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世界を救い、そして滅ぼした魔女ニティア  作者: 月白
第2章〜 ギルドと白い影
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44 焼け焦げた地面


「依頼がない時は事務処理を手伝ってくれるとありがたいし、ついでにしばらくはここで住み込みで働くといい。部屋も空いてるしな」


 ルシオから事情を聞いたヴェスパがアルテアに伝える。


「あ、ありがとうございます!」

「ちょっとした回復ならできる奴もいるけど、専門家がいるのはだいぶ助かるからな。これで受けられる依頼の幅も広がる」


 苦笑いしながら手元にある書類を持ち、ひらひらと宙を仰ぐヴェスパ。

 それを見たルシオがふとヴェスパの書類に視線を向けた。


「ま〜たなんか厄介な依頼でも来たのか?」

「ん〜いやな、ここ最近、本来なら王国ギルドで受けるような依頼が流れてきてくるようになってな」

「ん?向こうの依頼がパンクしてるとかじゃなくて?」

「その可能性もなくはないんだが……少し気になってな」


 ルシオとヴェスパ。2人のやりとりを聞きながら、互いに目を合わせて首を傾げるニティアとフィニス。そのままニティアは視線をヴェスパへ移した。


「何が気になるの?」

「いや、まだ憶測だ。もう少し情報が集まったら伝えるよ」


 そう言いながら、手元にある依頼書に目を通していくヴェスパ。そのうちの一枚を見て視線を止めた。


「そのためにも、まずはこれでも受けてもらうか」


バン!


 そう言い、依頼書を机の上に叩きつける。


「輸送車の護送……?」

「どうやらこの辺を通るとき。毎回ではないが……時々物資だけでなく、商人や護送に着いた騎士も消える事があるらしいんだ」

「人が消える?」


 目が点になるフィニス。


「真っ黒に染まった地面を最後に、その場所で車輪の跡や足跡がばったり消えてるんだとさ」

「それって消えてるんじゃなくて……」

「あぁ。焼かれて消し炭になってるんだろうな。王国ギルドのメンバーや騎士団をそう何度も消されていたら、国力低下にも繋がる。これに関してはそう言う理由でうちに回ってきたんだろう。アルテア、回復魔法以外に防護魔法も使えたりするか?」


 突然の問いに一瞬間が空く。すぐに自分への問いだと気づき、慌ててアルテアは依頼書からヴェスパへ視線を移した。


「あ、はい!使えます!」


 その答えににやりと笑うヴェスパ。


「明後日、荷物を積んだ荷馬車が海沿いの街へ向かい、そこで物資の交換した後に王都へ戻ってくるらしい。お前ら4人はその護衛につけ」



 ガラガラ


 王都を出た数台の台車。その先頭車両の荷台に4人が乗っていた。


「なぁ……これって……」


 荷台に積まれている物を見て、フィニスが呟く。シンプルな剣や槍。そして小さな盾などが積み込まれていた。


「まぁ武器だな」


 目を瞑りながらルシオが答える。


「仕入れにしては……ちょっと量が多すぎないかしら?」

「後ろの台車にも弓やら鎧などが積まれていましたよね……」


 ニティアとアルテアは後ろの台車を眺めながら各々口を開く。


「ガルドのおっちゃんは一台で回ってたから、てっきり今回も一台だと思ってたのに……」

「まぁ、ロイヤル商会とはいえ、個人の商会と国とじゃ規模も違うしな……」


 そんな会話をしながら、フィニスは荷台の手綱を握っている商人の方へと荷台の中を歩いていった。


「なぁ、これって1つの街に全部卸すのか?」

「そうですよ。最近は小さな町にも、このように武器や防具を卸に行っています。街の依頼ではなくて、国王からの指示で行くので……まぁあまりいい顔で買ってはくれませんけど(笑)」

「ふ〜ん……」


 フィニスは怪訝な顔をしながら、遠くに聳える山々を眺めていた。



「すみません、ちょっと止まってもらっていいですか?」


 王都出発から数日後。交代で台車の周りを警戒していたニティアが、先頭の商人に声をかける。

 急な台車の停止に、荷台からフィニスたちも姿を現してきた。


「どうかしたのか?」


 フィニスがニティアに尋ねると、ニティアは進行方向を指差していた。


「あれは……」


 アルテアが目を凝らしてその方向を凝視する。


「地面が……少し黒くなっていますね……」


 4人がゆっくりとその場所へと歩いていく。

 徐々に黒くなっている地面。所々、高熱により溶けたのだろう。ドロドロに変形した石や、溶けて固まっている金属片が散乱していた。

 それを見たルシオがゆっくりと口を開いた。


「ニティア。これを見てどう思う?」

「かなりの熱量。魔法だとしたら相当強力な魔法ね」

「となると……魔族か?」


 フィニスが小さく呟いた。


「ギースも一つの場所に留まって人を襲ってたし……可能性としてなくはないけど……」


 自信がなさそうに答えるニティア。


「もちろん、その可能性もありますが、もう一つ。紅炎龍の可能性もあるかもしれません……」


 しゃがんで地面を見ていたアルテアがゆっくりと立ち上がり、3人の方に身体を向けた。


「……この時期は子供が巣立ち前で色々と飛び回り……その際に親が子供を守るために目に映る物を襲い、焼き払う。確かそんな生態があったような……」


 アルテアの話を聞き、固まる3人。

 それもそのはず。魔物や魔族を除いた生態系のトップ。それが龍類である。

 しかも、数ある種類の中でも特に気性の荒い紅炎龍。気に入らないことがあれば獄炎を吐き、全てを消し炭に替える。人里から離れた場所に生息をしているため、頻繁に人が襲われることはないものの……もはや災厄の一つと言っても過言ではない存在である。


「どっちにしても最悪だな……」


 4人は大きなため息をし、辺りを見回しながら荷車へと戻っていった。

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