#8 雨
強い風。黒い雲。
今にも降り出しそうな雨。
人通りが少ない道。
只々何事もなかったように歩く私。
あたかも何事もないようにーー…。
「美香ちん、おはよ〜。」
「…風佳。おはよう。」
「今日ってさ〜雨振りそうじゃない?だから念の為、傘持ってきたんだ〜。」
「まじか。天気予報では晴れって言ってたよ?」
そう何事もなく接するのにすごく苦労して。
貴方のせいで私は大変だったなんて…………って人のせいにするのは駄目だってば。
「え〜。じゃあただの荷物になったかも〜(笑)」
「あはは…。」
ーーー…
「皆、席に着いて〜。HR始めまますよ〜。」
今日はどんな日になるんだろう。
楽しい日になるかな。
悲しい日になるかな。
悲しい日にならないといいな…なんて。
「「「起立、礼、おはようございます。」」」
ほら、彼もいつも通りじゃん。
私、なに、目赤くして昨日泣いてたわけ?
まだ本当かどうか分からないんだから。
もう、諦めても……。
「美香ちん?どうしたの?なんか今日沈んでるね?」
「別にそんな事ないよ〜(笑)」
1オクターブ高い声で何事もなかったように接する。
これが1番いい方法。
…良い方法なんだから。
風佳は優しすぎる。
周りをちゃんとみてる。
さすが班長。って言っても推薦したの私だけど。
改めて、1日って長いなって思った。
色んな事があった。
プリントを回す時に彼と手を触れてしまい、自分が赤面していないか不安だった。
風佳はすごく優しい子なのにヤキモチを妬く自分が嫌だった。
でも
何もかもなかったように。
いつも通り接しられるように。
ーー…
窓ガラスに一滴の水が落ちた。
どんどん落ちてきて、まるで水玉模様のようになった。
雨が降ってきたのだ。
風佳、傘持ってきて正解だったと思うよ。
あー私、今日傘持ってきてないや。
別に夕立だと思うし1時間くらいしたら止むよね?
1時間たっても振り続けている。
やばい。
どうしよ。
風佳に傘、貸してもらおっかな…。
でも相合い傘っていう年頃じゃないし。
なおかつ女子と女子だったら気狂いにも程がある。
今は掃除時間。
下校時間までに止むと良いんだけどー…。
『ザーーーーーッッ!!』
雨は一層強く降る。
私はもう下駄箱まで来ていた。
もう、無しで行くのかな。
情けないな〜。
「はぁ…。」
ため息が漏れた。
「美香ちん?大丈夫?やっぱり傘忘れてるでしょ〜?もう、貸してあげるからさ!風邪ひかないようにしなよ?」
「大丈夫、大丈夫!!折りたたみ、いつも持って来てるから本当に平気。風佳の方こそ自分で使いなよ?」
「持ってたのか〜。ごめんね〜。お節介だったかな?」
「全っ然!本当大丈夫だから!」
「そう?じゃ、気をつけて帰ってね。」
あーあ。行っちゃった。
しょうがない。もう、1人でー…。
「…っ…やっべ。傘忘れた。」
その小さな小さな声を私は逃さなかった。
え…。彼も傘、忘れたの?
同じ…でも傘、貸してあげられない。
私も忘れたから。
2人でトボトボびしょ濡れで歩くってのも手かも。
でもなんか青春青春してて嫌だな。
そもそもどうやって誘うの?
どうしたの?傘忘れたの?同じだね〜っていてお終い?
それとも良かったら忘れた同士一緒に歩くって誘う?
こうしている間に時は流れる。
「拓真?何?お前傘忘れたの?」
風佳だの声だ。
「ん…まぁ…そういうことになるのかな?分かんね。」
「それって忘れてんじゃん。ほら!家近いんだから一緒に帰るよ!傘貸すから。」
「はっ?女子のなんか使いたくねーし。」
「んもう!いいから!じゃあたし傘なしで帰るから!」
「それ駄目だろ。お前風邪引くぞ。」
「じゃああたしの傘の中に早く来いやッ」
「…。」
「相合い傘だけはやめてくれ。」
「わぁってる!」
2人はそう言い合いながら同じ道を2人で帰っていった。
あ…あ…
もう駄目だ。
なんだろ。
なんか見ちゃったな。
これで私、1人で帰るんだ。
何それ?訳分かんない。なんか今日本当最悪。
瞳の奥から何か熱いものが込み上げてくる。
泣くな。泣くな。泣くな。
涙が滴り落ちてくる。
本当泣きすぎ。
雨で誤魔化そうとした。
雨で濡れて…。
「…もぅ…本当、何のなの…? 」
たとえ涙が隠せたとしても鼻は赤く泣いた後が残る。
そんな日でも必ずいい事は起きるんだから。
そう信じて、私はその後を完全に消してから家に入った。




