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65 幼女な王女


 たくさんの料理が立ち並ぶ広場。突然の催しにも関わらず、多くの人々が城前の広場に集まっていた。


「すごい人……」


 城を出たニティアが思わず呟く。


「すごいじゃろ!ここだけではない。それぞれの場所でも各自盛り上がっているらしいぞ!」


 隣のティアシャが笑って答える。


「それだけ今の国民にとって、こう言った娯楽が必要ってことですよ」

「それに一声かけただけでこれだけの人が集まるティアシャ様のジントク?もあるっスね!」

「ふっふっふ……ほら、主らも行くぞ!」


 そう言い、フィニス達を連れて、中央の席へ進んでいくティアシャ。


「ティアシャ様、さっき搾ったミルクを後で取っていきますね!」

「お、すまぬな!楽しみにしておるぞ!」

「ティアシャ様、今日西側の壁の補修終わりましたんで、明日は玉座の扉直しに行きますね」

「あんなところいつでも良い!それよりも客室の壁をいい加減に直してくれ!」

「ティアシャ様〜いよいよ俺の方が身長大きくなってきたんじゃないですか?」

「んなっ!まだ妾の方が高いわ!」


 すれ違う人すれ違う人みんなに笑顔で話しかけられ、その一人一人に笑顔で答えるティアシャ。その光景を見るだけで、いかにティアシャがこの国の民から親しまれているのかが分かる。

 中央の席に中々辿り着かず、ゆっくりとティアシャの後に続いているフィニス達。5人の最後尾を歩いていたルシオが、その後ろを歩くカエデ達にぼそっと話しかける。


「すごい人だかりだ……ほんとみんなに好かれてるのな」

「まぁ……王女と言うより、娘や友人のような感じで親しまれているようなので、その辺はどうかと思いますけどね」


 口ではそう言っているが、カエデも同様に優しい目でティアシャを見つめている。


「先代の王なんか、公然の場で気軽に話しかけてきた貴族をその場で打首にしてたっスからね!ティアシャ様はまじぱねぇっス!」


 スズもキラキラした瞳でティアシャを見守っていた。



 賑やかな宴が始まりひと段落した頃、ティアシャがその場で立ち上がり、大きな声で話し始めた。


「皆の者!急な宴にも関わらず、集まってくれて感謝するぞ!」


わぁぁぁぁ!!


「先の戦場にて出現したと言う白髪の魔女……国内外問わず、多くの者が帰らぬ人となってしまった……」


……


「しかし、その魔女を撃退した英雄が来てくれたのじゃ!お前ら、立て!」


 そう言ってフィニスとニティアをその場で立たせるティアシャ。


「マジかよ……晒し者じゃねーか」

「ほんと……恥ずかしい……」


 顔を真っ赤にしているフィニスとニティア。そんな2人を微笑みながら見ているアルテアと、気にせず酒を飲み続けるルシオ……そしてひたすら食べ物を口に運んでいるエラリス。


「戦士フィニスと、魔法使いのニティアじゃ!」


わぁぁ!!


ぁ!!


……ひそひそ


「まだ若いけど……本当にそうなのか?」

「女の子なんてまだ小さいじゃない……」

「あんまり強そうには見えないよね……」


 歴戦の猛者を想像していた民衆達は、フィニスとニティアの姿を見て思い思いのことを口にし始める。

 最初こそティアシャの声で歓声が上がったものの、その歓声もなくなり、ざわざわとした変な空気がその場に立ち込め始めていた。


「う〜む……やはりダメか……これで済めば楽だったのじゃが……」


 この空気に立ったまま困惑するニティアとフィニスを見たティアシャが、アルテアに小さな声で尋ねる。


「あの2人は、本当に魔女を撃退させたのか?」

「はい。実力で押し返して撃退した……とは言いづらいかも知れませんが、2度交戦をしてその場を退けたと言うことに関しては事実です」

「何と2度も!……ふむ」


 しばし考え込んだティアシャがニヤリと笑う。


「カエデ、スズ、準備じゃ」

「はぁ……」

「了解っス!」


 ゆっくりと立ち上がり、周囲を見渡すカエデと、気づいたらその場からいなくなっているスズ。


「ここがいいんじゃないっスか?!」


 いつのまにか城に入ってすぐの大広間から大声を上げているスズに、カエデも小さく頷き、スズの元へと歩いていく。


「信じられぬ……と言った顔をしておるのぉ……それでは余興を始めよう♪ここにいる英雄2人と、私の侍女、カエデとスズ2人で御前試合を行う!」

「……は?」

「……はぁ?!」


 いきなりの発言に驚くフィニスとニティア。しかし、気にせずにティアシャが続ける。


「ただ、くれぐれも大怪我はさせぬように、勝敗が決したと思ったら素直に負けを認めること!」

「おいおい……」

「何言ってんのよ!?」

「いいからやるのじゃ!しっしっ!」


 そう言ってカエデとスズのいる方へ行くよう手で追いやるティアシャに。大きくため息をついたあと、少しだけ微笑みを浮かべながら、フィニスは2人の待つ場内の大広間まで歩いていった。


「まったくもう!!」


 ニティアも不満を漏らしながらフィニスに続いていく。

 2人が大広間に向かうや否や、ティアシャが再び民衆に向けて大きな声で話し始める。


「武器はそこに飾ってある模造刀。魔法の使用は何でも可じゃが、妾達に被害が出ぬように頼むぞ(笑)」

「おぉ!カエデちゃんが戦うんだってよ!楽しみだ!」

「あんな子供達……流石にスズちゃん相手じゃ無理でしょ」

「うひょひょ!これは見逃せませんなぁ!!」


 さっきまで静まりかえっていた空間に熱気が宿る。興味津々の人達が、戦いが見えるポジションへと移動を始め、あっという間に城の入り口は人々で溢れかえってしまった。


「あの……一応結界張っておきますか?」


 アルテアがティアシャに尋ねる。


「なに!そんなこともできるのか!よろしく頼む!」

「はい(笑)」


 アルテアが持ってきた杖をかざし魔力を込めると、城内の大広間を覆う大きな結界が広がっていった。


「……ふむ。これならば、周りへの被害を気にする必要はなさそうですね」


 胸元から鳥の羽根のようなものを取り出すカエデ。


「フィニスの旦那!これ使ってくださいっス!」


 スズが飾ってある模造刀を2本抜き取り、そのうちの1本フィニスへ投げつける。


パシッ


「さんきゅ!」


 受け取った剣の重さを確かめるように、その場で数回振り回した後、笑いながら剣を構えるフィニス。


「何でそんなにやる気になってるのよ……」


 呆れ顔で渋々と杖を構えるニティア。


「まぁ……やるからには負けてあげないからね!」


 なんだかんだニティアもやる気になっている様子を見て、ティアシャがふっと笑う。


「それでは良いか!?いざ尋常に……開始!!」


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