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他の転生者と共にいざ、音楽の旅へ行きませう  作者: 皆麻 兎
音楽の旅路編

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作曲の経緯と譜面の所在

「まずは、ムジカ・デラフィーネの話じゃな」


村長の台詞(ことば)を皮切りに、話は始まった。


ムジカ・デラフィーネと“名もなき楽譜”の作曲者は、ユミルドとラレクという双子の兄弟だったらしい。

前者を兄が、後者を弟が作曲している。

この世界における“作曲家”とは、同時に音魔法の開発をしている魔法使いでもある事を意味し、この双子は村の中でも優秀な作曲家だった。私達に話してくれている村長も、代々口伝で聞いてきた内容のため、所々曖昧なところはあるという。

ともあれ、兄・ユミルドがある日様子が少しずつおかしくなり、2・3日程部屋に引きこもった果てに“ムジカ・デラフィーネ”の楽譜を作り上げたらしい。


「様子がおかしい…?」


村長の語りの途中、意味深な言い方に対してザックが首を傾げる。


「当時、魔族との戦いがあちこちで起きていたために人々の心が疲弊していた…という事もあるが、どうにもそれだけではなかったようじゃ」

「個人的な事で、心が病んでいた…という事かしら」

「かもしれぬ。おぉ、そうじゃ」


村長の呟きに私が反応すると、彼は何かを思い出したように瞬きを数回する。


「ユミルドが確か…“こことは違う世界の記憶を垣間見るようになった”と、呪詛のように呟いていたとか…」

「なっ…!!?」


その台詞(ことば)を聞いた途端、声を出したスルタンを含めて私達全員が目を丸くして驚く。


 もしかして、転生者…!!?


今の話を聞いていた私は、真っ先にその単語が脳裏をよぎった。

しかし、話だけだと確証はない。当然の事ながら、今回の話に出てきている作曲家の双子は、どちらも既に故人だ。死者の魂をこの世に呼び出したりでもしない限り、当人達に会うことはできず真意を確かめることはできない。

ユミルドが転生者かどうかはひとまず置いておいて、私は再び村長の話に耳を傾ける。


ユミルドが作曲した、“ムジカ・デラフィーネ”。音魔法が随所に込められたこの譜面は、①曲の譜面を理解し歌として口ずさむと、膨大な魔力を得られる。②歌詞の一節には、世界を死に至らしめる事ができる究極魔法の内容が記されている。③対象の魔力をある程度封じ込めるという3つの事が成せる曲だ。因みに、歌詞が暗号文ともなっているので、歌詞の文字が読めても、内容の解読は容易ではないらしい。

ここまでの内容は、私が転生前に運命の女神・ウルヴェルドから聞いていた話とほぼ一致していた。くしくも、③の効果を得られることが作曲後に判明し、勇者一行が魔王を封印する道具として使用したようだ。


「“ムジカ・デラフィーネ”を完成させた後、双子の兄は死んだ。原因は不明だが、他殺ではないらしい。とはいえ、この曲は正しい使い方をすれば心強い代物だが、悪しき者の手に渡れば、悪用されかねん。そのため、弟・ラレクが“名もなき楽譜”の譜面を作り上げたのじゃ」

「“ラレク”という名を聞いて思い出したが…。その双子の弟というのは、もしや…」

「…はい。“名もなき楽譜”を作曲したラレクは、後に魔王を封印した勇者一行の一人です」


村長の語りに今度は、マリアーノが反応する。

そして、偶然女性と目が合ったせいか、マリアーノが言おうとしていた内容が正しい事を教えてくれた。


“ムジカ・デラフィーネ”を作曲したユミルドが亡くなり、その弟が兄の遺した譜面と共に魔王と戦ったというのが、歴史の講義では知ることのなかった実際の戦いの記録だったようだ。


「魔王を封印したムジカ・デラフィーネは、とある無人島にてひっそりと管理されるようになった。所在を知るのはこの村の人間と、世界各国にいる人族の王族のみとされているのじゃが…。近年、譜面ごと所在不明になっていると、とある国の王族から話を聞いたのじゃ」

「なっ…!!?」


ムジカ・デラフィーネの作曲経緯についての話は終わったが、現在の所在については驚きの事実を明かされる。


「…人族の各国々は、密かに“あれ”を捜しているようじゃが…未だに何処にあるか不明らしい。じゃが、魔王が完全復活したと確認されていない以上…まだ、捜して譜面を破壊する余地はあると思うのじゃ」


村長は、少し深刻そうな()をしながら語る。

そうして、“ムジカ・デラフィーネ”と“名もなき楽譜”の話については、一旦終了となる。


「次に、この娘とウルヴェルドの件について話そう」


お茶を少し飲んで一服した後、村長は話を再開する。


「申し遅れましたが、私はノルズと申します」

「そうか、我々もちゃんと自己紹介をしていなかったな」


村長の側に控えていた女性————ノルズは、挨拶をしながらこちらに対してお辞儀をした。

その台詞(ことば)を聞いたスルタンを皮切りに、私達はお互いに自己紹介を始めたのである。


「では、結論から申し上げます。私は、この世界でも数少ない”運命の女神・ウルヴェルド様の加護を持つ人間“なんです」

「加護…」

「私の見立てだと、貴女もウルヴェルド様の加護をお持ちだと思います。…エセルさん」


ノルズは自身の事を語りながら、私の方に視線を向ける。


 加護…。転生前にウルヴェルドと話していたから、加護を持っているという事かな…?


私は、そんな事を考えながら話を聞く。


この世界に暮らす人族の中でも、多くはないが”神の加護“を持つ生き物は一定数いる。有名な者でいくと、先日法の神殿で会った大司教・結奈(ゆいな)が”雷神・トージンの加護を持つ者“に相当する。

加護を持つ者の役割は、神をその身に降ろしてその言葉を人々に伝えることだ。他にも役割はあるらしいが、それは神によって異なるため一概に全て同じという訳ではない。


「先日、ウルヴェルド様からお告げがありました。そこで、貴方方がこの村を訪れることを事前に知っていたのですよ」

「成程な。…ウルヴェルドは、俺達がこの村へ来る事以外で何か言っていたか…?」

「…私が賜ったのは、”異界からの来訪者“4人から成る徒党(パーティー)がこの村を訪れること。そして、彼らの手助けをしてあげてほしいという2点のみです」

「…やはり、我々が転生者である事を聞いていたのだな」


ノルズとザック。そして、スルタンがウルヴェルドの事を語っていた。

それを私とマリアーノは、静かに見守る。


「…とまぁ、これでお主らに話すことは終いじゃな。あとは…」

「音魔法の伝授…ですね。この村のほとんどの民は音魔法を使えますが、村長はご高齢で教えるのも厳しいこと。そして、少しでも早く多くの音魔法を習得して戴きたいので、私が指南役をさせて頂きます」


話がひと段落し、エルフの里長から頼まれた伝言の最後にあった内容へと話題は切り替わる。

ノルズ曰く、音魔法は魔力を操れる者であれば魔法使いでも僧侶でも、如何なる職業でも習得は可能らしい。しかし、適性などもあるため、剣士と戦士であるザックとマリアーノが習得するのは難しいだろうと考え、エルフの長は私とスルタンを指名したのだろう。


「基礎から少しずつやっていくのであるば、数年はかかります。しかし、貴女がたにもタイムリミットはあると思います。村への滞在はどのくらい可能でしょうか?」

「えっと、確か1週間だったぞい」


ノルズから訊かれたため、マリアーノが質問に答える。

返答を聞いたノルズは、大きく一呼吸おいてから口を開いた。


「では、1週間以内で可能な限り伝授致します。今後の旅において、音魔法はいくら知っていても損はしないですからね」

「宜しくお願いします!」


ノルズが穏やかな笑みを浮かべながら声をかけたので、私とスルタンは思わず元気な声で応えた。


こうして、私達4人は1週間ほどこの村に滞在する事になった。

最初はどんな楽器が演奏できる事から始まり、そこから私やスルタンに向いた音魔法をノルズが教えるというスタンスで行われることになる。



私達が、村に滞在するようになってから2日程経ったある日————————


「ムジカ・デラフィーネ…本当に所在不明なんだな」


とある無人島にてそう呟くのは、当代の勇者である青年・バッシュだった。


バッシュ率いる勇者一行はとある国の要人から依頼を受け、魔王が封印されているとするムジカ・デラフィーネの様子を見に無人島を訪れていたのである。

周囲には人族は暮らしていないものの、ある程度の魔物が多く生息するため、素人の冒険者や様々な冒険者の集うギルドには頼めないような内容だ。

そのため、彼らが通ってきた場所には、倒された事で消滅していく魔物達の死骸が多く転がっている。


「グンニル…。俺だ、聴こえるか…?」

『…あぁ、聞こえているぞ』


落ち着くために深呼吸をしたバッシュは、自身の腰にさげている聖剣に視線を落として語りかける。


勇者のみが扱えるという聖剣は、同時に勇者一行を導く剣武神・グンニルが宿る依代となっているのだ。そのため、バッシュはグンニルに声をかけていたのである。また、グンニルの声は勇者以外の仲間達にも聞こえるが、バッシュ以外が発言するとグンニルの機嫌を損ねてしまうらしく、他の3人の仲間達は黙ったまま2人の会話に耳を傾けていた。


「魔王を封じていた道具(ぶつ)がない…。グンニル、今起きている事をお前はどう見ている?」

『…我が勇者(おぬし)の元にいる時点で、魔王(やつ)が復活しそうな兆しは感じていた。だが、この場所に残る魔力の痕跡から察するに、100の内30か40くらいしか敵の魔力が回復していないのだと我は思うな』

「成程…」


グンニルの見解に対し、バッシュは同調する。


『…嫌な予感がする。少し道草を食うことになるが、運命の女神・ウルヴェルドに導かれた者達を捜し出し、コンタクトを取ってみた方がよいかもしれん』



この一連の会話を、私達が知るはずもない。

ただ、今後の旅の中でこの勇者一行と対面する事になる日は刻々と近づいているのであった。


いかがでしたでしょうか。

今回、音楽的な要素はありませんが、色んなキャラクターの名前が出てきましたね。

この作品におけるキャラ名のある登場人物については、今回出てきた双子の兄弟やウルヴェルドの加護を持つ女性・ノルズ辺りは北欧神話に出てくる神や物の名称からつけています。あ、剣武神もそちらのジャンルですかね。

ブロローグ以来久しぶりの登場となった勇者の名前は、日本語で「隠れる」という意味を持つドイツ語の単語からつけてます。名前の由来となる日本語で何故「隠れる」という言葉にしたかは、今後の話の中で判明していく予定です。

さて、次回は新章になるかと思います。そろそろ、色んな事柄が動き出すでしょう。

お楽しみ★


ご意見・ご感想があれば、宜しくお願い致します。


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