表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

7 ここから先へは行かせない

7 この先へは行かせない


「……白い炎、ですか」


 テーブルを囲っている3人。ニティアとフィニスが魔族の消滅時に見た白い炎の話を、ジャヌスにしていた。


「そうなんです。しかも狼の魔物の群れ全員が白い炎を纏って消滅していました」

「普通、魔物を倒したら黒い炎で消えるはずだよな?」


 顎に手を当てて、少しの間考えるジャヌス。考えをまとめながら、ゆっくりと口を開いた。


「ええ。少なくとも、私が倒してきた魔物や魔族は皆、黒炎を纏って消滅していましたが……」


 顎に当てていた手をカップに移し、紅茶を飲みながら話を続けた。


「はるか昔には、紅い炎や灰色の炎で消えていた……という文献を見たこともあります」


 その言葉に大きく目を見開いたフィニス。紅い炎や灰色の炎……


「その色って……魔女……?」


 それを聞いて驚くニティア。


「え……!?ってことは?!」

「もしかしたら魔女の魔力……属性等にも関係があるのかもしれませんが……。今の魔女……言わば黒い魔女が倒されたと言う話を聞いたことはありませんし、白い魔女は歴史上存在したことはないはずです」


 それを聞いたフィニスが立ち上がり、ジャヌスに身体を向けた。


「でも先生!昔も言ったことあるけど、俺が見たことあるのは……」

「フィニス、それは多分気のせいですよ。私が見たことある今の魔女は黒髪の魔女ですから」

「……?」


 黙り込んで座るフィニスと、首を傾げるニティア。少しの間部屋中に鳥の囀りが響き渡る。


「ふむ……少し調べておきます。お二人はあまり気にしないで下さい」


 ゆっくり立ち上がるジャヌス。


「今から、少し王都の文献を調べてきます。しばらく留守になると思いますので、戸締りはしっかりしてくださいね」


 そう言って部屋から出ていってしまった。


「そう言われても……気になるわよね」


 チラッとフィニスを見るニティア。しかしフィニスは何か思うところがあるのか、俯いたまま黙っている。

 小さくため息をついたニティアは、首元にあるネックレスを一度握りしめて、ゆっくり立ち上がる。


「ま、とりあえず私は術式の研究でもしてるね♪」


 あえて明るく振る舞うニティア。それにフィニスも気づいたのだろう、ゆっくり立ち上がった。


「それじゃ、俺も村に買い出しにでも行ってくるかな」

「あ、一緒に行こうか?飛んでいけば楽でしょ」

「いや、大丈夫。すぐ帰ってくるよ」

「あ、そう?」


 そう言って部屋を後にするフィニスであった。



「お、フィニス!今日は1人かい?」

「フィニス、ちょっとこれ運んでくれないかい?腰がもう痛くてねぇ」

「少しおまけしてやったから、今日はいいもん食いなよ!」

「フィニス兄ちゃん!今度また型を教えて!」


 村のいく先々で、会う人会う人に声をかけられるフィニス。5分で終わる買い出しに、気付けば小一時間村に滞在していた。

 そんな中……


「最近夜になると変な声が聞こえてねぇ……だんだん近づいてきてる感じもするし、家畜も怯えちまってるんだよ」


 酪農家のおばちゃんから気になる話を聞くフィニス。昨日魔物を見ていた手前、もしこれが魔物だった場合、村に余計な被害が出るかもしれない。


「ふーん。少し様子見てくるから、これ預かっといて」


 先ほど買った物をおばちゃんの家に置いたフィニスは、村から離れ、声のすると言われた方向へ歩いていった。



 注意深く周りを見ながら、薄暗い林道を歩くフィニス。


(話を聞く限りだと……この辺りか?)


 いつでも剣を抜けるよう、心の準備だけしながら、足音を消して歩く。


 しばらく歩いていると、不自然に地面が抉られた跡や、木々が薙ぎ倒されている場所があった。


「なんだ……これは……」


 そう小さく呟いた瞬間、目の前の大木の前にボロボロのフードを被った人が座り込んでいるのが見えた。


「おい!大丈夫か!?」


 声を出して近づこうとした瞬間、その人物が片腕をフィニスの方へ向ける。


ゾクッ


 今まで感じたことのない殺気に、無意識に身体を捻るフィニス。次の瞬間、黒い稲妻がフィニスの頬を掠めていた。


「っぶね!」

『ほぅ……避けたか……』


 目の前の人物がフードを外す。人間の男性のように見えるが……胸元にはコアが。


「……魔族!?」


 魔法が掠めた頬を、汗が流れる。予想を遥かに超える最悪の事態に、剣を握りしめたまま、フィニスはゆっくりと後退りをした。

 それを見た目の前の魔族がニヤリと笑う。


『小僧。この辺りに魔力の高いニンゲンがいるだろう。そいつの居場所を教えろ』


 後退りしていた足がピタッと止まった。


『そうすれば……まぁ、命くらいなら助けてやらんこともない』


 フィニスは握った剣の力を抜き、だらんと剣先を下に向けた。


「ほんとか……そいつなら……」


 次の瞬間、間合いを一気に縮めたフィニスは、魔族のコア目掛けて斬撃を繰り出していた。


『……!!』


 あまりの速さに魔法を出す暇もなく、手に持った杖でフィニスの剣を弾き返した。


「ちっ……流石にそう甘くはねぇか」


 後ろに飛んだフィニスを睨みつける魔族。


『キサマ……』

「あいつの居場所?そんなの言うわけねーだろ!」


 剣を持つ手が微かに震えている。フィニスは大きく深呼吸をし、赤いネックレスをした人物の顔を思い浮かべる。


 震えが止まった。


「ここを通りたければ、俺を殺してから行くんだな!」


 笑みを浮かべたフィニスは、剣先を相手のコアに向ける。


『面白い……』


 再びニヤリと笑う魔族。


 フィニスの持つ剣先が、陽の光に照らされてわずかに白く輝いていた。



トン……


トン……


 机の上に置いてあるネックレスのすぐ横を、指で鳴らすニティア。


トン……


トン……


「たまには凝ったご飯でも作ってやるか……」


 ニティアは机の上のネックレスを首に掛け直し、鼻歌を歌いながら台所へと向かっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ