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EISENWALD ONLINE《アイゼンヴァルト・オンライン》  作者: うっちー
MAGAZINE01 鉄と火の街アイゼンヴァルト

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4/9

BULLET4:アイゼンヴァルト


建物のドアを開く。

その瞬間、熱気が押し寄せてきた。


「……」


思わず足を止める。

鉄と油の臭い。

どこか焦げたような空気。


目の前に広がっていたのは、巨大な工業都市だった。


レンガ造りの建物。

壁を這う蒸気配管。

白煙を吐き続ける煙突。


ガコン――……


どこか遠くで列車が揺れる。

足元の石畳に、微かな振動が伝わってきた気がした。


頭上を蒸気が吹き抜ける。

シューッという音が街全体に響いている。


「すげぇ……」


思わず声が漏れる。


VRゲームは何本もやってきた。

ファンタジーも。SFも。現代戦も。

だが、こんな街は初めてだった。


巨大な機械が動いている。

それだけで街全体が生きているように見える。


通りの奥。

工房から火花が散る。

カンッ。カンッ。

鍛冶師らしきNPCが大槌を振るっていた。

近くには完成したばかりらしい剣が並んでいる。


別の店では銃が吊るされていた。

ショットガン。ライフル。見たこともない機構が付いた銃。

店主らしきNPCが客へ説明している。

その様子をプレイヤーたちが真剣に聞いていた。


まだサービス開始直後だ。

誰もが情報を持っていない。

だからこそ面白い。


「おい、そっち性能どうだった?」


「反動強い」


「マジか」


「でも威力高いぞ」


そんな会話が聞こえる。

ジョンは自然と耳を傾けた。


誰も攻略を知らない。

誰も最適解を知らない。

だからみんな楽しそうだった。


広場へ出る。

そこにはさらに多くのプレイヤーがいた。


剣を背負う者。

ライフルを担ぐ者。

巨大なハンマーを引きずる者。

同じ初期装備でも選ぶ武器が違うだけで印象がまるで違う。

中には早くも模擬戦を始めている者までいた。

歓声が上がる。

野次が飛ぶ。

勝った方が笑い、負けた方も笑っている。

祭りみたいだった。


その時――カラン。

薬莢が石畳を転がる音のほうへ反射的に視線が向く。

工房裏の演習場。

数人のプレイヤーが射撃練習をしていた。

乾いた銃声。硝煙。装填音。弾着音。

ジョンは無意識に足を向ける。

一人のプレイヤーがライフルを撃っていた。

発砲……反動……再照準……発砲。

動作は決して上手くない。

だが確かに自分で銃を扱っている。

決められたモーションじゃない。

プレイヤー自身が動いている。

PVで感じた違和感の正体がそこにあった。


「やっぱりそうか……」


思わず呟く。

スキルボタンを押して終わるゲームじゃない。

武器を扱うのはプレイヤー自身だ。

狙うのも。撃つのも。避けるのも全部。

だから面白そうだった。


ジョンは演習場を離れる。

今度は露店が並ぶ通りへ向かった。

素材買取。回復アイテム販売。装備修理。

まだ始まったばかりなのに商売を始めているプレイヤーまでいる。


「素材買い取ります!」


「初心者向けポーションあります!」


「西区初心者クエあと一人!」


あちこちから声が飛ぶ。

ジョンは苦笑した。

どのゲームでも同じだ。

始まった瞬間から商人はいる。

始まった瞬間から募集屋もいる。

そして始まった瞬間から廃人もいる。

すでに色んなエネルギーが混ざり合っていた。

ただの始まりの街じゃない。

ここには、“ゲームではなく、すべてが生きている”空気があった。


視線を上げる。


巨大な時計塔が見えた。


さらにその奥。


煙突群。


蒸気。


鉄骨。


工場地帯。


街の外にも何かが広がっているのが分かる。


きっと狩場がある。


ダンジョンがある。


ボスがいる。


まだ誰も知らない何かがある。

その瞬間、胸が少し高鳴った。


ゲームを始めた時の感覚。

何があるか分からない世界へ踏み出す感覚。

それが久しぶりだった。


ジョンは腰のホルスターへ触れる。


M1911A1。


さっき手に入れたばかりの相棒。

冷たい金属の感触が伝わる。


「さてまずはどうするか」


そう独り言が漏れるが、心は決まっていた。

街を見て回るのもいい。

情報収集も大事だ。

だが今は、自分の武器を試したかった。

この世界でどこまで通用するのか。

このゲームがどれほど面白いのか。

確かめたかった。


アイゼンヴァルト。


始まりにして終わりの街。


この瞬間、ジョンはもう、この世界に呑まれていた。


人混みを抜ける。

石畳を踏む。

蒸気の白煙が空へ昇る。

その先に広がる未知へ向けて。

ジョンは歩き出した。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


本作が初めての作品となります。

まだまだ拙い部分も多いかと思いますが、楽しんでいただけましたら嬉しいです。


ご感想や応援の★をいただけると、とても励みになります。

一章は①から⑤まで5日連続で投稿します。

これからも少しずつ更新していきますので、ぜひお付き合いいただければ幸いです。



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