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世界を救い、そして滅ぼした魔女ニティア  作者: 月白
第2章〜 ギルドと白い影
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37 老いぼれの剣


 その場に腰を下ろし、持ってきた軽食を取っているニティアとルシオ。そしてフィニスの3人。フィニスの膝の上には丸くなって座っているリヴァレーがいた。


『10年くらい前から、魔族がこの遺跡の奥に住みつきだしちまったんだ。それから湖の水が汚れ始めてな』


 フィニスに頭を撫でられながらリヴァレーが続ける。


『最初のうちはボクも穢れを直そうと頑張ったんだけどな……綺麗にした途端、綺麗にした水と一緒に魔力も一吸い込まれて、また穢されちまうんだよ』

「魔族か……」


 頭を撫でながらフィニスが呟く。


『だからそこの気持ち悪い女と男。その魔族を倒してきてくれ』


 その言葉にピクリと肩を振るわせるニティア。


「だ〜か〜ら〜……気持ち悪くないって言ってるでしょ!!」

「まぁまぁ、精霊は魔力の波長の合う合わないにすごい敏感らしいから……気にするなって」


 宥めるルシオ。


『それと、お前はフィニスって言ったか?』

「そうだけど」

『お前は気に入ったから、ボクの力を……』

「ん?」

『お前……なるほど。だから居心地がいいんだ。そうか……お前のこと気に入ったから力を貸してやろうと思ったのに。残念ながら力貸してあげられなさそうだな』

「精霊は気に入った人間に力を貸してくれるんでしょ?なんで貸してくれないのよ」

「……」


 ニティアの言葉を無視するリヴァレー。ニティアの肩がカタカタ震えている。

 その様子を見ていたルシオが平身低頭に尋ねる。


「リヴァレー様。私たちはあなた方高貴な精霊様と異なり、知識も乏しい愚者でございます。リヴァレー様が気に入ったフィニスへ……なぜお力をお貸しくださらないのか……この愚者へもお教え頂けませんでしょうか?」

『仕方がないな。別にボクが意地悪をしているわけではないんだ。僕たちは、魔力の波長が合う人間に力を貸す。魔力のは波長を重ねる事で、人間の力を増幅させるんだ』

「あぁ……なるほど、そう言う事なのか……」


 1人頷くルシオ。


『でもフィニスにはその増幅するための波長。魔力そのものが無い。だから、力を貸したくても貸せないんだよ』

「あーなるほど!」

「そう言う事なのね」


 ニティアとフィニスも理解した。


「別に俺はそんなの気にして無いぞ!そもそもお前が襲われてるのかと思って助けに来ただけだったし」


 そう言ってリヴァレーを撫でるフィニス。ニティアの手もソワソワしている。


「とりあえず、水を穢している魔族を倒せばいいんだな」


 ゆっくりと立ち上がるフィニス。


「とりあえずって……そんな簡単に言うけどさ……」


 杖をつきながら立ち上がるニティア。


「でもお前ら2人はすでに一体ずつ倒してるんだろ?」


 盾を片手に立ち上がるルシオ。


「まぁ、どのみち俺は奥にある歯ブラシに用があるからな!ついでに倒してこようぜ!」

『頼んだぞー。あ、でもボクは力を貸せない以上、ボクひとりではあまり力を具現化できないから。危なくないところで降ろしてくれよな』

「はいはい、なんとかするわよ」


 さりげなく頭を撫でようとするニティアに、リヴァレーはシャーと唸り声をあげていた。




『この扉の奥。少し開けたところにそいつがいるんだ』


 3人がしばらく歩いたその先に見えてきたのは、少し廃れではいるが、豪華な装飾の施された大きな扉。

 扉の少し手前で、先頭を歩くルシオは立ち止まる。


「その魔族はどんなやつなんだ?戦い方とか」


 リヴァレーはフィニスの腕の中から答える。


『ボクもよく分からないんだよね』

「わからない?」


 首を傾げ、リヴァレーに視線を落とすフィニス。


『ここに迷い込んだ魔物や人間。そして、部屋の中を流れている、ボクが浄化した水から魔力を奪っていることはわかるんだけど、分かることはそれくらいなんだ』

『ボクだって痛いのは嫌だからな。その魔族を直接見たのだって、最初のうちの数回だけなんだよ』

「なるほど、そういうことね……そうなると、ここで話し合ってても意味がないわね」

『でも、確か……魔族にしては珍しく大きな剣を持っていたぞ』

「剣……接近戦に特化した魔族か?」

「そうなるとニティアは少し離れてろよ。もしくはルシオの後方にいるように」


 3人がゆっくりと扉を開ける。


ギギギ……


 開けた空間。道中と同様に、部屋全体がうっすら青白く光っており、端には水が流れていた。

 そしてその部屋の最奥には腰を下ろして座っている一体の黒い影。胸元には微かに白く濁ってはいるものの、赤黒いコアが鈍く輝いている。


『久しぶりの来客かのぉ……』


 そう言い、大きな剣を杖のように地面に突き立てて腰を上げる。

 威圧もしていなければ、殺気も出していない。ただそこに存在しているだけの魔族。

 しかし、今まで感じたことのない恐怖感が3人を包み込んでいた。


『こいつだ……』

『ん?あぁ、ここにおったネズミか。もう水の浄化は良いのか?』

「……お前……なんでこんな所に住み着いてんだ?」


 リヴァレーを降ろし、剣を抜くフィニス。


『ふぉっふぉっふぉ……隠居じゃよ隠居』

「ノクスが死んで魔力の供給が切れたからか……」

『……お主、知っておるのか……』


 冷や汗を垂らしながら、苦笑いをするフィニス。


「やっぱりそうだったのか。先生の言っていたことは間違いじゃなかったみてぇだな……」

『ふぉっふぉっふぉ……カマをかけたのか……こりゃいっぱい食わされたわい』


 ルシオがフィニスの前に出る。


「フィニス……こいつ……やべぇぞ……」

「あぁ……ニティアは下がってろ」

「私だってやれるわよ!」

『ここの地盤はそんなに硬くないからな。でかい魔法使ったら崩れるぞ』

「なっ!それを早く言いなさいよ!」


 魔族がゆっくりと剣を持ち上げ……


『だいぶ魔力が回復したとはいえ……ワシはあまり派手な魔法が使えなくてのぉ……これしかまともに使えんのじゃ』


 刃を指でなぞる。


『とはいえ、老いぼれの身……お手柔らかに頼むぞ』

「来るぞ!」


 盾を構えるルシオ。

 魔族とゆらりと剣を構えた次の瞬間……


ガキーン!!


「っつ!!」


 ルシオが後方に吹き飛ばされる。


『ふぉっふぉ……盾ごとは切れなかったか……』

「なっ!?」

「え!?」


 盾を少し下げ、顔を出すルシオ。


「イッテェ……」


 不敵に笑う魔族。


『少しは楽しめそうじゃの……』


 魔族の持つ黒い大きな剣が、鈍く輝いていた。

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