘は黙ってるのじゃ!」
卯月の剣幕が鋭い、一瞬僕もビクッっとなった。
「うぅ…酷いよぅ…」
ほら桜泣いちゃったじゃないか、言い過ぎだと僕は思う。
「あ…あう…ごめんなのじゃ…」
卯月は桜に謝るとそのまま窓から消えていった。
桜の部屋には鞘に入った日本刀らしき刀が2本も置いてあった。
「楓兄、どうする?」
僕は櫟と涙目の桜の前でその日本刀を抜刀してみた。
「私が無力なのはしょうがないよ。お姉ちゃんを守りたいけどそれすらできない。ごめんね、お姉ちゃん。櫟お兄ちゃん。」
「それ言うなら俺も無力だ。人間である以上何も出来ないからな。気にすることは無いと思うぞ」
「うん。」
櫟のお兄ちゃんらしさが到見えた。櫟も成長しているんだな。
僕は退化してしまったのが情けなく思った。
「楓兄、本当は止めたかった。こんな幼女に戦いを挑ませるなんて非道なことは俺は許せなかった。」
一般的な人ならそう思う。けど僕はもうそれすらも無意識に受け入れてしまっていた。
きっと考えがおかしいのかもしれない。
僕の体は既におかしい、認識もバグってくるかもしれない。
「俺らも手伝う。死なないように努力する。」
死なないようにって言われても死なれて生き返らすのは無理だと思うんだ。
「くぬぎはあぶないよ、さくらもあぶないよ!」
2人を置いていくのは申し訳ないと思った。
「お姉ちゃん1人だと色々できないもんね。」
うぅ…それ言うの卑怯じゃないかな。僕は階段も登れないし友人に出会った時に怯えて動けなくなりそうだ。
そういえば下を見て刀が半分抜刀けていた。
僕は刀を仕舞う。自分の腰くらいの長さで子供が遊ぶくらいだった。
2本もある。双剣やれということかな?それとも予備?
僕は試しに1本抜刀してみた。
僕の目に映し出された刃は薄青く透明で光っている。綺麗な刃だった。
「くぬぎ、かみかもくざいない?」
「これでいいか?」
櫟が僕の問いかけに反して渡してきたのは鉛筆だった。
まあ、木材だしいいのだけれども。
僕は鉛筆を刃にくっつける。前に鉛筆が豆腐のように切れてしまった。
「それ危ないから家ん中では抜刀禁止な。」
櫟の言う通り戦いの時以外は抜刀しないようにしよう。
最も戦いなんてそんなことがなくこの刀は飾りになるのが望ましいのだけれども。




