靡く
「私には新しい仲間ができた。特殊部隊の隊員だ。その隊員がここ、桜吹雪中等学校の校舎への強襲作戦に参加している。
そのうちの一人、優雅はテレス、君と重要な関係にある少女だ。
顔も瓜二つ。どちらも銀髪……
違う所といえば髪の長さと服……
精神……
いや、なんでもない。ぜひご対面といこうじゃないか」
カーネルは片手で握り拳を作り、その拳で天を仰ぐ。
すると、後ろの壁の影から狙撃銃を抱えた優雅が現れた。
まわりにいたコルウィの兵士が警戒し、
優雅に対してクロスボウの矢先を向ける。
優雅はテレスの元へ、
その距離1m程にまで平然と歩いて近づいた。
「あ、貴方は……」
テレスが目を点にして優雅を見つめながらそういった。
「私は優雅。橘優雅」
カーネルは、一度地面に目を向けうつむいた後、再度2人の顔を見て、口を開いた。
「私は本当に人間だろうか?10年来の2人の娘との再開の時、このように無表情でいられる」
カーネルは震える唇を固く閉じ、喫驚の表情を見せる2人の視線を避ける。
「テレス……いや、銀髪の少女。君は残念ながら、優雅と比べると私の娘になるには不完全だ。君は外の世界を知らない。」
「現在世界は2038年、日本では2014年だ。本当に日本はアメリカの動物園のようなものだと実感した。いや、タイムマシンにでも乗ったような気がしてならない。入国した瞬間に20年もの時が遡る。この古臭い車や、香り!」
テレスは、力が抜けたように座り込む。
テレスが口を開き言う。
「貴方が、お父さん……?」
「弟のマルクスには世話をかけた。おかげで、この20年の間、私のやりたいことができた。実は、このように偽りの西暦により作られている動物園は、日本だけではない。
「我々正義の使者はアメリカの属国と化した国々……動物園を解放する、反米テロリストだ。」
「私はこの、アメリカの管理する西暦を、"世界機構"と呼んでいる。」
「キリスト教神学の、水面下での世界支配」
「無意識下の常識的な天文学」
「哲学という精神と科学という肉体」
カーネルは、笑いながらそうつぶやき始める。
つぶやきが収まったかと思えば、
カーネルは腰からホールドオープンの拳銃を取り出した。
ポケットからマガジンを取り出して装着し、スライドストップを下げて初弾を装填する。
自分の口にその銃口を差し込む。
地面に膝をつき、その姿は遠くにある夕焼けの中心で影のように霞んでいた。
轟音が鳴った。
霞む影の頭から僅か見える真紅の華が咲いた。




